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ウルフ『幕間』解説あらすじ

ヴァージニア=ウルフ
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始めに

ウルフ『幕間』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

一人称的視点のリアリズム、意識の流れ。プラグマティズム、現象学

 モダニズム文学に典型的な手法が意識の流れです。ジョイス『ユリシーズ』、フォークナー『アブサロム、アブサロム!』『響きと怒り』、本作などに見える意識の流れの手法は、現象学(フッサール、ベルクソン)、精神分析などの心理学、社会心理学、プラグマティズム的な知見を元に、伝統的な小説にあった一人称視点のリアリズムをラディカルに押し進めたものでした。意識的経験の時間軸のなかでの全体性を描きます。

 人間の意識的経験やそれにドライブされる行動は、時間軸の中で全体性を持っています。主観的な時間の中で過去と現在と未来とは、相互に干渉し合って全体を形作っていきます。過去の経験や知覚が因果になり、さながら一連の流れとも見えるように、意識的経験は展開されます。こうした時間論的全体性を描くのが意識の流れの手法です。現実の社会における実践はこのような個々のエージェントの主観的経験が交錯するなかでその時間的集積物として展開されます。

 たとえばプルーストは現象学のベルクソンの親戚であり、その思想から顕著な影響を受けました。ベルクソンの思想とその現象学は一人称的視点の集積として世界や社会を解釈しようとするプラグマティズム、システム論的なものでしたが、『失われた時を求めて』は一個のエージェントの視点から、社交界における実践を記述しようとします。一人称視点の主観的なタイムトラベルが繰り返される中で、失われた時の中の過去が綴られていきます。

 本作はさまざまな視点人物の内面などを多面的に描きながら、第二次大戦前のイギリスのある家でのページェントの模様を物語ります

語りの構造

 他の主要作品と同じく、異質物語世界の語り手を設定しつつ、それがさまざまな視点人物を追いかけ、意識の流れの手法を展開していきます。

 特に『ダロウェイ夫人』と語りの構造は近く、一日という短いタイムスケールのことを展開するのも共通です。

 第二次世界大戦直前のイギリスの田舎の家で、その日は、その家の敷地内で毎年恒例のページェントが開催されます。ページェントは伝統的にイギリスの歴史を祝うもので、地元のコミュニティ全体が参加するのですが、この様子を物語は展開していきます。

作中作の演劇

 本作はページェントの模様を展開するというデザインであり、作中作として、演劇の戯曲パートが導入されています。

 イングランドを象徴する子供のプロローグに続いて、最初のシーンはロマンチックな会話のあるシェークスピアのシーン、2 番目のシーンは王政復古の喜劇のパロディで、3 番目のシーンはハイドパークで交通整理をする警官を題材にしたビクトリア朝の意気揚々とした光景を描くものです。最後のシーンは「私たち自身」と題されており、ここでミス=ラ=トローブは出演者に観客へ鏡を向けさせて驚かせます。

 おおむねこのコンテストはイギリスの歴史をなぞるもので、それがラストの演出によって、英国の歴史の延長線上としての迫りくる大戦の影を暗示するものになっています。

 ジョイス『ダブリン市民』の「死者たち」、『フェネガンズ=ウェイク』など、フィクションやその実践的前提となるアートワールドの歴史性に着目するモダニズム文学はしばしば見えますが、本作もそのような手法によって、オンタイムの歴史を過去のテクストやそれとの相互的な実践の歴史と連続的なものとして捉える姿勢が見て取れます。

リベラリストと戦争

 ヴァージニア=ウルフは、リベラリストで戦争にネガティブでした。『ダロウェイ夫人』『歳月』『幕間』など、多くの作品で戦争の影やトラウマを描きます。

 本作でも最後のシーンは「私たち自身」と題されており、ここでミス=ラ=トローブは出演者に観客へ鏡を向けさせますが、その後その「私たち自身」に、歴史の流れの中で迫りくる第二次大戦が暗示されています。

 

物語世界

あらすじ

 第二次世界大戦直前のイギリスの田舎の家。その日は、その家の敷地内で毎年恒例のページェントが開催されます。ページェントは伝統的にイギリスの歴史を祝うもので、地元のコミュニティ全体が参加します。

 この家の持ち主は、インド陸軍の元将校で男やもめのバーソロミュー=オリバー。同じ家に妹のルーシー=スウィザンがいます。バーソロミューには、ロンドンで仕事に就いているジャイルズという息子がいます。ジャイルズには妻のイサとの間に2人の子供がいるが、イサは彼に興味を失っており、イサは地元の農家の紳士、ルパート=ヘインズに惹かれています。

 マンレサ夫人と友人のウィリアム=ドッジが到着し、コンテストのために滞在します。コンテストのドラマは、風変わりで横暴な独身女性、ミス=ラ=トローブにより書かれたものです。

 その日は、ページェントまでのイベントがいくつも行われています。ルーシーは飾り付けや食事の準備に大忙しです。バーソロミューは新聞の後ろから飛び出して孫を怖がらせ、孫が泣くと臆病者と呼びます。マンレサ夫人はバーソロミューとジャイルズに挑発的に戯れます。ウィリアム=ドッジは、他のメンバーから同性愛者だと思われ、避けられているものの、ルーシーとは仲が良いです。

 コンテストは夜に行われ、3 つのメインパートに分かれており、休憩時間には観客同士が交流します。イングランドを象徴する子供のプロローグに続いて、最初のシーンはロマンチックな会話のあるシェークスピアのシーンです。2 番目のシーンは王政復古の喜劇のパロディで、3 番目のシーンはハイドパークで交通整理をする警官を題材にしたビクトリア朝の意気揚々とした光景です。最後のシーンは「私たち自身」と題されており、ここでミス=ラ=トローブは出演者に鏡を向けさせて観客を驚かせます。

 コンテストが終了し、観客が解散すると、ミス=ラ=トローブは村のパブに戻り、コンテストが失敗したと感じて思い悩みながら、次のドラマを計画し始めます。

 暗闇が降りてきて田舎の家を覆い尽くすと、ジャイルズとイザは二人きりになり、おそらく衝突と和解が起こります。

参考文献

・ナイジェル=ニコルソン『ヴァージニア・ウルフ』

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