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町田康『きれぎれ』解説あらすじ

町田康
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始めに

町田康『きれぎれ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識,語りの構造

パンクからモダニズムへ

 町田康はモダニズムの作家です。

 1981年、バンド「INU」のボーカリストとしてアルバム『メシ喰うな!』で歌手デビューし、1996年には処女小説『くっすん大黒』で文壇デビューしました。パンクロックの文脈から、モダニズムのジャンルなどにコミットして独自の文学世界を展開した町田でした。

 松本清張、石川達三、筒井康隆、久生十蘭、ヴォネガット、春樹、中上、チュツオーラ、井伏、太宰、梅崎春生、織田作之助などの作品から影響を受けました。

 筒井康隆やヴォネガット、春樹、中上のモダニズム、幻想文学、口語的語りは町田に継承されています。

 井伏、太宰、梅崎春生、織田作之助(『夫婦善哉』)などの近代の作家に着目しつつ、クラシックな無頼派的な退廃的世界を描きました。このあたりはもともとパンクロックの歌手なので、パンクロックのデカダンスと個人主義を無頼派の文脈とすり合わせている感じです。

語りの構造

 語り手は等質物語世界の「俺」で、彼は老舗の陶器店の息子ですが、無頼な性格で、ぼんやり画家を目指すものの、絵を描くこともありません。

 その「俺」の口語的でリズミカルな語りが展開され、しばしば妄想と現実の境界線が曖昧になり、幻想的な世界が展開され、中上『奇蹟』を連想します。

 ラストのきれぎれになった腐敗した青空のビジョンは、梶井「檸檬」などを連想させます。

 語り手の俺は妄想やフラッシュバック、饒舌な語りなどによる脱線を繰り返し、非線形の語りを展開します。このあたりは中上に影響したセリーヌ(『夜の果てへの旅』)の作品をも感じさせます。

町田康の迷走?

 正直、出てきたときは天才が現れたという感じでしたが、だんだん町田康の創作は行き詰まっていったと思います。

 印象としては北野武の映画と近くて、異業種からのクリエイターとして、異業種で培ったノウハウが要領よくすぐに移ってきた方面で活かせたものの、変に要領良くて悩んだ時間が短かったせいで、固有のスタイルを体得するまでのスパンは短かったものの、以降は先細り、みたいな感じです。

物語世界

あらすじ

 老舗の陶器店の息子である語り手の俺は、無頼な性格で、ぼんやり画家を目指すものの、絵を描くこともありません。

 母親の手配で資産家令嬢の新田富子とお見合いがあっても、食事の席で滅茶苦茶に振る舞うことでわざと破談させるなどします。そしてランパブの店員であるサトエと結婚して、母親をうんざりさせます。専業主婦となったサトエは醜く肥り、家中は散らかり、会話さえほとんどしなくなります。

 主人公とは対照的に、小学校時代からの知り合いである吉原は画家として成功します。吉原が結婚したのは、かつての見合い相手である新田富子でした。見合いをした時には不細工だった彼女が、いまは美人だと知り、主人公は彼女に惚れてしまいます。

 自分の方が吉原より絵の才能があると過信する主人公は、画材を買って有名になり新田富子を奪おうとします。しかし母親が死に、親戚の取り計らいで遺産が残らなかったため、絵具を買う金もありません。金策に友人たちの元を訪ねるものの、誰もが貧乏で、結局吉原に金を借ります。

 ようやく絵の創作に取り掛かるものの、いつしか思考の世界を彷徨い始め、現実に戻ったと思うと、妻のサトエと吉原の展覧会に足を運んでいます。階段ホールの入り口前で振り返ると、背後には青空がきれぎれになって腐敗していました。

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