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セルバンテス『ドン=キホーテ』解説あらすじ

セルバンテス
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始めに

セルバンテス『ドン=キホーテ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

騎士道物語

 文学ジャンルとしての騎士道物語は、中世盛期および近世初期のヨーロッパの貴族の宮廷で人気があった散文と詩の物語の一種である。騎士道物語は、冒険に満ちた物語で、英雄的な騎士道の遍歴の騎士が冒険の旅に出るという話が多いです。

 最初は韻文中心でしたが、13 世紀初頭ごろから、騎士道物語は散文で書かれることが多くなり、続編を繰り返すようになりました。中世後期およびルネサンス期にはロマンス形式の幻想文学が主流で、マロリー『アーサー王の死』 、バレンシアの『ティラント・ロ・ブランチ』、『アマディス・デ・ガウラ』などの代表的な作品がこのころものされます。

 『ドン=キホーテ』では『ティラント・ロ・ブランチ』や『アマディス・デ・ガウラ』がドン=キホーテの愛読書で、そうした騎士道物語のパロディになっています。

ピカレスク小説

 本作はピカレスクのモードを踏まえる内容です。

 ピカレスクはスペインの文学ジャンルで、特徴としては自伝的な記述の一人称で書かれます。社会的地位が低いアウトローの主人公が機転を利かせて立ち回る、小エピソード集の形式です。平易な言葉やリアリズム、風刺などがしばしば見えます。「悪漢小説」と訳されるものの、ピカレスクの主人公が重大な犯罪を犯すことは少なく、むしろ世間の慣習や偽善に拘束されない正義を持ったアウトローとして描かれやすいです。主人公は性格の変化、成長はあまりしません。

 『ドン=キホーテ』もこのジャンルの様式を多く兼ね備えていて、ストーリーは一応一続きで大きな流れはあるものの、小エピソードが連続する形式です。騎士道物語のパロディとして風刺的内容になっていて、ドン=キホーテは異端者でありアウトサイダーではあるものの、うちに秘めた正義は本物です。主人公が機転を働かせたりして引き起こすドタバタが繰り返されます。

ドン=キホーテの物語

 本作は主人公のドン=キホーテは、本名はアロンソ=キハーノといって、騎士道物語の大ファンで、しだいにその熱がこうじて自分を騎士道物語の主人公と思い込んでしまいます。

 本作はそんな主人公の巻き起こすドタバタを描くものの、キホーテはほとんど道中で成長せず、最後にいきなり正気に戻るものの、病にて亡くなります。

メタフィクション

 本作はメタフィクションになっています。

 物語の後半では、前半パートの物語が出版されていてすでに出回っているという形になっていて、その内容の誤りについてキホーテが語ったり、その内容を知っているキャラクターがキホーテのことを知っていていたずらをしたりします。

 似たようなデザインは本作を好んだトウェインの『ハックルベリー=フィンの冒険』にも見えます。

物語世界

あらすじ

前編

 ラ=マンチャのとある村に貧しい暮らしの郷士が住んでいました。この郷士は騎士道小説が大好きで、村の司祭と床屋を相手に騎士道物語の話ばかりしています。

 やがてその騎士道熱は、本を買うために田畑を売り払うまでになり、昼夜を問わず騎士道小説ばかり読んで狂気にとらわれます。みずからが遍歴の騎士となって世の中の不正を正す旅に出るべきだと考え、そのための準備を始めます。

 古い鎧を磨き上げ、痩せた老馬をロシナンテと名付け、自らもドン=キホーテ=デ=ラ=マンチャと名乗ります。騎士である以上思い姫が必要だと考え、エル=トボーソに住むアルドンサ=ロレンソという田舎娘を貴婦人ドゥルシネーア=デル=トボーソとして思い慕うことにします。

 用意がととのうと、ひそかに出発します。冒険を期待するものの、何も起こることなく宿屋に到着します。宿屋を城と思いこみ、亭主を城主だと思いこんでしまっていたドン=キホーテは、亭主にみずからを正式な騎士として叙任してほしいと願い出ます。亭主はドン=キホーテの狂気を見抜き、叙任式を摸してからかうものの、事情を知らない馬方二人が彼の槍に叩きのめされ、あわてて偽の叙任式を済ませます。

 翌日ドン=キホーテは、遍歴の旅にも路銀や従士が必要だという宿屋の亭主の忠告に従い、村に引き返します。途中で出会ったトレドの商人たちに、ドゥルシネーアの美しさを認めないという理由で襲いかかり、返り討ちにあいます。そこを村で近所に住んでいた百姓に発見され、ドン=キホーテは倒れたまま村に帰ります。

 ドン=キホーテを見た彼の家政婦と姪は、この事態の原因となった書物を残さず処分するべきだして、司祭と床屋の詮議の上でいくつか残されたものの、ほとんどの書物が焼却され、書斎の壁は塗りこめられます。

 やがてドン=キホーテが回復すると、書斎は魔法使いに消し去られたと告げられ、ドン=キホーテも納得します。遍歴の旅をあきらめないドン=キホーテは近所の教養の無い農夫サンチョ=パンサを、手柄を立てて島を手にいれ、その領主にするという約束のもと、従士とします。ドン=キホーテは路銀をそろえ、甲冑の手直しをして二度目の旅に出ます。

 やがてドン=キホーテとサンチョは3〜40基の風車に出会います。ドン=キホーテはそれを巨人だと思いこみ、全速力で突撃し、その衝撃で跳ね返されて野原に転がります。

 サンチョの現実的な指摘に対し、ドン=キホーテは自分を妬む魔法使いが、巨人退治の手柄を奪うため巨人を風車にしたと話し、なおも旅を続けます。

後編

 遍歴の旅から戻ったドン=キホーテはラ=マンチャで静養していました。一月ほど後に司祭と床屋が訪れると、やはり狂気は治癒していません。

 そんな中、ドン=キホーテの家にサンソン=カラスコという学士が訪れます。カラスコが言うには、ドン=キホーテの伝記が出版され(『ドン・キホーテ 前編』)、広く世の中に出回っているそうです。ドン=キホーテ主従とカラスコは、伝記に書かれた冒険について、またその矛盾について語り合います。

 やがてドン=キホーテとサンチョは三度目の旅立ちの用意をし、出発します。ドン=キホーテの姪や家政婦は引き止めようとするものの、カラスコはむしろ出発を祝福して送り出します。

 主従が最初に向かった先は、エル=トボーソの村でした。ドン=キホーテが三度目の出発にドゥルシネーアの祝福を受けたいと考えたためです。キホーテはサンチョに、ドゥルシネーアを呼んでくるように頼むものの、サンチョは困惑したす。ドゥルシネーアは架空の人物で、モデルとなったアルドンサ=ロレンソのこともよくは知らないのでした。

 結局サンチョは、エル=トボーソの街から出てきた三人の田舎女を、ドゥルシネーアと侍女だとします。その結果、ドン=キホーテは、自分を憎む魔法使いの手によってドゥルシネーアを田舎女の姿に見せる魔法をかけられているものだと考え、彼女らの前にひざまずき、忠誠を誓うものの、相手にされません。ドン=キホーテは、心の支えであったドゥルシネーアに残酷な魔法がかけられたことを嘆きます。

 やがて主従は、「鏡の騎士」と名乗る、恋に悩む遍歴の騎士と出会います。ドン=キホーテは鏡の騎士と意気投合し、騎士道について語り合うものの、鏡の騎士が「かつてドン=キホーテを倒した」と語ると、自らがドン=キホーテであると名乗り、その発言を撤回させようと決闘を挑みます。勝負はドン=キホーテが勝利します。鏡の騎士の乗っていた馬のせいでした。

 落馬した鏡の騎士の兜を取ってみると、正体は学士のサンソン=カラスコでした。カラスコはドン=キホーテを決闘で打ち負かすことによって村に留まらせようとしていました。決闘によればドン=キホーテに従わせられるとみたからです。ドン=キホーテは、目の前のカラスコは魔法使いが化けた偽者と思います。

 やがて、ドン=キホーテ一行のところに国王への献上品のライオンをのせた馬車が通り、これを冒険とみたドン=キホーテは、ライオン使いに対して、ライオンと決闘したいと願い出ます。その場の全員がドン=キホーテを止めようとするものの、ドン=キホーテは聞こうとせず、ライオン使いを脅すので、やむなくライオン使いは檻の鉄柵を開け放ちます。何度もライオンを大声で挑発するドン=キホーテですが、ライオンはドン=キホーテを相手にせず、ドン=キホーテは不戦勝だとして、二つ名を「ライオンの騎士」とあらためます。

 やがて主従は、立ち寄った先でカマーチョという富豪の結婚式に居合わせます。カマーチョは金の力でキテリアという女性と結婚しようとするものの、そこにキテリアの恋人であるバシリオが現れ、狂言自殺をしてキテリアとカマーチョの婚姻を破棄させます。大勢の客がもめて大騒ぎになるところ、ドン=キホーテが仲裁に入り、事なきを得ます。バシリオとキテリアはドン=キホーテに感謝し、彼を住まいに招きます。キホーテはそこに三日滞在し、その間に二人に思慮深い二三の助言をします。

 なおも旅を続けた二人は、鷹狩りの一団にいた公爵夫人に出会う。彼女はドン=キホーテとサンチョを見ると、すぐに自分の城に招待します。公爵も夫人も『ドン・キホーテ』前編をすでに読んでおり、2人をからかおうとしたのでした。ドン=キホーテは、公爵夫妻の城で壮大な歓待を受けます。

 そしていたずらの一環として、ドン=キホーテとサンチョは、ドルシネアの呪いを解く唯一の方法は、サンチョに 3,300 回の鞭打ちを与えることだと信じ込まされます。サンチョは当然これに抵抗し、主人との不和につながります。

 公爵の庇護の下、サンチョは最終的に約束されていた総督の地位を得るものの、それは偽りのものでした。

 キホーテはバルセロナの海岸で白月の騎士(カラスコ)と戦います。敗北したキホーテは取り決められた騎士道の条件に従います。武器を捨て、1年間騎士道行為をやめることにします。その間に友人や親族は彼が治癒するよう願います。

 家に戻る途中、キホーテとサンチョはドルシネアの幻滅を「解決」します。村に戻ると、キホーテは田舎で羊飼いとして引退するといいますが、家政婦は家にいるように勧めます。その後すぐに、病気でベッドに横になり、後に夢から目覚めると、再びもとのアロンソ=キハーノに戻り、正気になっていました。

 サンチョはドルシネアへの関心を取り戻そうとしますが、キハーノは以前の野心を放棄し、自分が引き起こしたことについて謝罪するだけです。キハーノは遺言を口述しますが、その遺言には、姪が騎士道の本を読む男性と結婚した場合は相続権を失うという条項が含まれています。

 キハーノが死んだ後、作者は、語るべき冒険はもう存在せず、ドン=キホーテに関するさらなる本は偽物になるだろうと話します。

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