始めに
ヴェルヌ『八十日間世界一周』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ロマン主義
ヴェルヌはSF小説のルーツとよべる作家です。
影響を受けたのは特にユゴーで、そのロマン主義から多大な示唆をうけました。ユゴーの作品のような、ダイナミックなプロットやヒューマニズムが特徴です。
他にヴェルヌに影響を与えたのは、アメリカの作家ポーです。ヴェルヌはポーの論理的・科学的な説明を駆使して、超自然的な現象や冒険を語るスタイルに心酔していました。ポー『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』に深く感銘を受け、数十年後にその続編として『氷のスフィンクス』を執筆しました。
『ロビンソン・クルーソー』の著者であるダニエル・デフォーも、ヴェルヌの創作の源泉です。ヴェルヌは無人島でのサバイバルというテーマ(ロビンソナード)を好み、『神秘の島』や『十五少年漂流記』など、デフォーの系譜を継ぐ作品を多く残しました。
『最後の中モヒカン族』などで知られるアメリカの作家クーパーからは、大自然の中での冒険や、フロンティアスピリットの影響を受けています。
また小デュマとも繋がりを持ち、影響されました。
進歩主義
19世紀後半、鉄道や蒸気船などの交通網が急速に発達しました。ヴェルヌはこの物語を通して科学と技術があればかつては不可能だったことが可能になるという時代の高揚感を描いています。地球が物理的に小さくなり、人類が時間と空間をコントロールし始めた高揚感がテーマの根底にあります。
主人公フィリアス=フォッグは、まるで機械のように正確で冷静な人物として描かれています。彼はあらゆるトラブルを計算と論理で解決しようとします。この物語は、混沌とした世界を人間の知性と規律によって攻略するプロセスを描いた知的ゲームでもあります。
物語の結末で、フォッグは賭けに勝って大金を得るよりも、旅の途中で救ったアウダ夫人と結ばれることの方が価値があると悟ります。目的のために始めた旅が、最終的には人間的な繋がりや愛情という予想外の報酬をもたらす。これこそが、人生という旅の真のテーマであると示唆されています。
大英帝国の全盛期に書かれた作品であるため、当時のヨーロッパ中心主義的な視点も含まれていますが、同時に各地の風習や困難に直面することで、登場人物たちが成長していく姿も描かれています。
物語世界
あらすじ
物語は1872年のロンドン、紳士たちが集まる改革クラブでの突拍子もない賭けから始まります。英国紳士フィリアス=フォッグは、非常に規則正しく、まるで時計のように正確な男でした。彼はクラブの仲間と80日間で世界一周ができるかという議論になり、当時の全財産の半分にあたる2万ポンドを賭けることになります。彼は雇ったばかりのフランス人執事パスパルトゥーを連れ、その日の夜にロンドンを飛び出します。
時を同じくして、ロンドンの銀行で大金強盗事件が発生。フォッグの突然の出発と大金の所持を怪しんだ刑事フィックスは、彼を犯人だと決めつけ、逮捕状を待ちながら世界中を追いかけ回します。
フォッグ一行は、あらゆる交通手段を駆使して東へと進みます。インドでは、鉄道が未開通の区間に遭遇します。ゾウを購入してジャングルを突破する際、生贄にされそうになっていた王妃アウダを救出し、仲間に加えます。
香港・日本では、フィックスの妨害でパスパルトゥーとはぐれるトラブルが発生します。パスパルトゥーは横浜でサーカス団に入り、フォッグと奇跡の再会を果たします。
アメリカでは、蒸気機関車で大陸を横断します。先住民の襲撃や、壊れかけの橋を猛スピードで渡るなど、スリリングな展開が続きます。
大西洋で、船の燃料が尽きると、フォッグは船の木製部分を買い取って燃料として燃やし、無理やり英国へ突き進みます。
ついに英国のリヴァプールに到着。しかし、待ち構えていたフィックス刑事にフォッグは逮捕されてしまいます。誤認逮捕だと判明して釈放されたときには、予定の時刻を数分過ぎていました。
失意のなか帰宅したフォッグでしたが、翌日アウダとの結婚準備のために教会へ行ったパスパルトゥーが驚愕の事実に気づきます。「今日は土曜日です。日曜じゃありません」と。
東回りに移動し続けたことで、日付変更線を越える際、知らず知らずのうちに1日得をしていたのです。フォッグは間一髪、締め切りの数秒前にクラブへ駆け込み、賭けに勝利します。




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