始めに
ヴェルヌ『神秘の島』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ロマン主義
ヴェルヌはSF小説のルーツとよべる作家です。
影響を受けたのは特にユゴーで、そのロマン主義から多大な示唆をうけました。ユゴーの作品のような、ダイナミックなプロットやヒューマニズムが特徴です。
他にヴェルヌに影響を与えたのは、アメリカの作家ポーです。ヴェルヌはポーの論理的・科学的な説明を駆使して、超自然的な現象や冒険を語るスタイルに心酔していました。ポー『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』に深く感銘を受け、数十年後にその続編として『氷のスフィンクス』を執筆しました。
『ロビンソン・クルーソー』の著者であるダニエル・デフォーも、ヴェルヌの創作の源泉です。ヴェルヌは無人島でのサバイバルというテーマ(ロビンソナード)を好み、『神秘の島』や『十五少年漂流記』など、デフォーの系譜を継ぐ作品を多く残しました。
『最後の中モヒカン族』などで知られるアメリカの作家クーパーからは、大自然の中での冒険や、フロンティアスピリットの影響を受けています。
また小デュマとも繋がりを持ち、影響されました。
進歩主義
テーマは人間は知識と科学があれば、何もない場所から文明を築けるというヴェルヌらしい科学的楽観主義です。中心人物である技師サイラス=スミスは、島にある天然資源だけを使って、火、陶器、化学薬品、さらには電信機まで作り出します。運命に翻弄されるのではなく、自然を科学で支配するという当時の産業革命期の自信が反映されています。
島に漂着した5人は、元軍人、記者、水夫、黒人、そして少年と、社会的立場がバラバラです。しかし、彼らは対立することなく、共通の目的のために完璧な協力体制を築きます。これは、異なる技能を持つ人々が平等に貢献し合う理想的な小社会の縮図として描かれています。
タイトルの意味
ロビンソン=クルーソーが自然との共存を模索したのに対し、『神秘の島』の登場人物たちは、島を徹底的に文明化しようとします。荒野を耕し、動物を飼い慣らし、名前のない土地に名前を付けます。人間が環境をコントロール下に置くことへの情熱が描かれていますが、最終的に島が火山噴火で崩壊するという結末は、人間の営みの儚さも示唆しています。
物語のタイトルにもある神秘は、背後で彼らを助ける謎の存在のネモ船長を指します。かつて『海底二万里』で孤独な復讐者だったネモ船長が、この島で余生を送り、漂流者たちを陰ながら見守る姿は、罪の贖いと死を前にした和解という精神的なテーマを付け加えています。
物語世界
あらすじ
南北戦争下の1865年、南軍の捕虜収容所から、知略に長けた技師サイラス=スミスら5人の男が気球に乗って脱出します。しかし、猛烈な嵐に巻き込まれ、太平洋の孤島、リンカーン島に墜落してしまいます。
彼らは持ち物をすべて失いましたが、サイラス技師の圧倒的な科学知識を駆使して、驚くべき速さで生活を豊かにしていきます。火の確保から始まり、陶器、レンガ、化学薬品を自作します。さらには、島に鉄鉱石を見つけて製鉄を行い、電信機まで設置してしまいます。崖の洞窟を改造した石の館(グラニット・ハウス)を拠点に、彼らは島を第2の故郷へと変えていきます。
順調な開拓の裏で、不可解な出来事が次々と起こります。絶体絶命のピンチに、なぜか必要な道具が箱に入って届いたり、攻めてきた海賊の船が目に見えない爆発で一瞬にして沈んだり。誰かが自分たちを陰から見守り、助けてくれているのではないかという疑念が強まります。
物語の終盤、ついに神秘の正体が明かされます。島の地下にある巨大な洞窟に隠れていたのは、かつて世界を驚かせた潜水艦ノーチラス号と、老いたネモ船長でした。
孤独に死を待っていた彼は、漂流者たちの勇気と団結心に心を打たれ、密かに彼らを助けていたのです。
しかし、島の火山が活動を再開し、大爆発の危機が迫ります。ネモ船長から警告と財宝を託された一行は、島が完全に消滅する寸前、かつて自分たちが更生させた元犯罪者の仲間アイルトンを迎えに来た救助船によって、間一髪で救い出されるのでした。



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