始めに
ロンゴス『ダフニスとクロエ 』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
愛と成長。パストラル
テーマは、愛(エロス)とは何かを全く知らない二人が、いかにしてそれを学び、成熟していくかという過程です。 彼らは互いに惹かれ合いながらも、その感情が何であるか、どう表現すればよいのか分かりません。自然の中で動物たちを観察したり、年長者から教えを受けたりしながら、性的な目覚めを含めた愛の作法を学んでいきます。
物語の舞台であるレスボス島の豊かな自然は、単なる背景ではなく、都会の喧騒や汚れに対する純粋さの象徴として描かれています。都会的な人間はしばしば狡猾で暴力的な存在として描かれ、それに対し、羊飼いとして育つ二人は自然のサイクルの中で守られています。人間と自然、そして家畜たちが一体となって生きる黄金時代のような理想的な生活が強調されています。
幻想文学。貴種流離譚
二人の恋路は、単なる偶然ではなく、神々の意志、特にエロスとパン、そしてニンフたちによって導かれています。危機に陥るたびに神的な力が働き、二人は救い出されます。人間の努力だけではどうにもならない運命の力を、神話的なファンタジーとして肯定的に描いています。
物語の結末で明かされる捨て子だった二人が、実は貴族の子であったという展開は、当時のギリシア小説の定番ですが、ここには高貴な魂は、育ちに関わらず現れるという貴族主義的なテーマも隠されています。
物語世界
あらすじ
レスボス島の牧歌的な風景の中、山羊飼いのラモンが赤ん坊の男の子を、羊飼いのドリュアスが女の子をそれぞれ拾います。二人はそれぞれダフニス、クロエと名付けられ、実の兄妹のように、しかしそれ以上に親密な関係で健やかに育ちます。
思春期を迎えた二人は、互いに対してこれまでにない胸の高鳴りを感じ始めます。しかし、彼らは恋という概念を知りません。なぜ胸が苦しいのか、どうすればこの気持ちは収まるのかと悩み、川で水浴びをしたり、キスをしてみたりと試行錯誤します。
古老フィレタスからエロス(愛の神)の存在と、その癒やし方は接吻と抱擁、そして横たわることだと教わりますが、具体的なやり方までは分かりません。
二人の恋路を邪魔するように、過酷な事件が次々と起こります。ダフニスが海賊にさらわれますが、牛たちの機転で脱出します。隣町の軍勢にクロエが連れ去られますが、森の神パンが巻き起こした超常現象によって救い出されます。ダフニスの美しさに目をつけた都会の女性リカエニオンが、彼に愛の営みを実地で教え込みます。これによりダフニスだけが「大人の階段」を一歩先に登ります。
物語の終盤、領主が村を訪れます。そこで、二人が赤ん坊の時に持っていた証拠品がきっかけとなり、二人が実は都会の貴族の子供であったことが判明します。
身分が証明された二人は、周囲の祝福を受けて結婚。しかし、彼らは豪華な都会の暮らしを選ばず、愛着のある田舎の牧場へ戻り、生涯仲睦まじく羊飼いとして暮らしました。




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