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ジョージ・ゴードン・バイロン『ドン・ジュアン』解説あらすじ

ジョージ・ゴードン・バイロン
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始めに

ジョージ・ゴードン・バイロン『ドン・ジュアン』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

バイロンの作家性

 バイロンはロマン派の代表格でありながら18世紀のアレキサンダー=ポープを熱狂的に崇拝していました。緻密な韻律や、鋭い風刺の精神を学びました。


 ​バイロン的な孤独で誇り高く、罪を背負った英雄の原型は、ミルトンの『失楽園』に登場するサタンにあります。神に逆らい、地獄に落とされてもなお自尊心を失わないサタンの姿に、バイロンは強い共感を覚えました。


​ ​フランスの哲学者ルソーの自然への回帰や自己の感情の絶対視は、バイロンの思想の根底にあります。

 ドイツ文学の巨匠ゲーテ、特に『若きウェルテルの悩み』や『ファウスト』は、バイロンに多大なインスピレーションを与えました。
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 シェリーとの親交は重要です。1816年のスイス滞在時、シェリーと共に過ごす中で、より哲学的形而上学的なテーマへと関心を広げました。またこの時期の怪談会が、メアリー=シェリーの『フランケンシュタイン』や、バイロンの断片から生まれた『吸血鬼』の誕生を促しました。

ドンファンの脚色

 伝説上のドン=ファンは女をたぶらかす極悪非道の誘惑者ですが、バイロンの描くジュアンは全く異なります。彼自身が女性を誘惑するのではなく、常に女性たちに見初められ、流されていく受動的な存在として描かれます。これは、人間がいかに環境や偶然に支配されているかというバイロンの人間観を反映しています。


​ ​バイロンはこの作品を、当時のイギリス社会やヨーロッパ全土の道徳的な建前を笑い飛ばすために書きました。特にイギリス風のカンを激しく嫌いました。高潔なフリをしながら裏ではドロドロしている貴族社会や、大義名分を掲げて行われる戦争の虚しさを、軽妙なタッチで批判しています。

リアリズム、語り

 ロマン主義の詩人でありながら、バイロンはこの作品で恋愛を極めて現実的に捉えています。精神的な崇高さを追求するのではなく人間は結局のところ肉体に縛られた生き物であるというリアリズムが貫かれています。

 ​この詩の最大の特徴は、物語の途中で語り手が読者に直接語りかける脱線の多さです。バイロンは物語の筋から逸れて、自身の死生観、文学論、過去の思い出を語ります。人生は冗談のようなものだという懐疑主義が、作品全体のトーンを支配しています。

物語世界

あらすじ

 ​物語はスペインのセビーリャから始まります。厳格な母親に育てられた美青年ジュアンは、人妻のドナ=ジュリアと恋に落ちます。しかし、寝室に夫が踏み込んでくるという不倫発覚の修羅場を迎え、ジュアンは全裸で逃げ出す羽目に。
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 スキャンダルを恐れた母親によって、ジュアンは国外追放に出されます。船旅に出たジュアンを悲劇が襲います。凄まじい嵐で船が難破。生き残った人々がカニバリズムに手を染めるという地獄絵図の中、ジュアンだけが命からがらギリシャの島に漂着します。


​ そこで海賊の娘ハィディに救われ、二人は天国のような純愛を育みます。しかし、死んだと思われていた海賊の父ランブロが帰還。ジュアンは鎖に繋がれ、奴隷として売り飛ばされます。ハィディは悲しみのあまり、ジュアンの子を宿したまま息絶えます。


​ 奴隷市場に売られたジュアンは、トルコの宮廷へ。ジュアンの美貌に目をつけたスルタナ(皇后)が、彼を夜の相手にするために買い取ります。男の侵入が禁じられたハーレムに、ジュアンは女装して潜入させられるという屈辱を味わいます。


​ 皇后の嫉妬から命を狙われ、なんとか脱出。そのまま戦場へと流れていきます。​舞台は露土戦争の最前線へ。激戦地イシュマイルの包囲戦で、ジュアンは図らずも武勲を立てます。さらに、戦火の中で孤児となった少女レイラを救うという騎士道精神も見せます。


 勝利の報告のためにロシア宮廷へ送られたジュアンを、今度は女帝エカチェリーナ2世がロックオン。彼は女帝の愛人として贅沢三昧の生活を送ります。ロシアの気候と過剰な公務で体調を崩したジュアンは、静養を兼ねて外交使節としてイギリスへ送られます。


​ ​物語の最終舞台は、バイロン自身の故郷でもあるイギリスです。ロンドンに到着したジュアンは、洗練されているが中身のないイギリス貴族社会に迎え入れられます。理知的なアデライン、純真なオーロラ、奔放なフィッツ・フルク公爵夫人の間で再び翻弄されます。幽霊騒動などのドタバタが続く中、第17編の冒頭で筆が途絶えています。

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