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オニール『奇妙な幕間狂言』解説あらすじ

ユージン・オニール
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始めに

オニール『奇妙な幕間狂言』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

オニールの作家性

 オニールが最も大きな影響を受けたのが、スウェーデンの劇作家ストリンドベリです。 また​近代演劇の創始者であるイプセンも、初期のオニールに強い影響を与えました。両者の影響で当初はイプセン的な社会劇を模索していましたが、次第にそこから脱却し、より象徴的作風へ向かいます。


​ オニールの思想形成において欠かせないのが哲学者ニーチェです。『悲劇の誕生』や『ツァラトゥストラはこう語った』を愛読し、神の死のあとの人間の苦悩や、ディオニュソス的な陶酔を劇作に取り入れました。


​ ​オニールは近代的な心理学を用いて、古代ギリシャ悲劇を再構築しようと試みました。『喪服の似合うエレクトラ』は、アイスキュロスの『オレステイア』三部作を南北戦争後のアメリカを舞台に翻案したものです。


​ ドストエフスキーなどロシアの文豪からも、心理の描き方を学びました。

語りの構造と効果

 この作品の最大の特徴は、登場人物が会話の途中で心の声を観客に向かって漏らす演出です。人間がいかに嘘をつき、自分を偽って社会生活を送っているかを描きます。他の登場人物には聞こえない設定の本音が暴露されることで、人間関係の虚飾が浮き彫りになります。


 ニーナは劇中で「現在は、過ぎ去った過去と、まだ来ぬ未来との間にある、奇妙な幕間にすぎない」といった趣旨のセリフを吐きます。激しい愛憎劇の果てに、老いとともにすべてが静まり返っていく結末は、人生の空虚さと平安を同時に描き出しています。

​ ​主人公ニーナ=リーズの一生を通じて、当時の女性が直面していた抑圧と、そこからの解放を描いています。ニーナは、父、亡き恋人、夫、愛人、そして息子という5人の男を通じて、自分を補完しようともがきます。彼女が父なる神ではなく、慈悲と残酷さを併せ持つ母なる神を希求する点は、当時の宗教観への挑戦です。


​ またオニールによく現れる逃れられない運命のテーマが、ここでは遺伝やトラウマとして描かれます。夫の家系に流れる精神病の血筋を恐れ、ニーナが中絶と密通を選択する展開は、科学的心理的な決定論に支配された人間の苦悩を象徴しています。

物語世界

あらすじ

​ ​物語は第一次世界大戦直後から始まります。ニナは、最愛の婚約者ゴードンを戦死で失います。父の反対で彼と最後の一夜を共にできなかったことを激しく悔やみ、その心の穴を埋めるために、復員兵たちの看護という名目の無差別な肉体関係に身を投じ、自暴自棄になります。


​  ニナの友人である小心者のチャールズ(チャーリー)や、医師のダレルは彼女を心配し、彼女を救うために善良な青年サムとの結婚を勧めます。ニナは愛のないまま、再生のためにサムと結婚します。


​ ​幸福な結婚生活が始まるかと思いきや、衝撃の事実が発覚します。サムの母親から、自分らの家系には恐ろしい狂気の血が流れていて子供を産んではいけない、と告げられます。すでにサムの子を宿していたニナは、絶望の中で密かに中絶します。


​ しかし、夫サムに自信を持たせるためには子供が必要だと考えたニナは、医師ダレルに健康な子供を作るための種を提供してほしいと頼みます。


​ あくまで純粋に科学的な協力として始まった二人の関係でしたが、次第に本物の愛に変わってしまいます。ニナは、夫サムには内緒でダレルとの間にできた息子に亡き恋人にちなんでゴードンと命名し、育て始めます。


​ ​月日は流れ、息子ゴードンは成長します。ニナは、夫サム、愛人ダレル、そして自分を密かに慕い続けるチャーリーという3人の男を支配し、奇妙な均衡の中で生活を続けます。しかし、息子は実の父であるダレルを嫌い、母の過干渉に反発して去っていきます。


​ やがて夫サムが急死。ついにダレルと結ばれる権利を得たニナでしたが、二人の間にはすでに情熱は残っておらず、お互いを激しく消耗させただけでした。


 結局、ニナは最後に残った、自分を性的対象としてではなく娘のように愛してくれる初老の友人チャーリーの傍らで、静かで虚無的な老後を受け入れます。

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