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パラニューク『ファイト=クラブ』解説あらすじ

パラニューク
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始めに

 パラニューク『ファイト=クラブ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

生の哲学

 エイミー=ヘンペル、マーク=リチャード、デニス=ジョンソン、ジョーン=ディディオン、トム=ジョーンズ、ブレット=イーストン=エリスのほか、フーコー、ニーチェ、カミュなどからパラニュークは影響を受けています。

 本作もフーコーやニーチェと重なる、批判理論的なテーマを持っています。

 カミュの実存主義のような生の哲学をもテーマとします。

語りの構造

 本作のオチは映画版のせいで有名です。

 匿名の語り手は、自動車会社の製品リコール担当者として働いています。仕事のストレスと頻繁な出張による時差ボケが原因で、語り手は不眠症に悩まされます。そんな彼がタイラー=ダーデンと名乗る謎の男と知って、ファイト・クラブという喧嘩のための組織をつくり、次第にそれがエスカレートするのですが、実はタイラーダーデンの正体が語り手のもう一つの人格であることがあかされます。

 語り手はそのことを途中まで知らず、信頼できない語り手になっています。

資本主義、カウンターカルチャー批判

 『ファイト・クラブ』のタイラー=ダーデンは、カウンターカルチャーの象徴でありつつ資本主義が内側から生み出した亀裂そのものであり、その亀裂は外部へ逃げられないようなものです。

 タイラーは反消費、反企業、反管理社会を叫びながら、実際には欲望の組織化、規律化、カリスマへの服従、暴力の儀式化を通じて、資本主義と同型の構造を再生産してしまう存在になっています。

 原作のラストが示唆的なのは、映画と違ってカタルシスを与えないところで、むしろタイラーという過剰な抗議そのものが、資本主義の自己免疫反応として処理されていく感触が強くあります。主人公がタイラーから切断されたとしても、それは解放というより症状の一時的沈静に近くて、システム自体が揺らいだわけではありません。だから反乱は外部からの否定ではなく、内部で循環し、消費され、最終的に回収されます。

 タイラーは資本主義の敵でありながら、資本主義が自分自身を更新するために必要とする幻想装置でもあり、ピンチョン『ヴァインランド』の反体制運動が国家と資本に「既に織り込まれている」感じと重なります。

映画版との違い

 本作はフィンチャー監督が映画化していますが、終盤の展開が特に違います。

 映画版では、主人公はタイラーを自殺的行為によって克服し、マーラと心を通わせながら、プロジェクトメイヘムによるビル爆破と崩壊を眺める姿が最後に描かれます。これは資本主義への対抗や革命が成功したことを示唆するというよりも、むしろマーラとの相互に利他的な関係性を資本主義や消費社会の対抗軸として捉えようとするものと解釈でき、これも『ヴァインランド』やドストエフスキー『罪と罰』と重なります。

 原作の本作では、プロジェクトメイヘムは失敗し、ビル爆破は頓挫します。その後語り手は精神病院で目を覚ましますが、自分が天国にいると信じ、人間性について神と議論している空想にふけります。すると、病院の職員たちが語り手に近づき、彼らはプロジェクトのメンバーだと明かします。彼らは計画はまだ続いていること、そしてタイラーが戻ってくることを期待していることを語りるのでした。

 このように原作では、壊れたのは主人公の幻想だけで、世界は何一つ変わっておらず、資本主義の制度とそのミニチュアであるファイト・クラブに絡め取られたままであるという閉塞感が描かれます。

物語世界

あらすじ

 匿名の語り手は、自動車会社の製品リコール担当者として働いています。仕事のストレスと頻繁な出張による時差ボケが原因で、語り手は不眠症に悩まされます。

 治療を受けようとした際、医師から「本当の苦しみがどんなものかを知るために」と、精巣がん患者のための支援グループに参加するよう勧められます。語り手は、自身は精巣がんではないにもかかわらず、他人の苦しみを分かち合うことで不眠症が軽減されると悟ります。

 治療は効果を発揮していたものの、今度は偽りの口実で支援グループを訪れていたもう一人の観光客であるマーラ=シンガーに出会います。動揺したマーラは語り手に、ここにはふさわしくないと諭します。語り手は、マーラの妨害を憎み始めます。衝突の後、二人は互いを避けるため、別々の支援グループの会合に出席することに同意します。この休戦は不安定で、語り手の不眠症は再発してしまいます。

 出張中、語り手はヌーディストビーチで(版によっては飛行機の隣の席で)タイラー=ダーデンという見知らぬ男に出会ったことを思い出します。爆発で語り手のマンションが破壊された後、語り手はタイラーの家に泊まりたいといいます。タイラーは承諾するものの、代わりに「思いっきり殴ってほしい」と要求します。

 二人はその後、殴り合いを楽しむようになります。二人は同棲を始め、「ファイトクラブ」を設立し、似たような気質の男たちを集めて8つのルールに基づいた素手での格闘試合を行います。

「ファイトクラブについては話すな
 ファイトクラブについては絶対に話すな
 誰かが「ストップ」と言ったり、タップアウトしたり、力が入らなくなったりしたら、戦いは終わり。
 戦うのはたった二人だけ。
 一度に一つの戦い。
 シャツも靴も着ずに戦う
 戦いは必要な限り続く
 これがファイトクラブでの初めての夜なら、戦わなければならない」

 その後、メカニックが語り手に 2 つの新しいルールを教えます。クラブの中心は、戦っている 2 人の男性以外いないということと、クラブは常に無料であるというルールです。

 マーラは、語り手が最近支援グループに参加していないことに気づき、自殺未遂でザナックスを過剰摂取してしまったと彼に電話をかけます。タイラーは仕事から戻り、薬のせいで支離滅裂なマーラの電話を取り、彼女を助け出します。

 タイラーとマーラは、語り手とマーラを困惑させる不倫関係に発展します。この不倫関係の間、マーラはファイトクラブの存在も、タイラーと語り手の関係も全く知りません。タイラーとマーラが同時に登場することは一度もないため、語り手はタイラーとマーラが同一人物なのではないかと疑いました。

 ファイトクラブが全国規模で展開するにつれ、タイラーはそれを利用して反消費主義の思想を広め、メンバーを募り、アメリカ企業に対するより手の込んだいたずらを仕掛けるようになります。最終的に彼は最も熱心なファイトクラブのメンバーを集め、プロジェクト=メイヘムを結成します。これは現代文明を崩壊させるために自らを鍛え上げるカルト的な組織です。この組織は、ファイトクラブと同様に、一連のルールによって運営されています。

「質問するな。
 絶対に質問するな
 言い訳するな。
 嘘をつくな
 タイラーを信頼しろ」

 語り手は当初はプロジェクト=メイヘムの忠実な参加者でしたが、その活動の暴力性が増すにつれ、不快感を覚えます。精巣がん支援グループの友人ボブが破壊工作中に殺害された後、語り手はタイラーとその支持者たちを阻止しようと決意します。

 ある日、マーラはうっかり語り手に、彼とタイラーは同一人物だと明かしてしまいます。精神状態が悪化するにつれ、語り手の心は人生の問題から逃れるために新たな人格を形成したのでしあ。語り手が嫌っていると公言するマーラとのタイラーの情事は、語り手自身とマーラの情事でした。語り手の不眠症はタイラーの人格が表面化したもので、語り手が眠っている間はタイラーが活動していましあ。タイラーの人格はファイトクラブを結成し、語り手のマンションを爆破したのでした。

 タイラーはプロジェクト=メイヘムで作られた手製の爆弾を使って超高層ビルを爆破する計画を立てています。爆破の標的は近くの国立博物館です。タイラーはこの計画の最中に殉教者として死ぬことを計画しており、語り手もその犠牲となるはずです。

 それを悟った語り手はタイラーを阻止しようと動きます。語り手はビルの屋上に向かうものの、そこでタイラーに銃を突きつけられます。マーラが支援グループの一人と共に屋上に来ると、タイラーは姿を消します。タイラーはマーラの幻覚ではなく、語り手の幻覚だったからです。

 タイラーがいなくなった後、語り手は爆弾が爆発して彼を殺すのを待ちます。爆弾はタイラーが爆薬にパラフィンを混ぜていたため、作動しません。まだ生きていてタイラーの銃を握っていた語り手は、銃を口にくわえて自殺します。

 しばらくして、精神病院で目を覚ますと、語り手は自分が天国にいると信じ、人間性について神と議論している空想にふけります。すると、病院の職員たちが語り手に近づき、彼らはプロジェクトのメンバーだと明かします。彼らは計画はまだ続いていること、そしてタイラーが戻ってくることを期待していることを語ります。

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