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春樹『スプートニクの恋人』解説あらすじ

村上春樹
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始めに

春樹『スプートニクの恋人』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

タイトルと誤解、ビートニク

 初めてすみれとミュウの2人が出会った時の会話で、ミュウが「ビートニク」と、ソ連が打ち上げた人工衛星「スプートニク」を間違えたことで、すみれはミュウのことを秘密裏に「スプートニクの恋人」と呼ぶようになります。

 ビートニクとはケルアック、ギンズバーグ、バロウズなどの作家に代表されますが、たとえばケルアックの『路上』など、自己発見、自己実現の旅をしばしば作品のモチーフとしました。本作も、すみれの自己発見の旅が描かれます。

ミュウは、すみれが初めて恋した女性です。そしてすみれは、ぼくが恋する女性です。

すみれの消失。パラレルワールド

 「ぼく」にミュウより国際電話が入り、すみれが姿を消したので一刻も早くここに来られないかと言われます。「ここ」とはロードス島の近くにあるギリシャの小さな島でした。

 そしてすみれをぼくは探すことになるのですが、本作も例によって、ルイス=キャロル(『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』)に似たパラレルワールドSFで、「こちら側/あちら側」の世界があるところ、すみれはあちら側に行ってしまったのでした。

 春樹文学では『世界の終りとハードボイルド=ワンダーランド』『1Q84』『街とその不確かな壁』などがパラレルワールドSFの代表格です。

あちら側のミュウの半身

 すみれが恋するミュウの欲求などは、すでに失われて、真の欲求や信念を持つ自己そのものが「あちら側」へ行ってしまっているようです。このミュウの半身を探してすみれはあちら側へ行ったのでした。

 物語の最後では、すみれは現実に帰還します。『街とその不確かな壁』と、異世界に恋する人を探して最後に戻ってくるという展開は被ります。

不倫のモチーフ

 語り手のぼくにはガールフレンドがいて、にんじんの母親です。主人公は不倫の恋にあります。この不倫の恋は、ぼくがすみれと結ばれることができないため、破滅を望んでこのような恋に進んでいます。

 にんじんは不倫を決着させるため、万引きをします。万引きをすることによって「ぼく」に警告し、不倫によってにんじんやその母親に危害が及ぶことを悟らせて、不倫をやめさせます。

 『国境の南、太陽の西』でも、主人公の不倫と悪のポテンシャルを描きましたが、本作ではにんじんへの共感や不倫の解消を経て、主人公はすみれを受け入れる準備をします。

物語世界

あらすじ

 22歳の春にすみれは恋に落ちます。相手は既婚者で、女性でした。相手の女性の愛称は「ミュウ」といいます。小学校の教師である「ぼく」は大学在籍中にすみれと知り合い、以来すみれに恋をしていました。

 すみれは、貿易会社を営むミュウの下で働きます。

 8月はじめ、「ぼく」はローマの消印のあるすみれからの手紙を受け取り、ミュウとすみれが仕事でヨーロッパに渡っていることを知ります。それからミュウより国際電話が入り、すみれが姿を消したので一刻も早くここに来られないかと言われます。「ここ」とはロードス島の近くにあるギリシャの小さな島でした。

 失踪直前、すみれはミュウに肉体関係を求めたものの拒否され、翌日、すみれは姿を消します。すみれをさがして、ぼくはすみれが残した二つの文書を見つけます。文書には、すみれが見た夢と、ミュウから聞いた「あちら側」の体験が書かれていました。文書を読みながら、ぼくはすみれが「あちら側」に行ったと思います。

 ある夜、遠くからギリシャ音楽が聴こえます。ぼくは部屋を出て音楽の鳴方へ向かうめのの、音がやむと、そこには誰もいません。結局、すみれの行方もわからず、ぼくは日本に帰ります。

 帰国して新学期が始まると、ぼくはガールフレンド(にんじんの母親)に呼ばれます。呼び出されたスーパーマーケットで、ぼくはにんじんの起こした万引き事件をおさめます。
 その後、ガールフレンドと別れ、年が明けるとにんじんの担任からも外れます。

 すみれは、半年たっても行方不明でした。ある日、東京で車を運転するミュウを見つけます。

 その日の明け方、ぼくが枕元の電話機を眺め、すみれが電話をかけるのを想像していると、本当にすみれから電話がきます。彼女は帰ってきたから、ここに迎えにきて、とぼくに言いました。

 

 

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