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マラマッド『修理屋』解説あらすじ

マラマッド
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始めに

 マラマッド『修理屋』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

モダニズムなどの影響

 マラマッドはロレンス(『チャタレイ夫人の恋人』)、ジョイス、ヘミングウェイ、フォークナー、イエイツなどのモダニズム、ハーディの自然主義、ドストエフスキー、トルストイなどから広く影響を受けています。

 本作はフォークナー『サンクチュアリ』のように、因習のなかにおける法や司法の不正義を描きます。

 こうした諸々の作家の影響を受けつつ、ヒューマニズムに裏付けられた独自の寓話的物語を本作は展開していきます。

神話的象徴の手法

 マラマッドはモダニズム文学の作家から神話的象徴の手法や、エピファニーの発想から影響を受けました。

 モダニズム文学はT=S=エリオットの『荒地』などを皮切りに、フォークナー(『アブサロム、アブサロム!』『響きと怒り』)、ジョイス(『ユリシーズ』)、三島由紀夫(『奔馬』)、大江健三郎(『万延元年のフットボール』『取り替え子』)など、神話的象徴の手法を取り入れるようになりました。これは神話の象徴として特定の対象が描写され、新しい形で神話や特定の対象が発見される機知が喚起する想像力に着目するアプローチです。

 例えば『ユリシーズ』では冴えない中年の広告取りレオポルド=ブルームを中心に、ダブリンの1904年6月16日を様々な文体で描きます。タイトルの『ユリシーズ』はオデュッセウスに由来し、物語全体はホメロスの『オデュッセイア』と対応関係を持っています。テレマコスの象徴となるスティーブン=ディーダラス、オデュッセウスの象徴としてのレオポルド=ブルームのほか、さまざまな象徴が展開されます。

 またジョイスは美学においてエピファニーという発想を提唱しました。これは、「平凡な瞬間の中に、対象がふとした瞬間に見せるその本質の顕れ」のことです。

 マラマッドはジョイスやヘミングウェイなどからの影響から、独自の象徴的手法を展開していきました。

ベイリス事件

 本作はベイリス事件を下敷きにします。これは帝政ロシア末期におけるユダヤ人に対する差別的事件です。キリスト教徒の殺人をユダヤ教徒の祭儀に関係づけるという血の中傷は中世から近代のヨーロッパによくある事例でしたが、これはその一類型です。

 ベイリス事件では1911年3月20日にキエフ市郊外で12歳の少年が死体で発見され、同年7月21日にユダヤ人ベイリスが逮捕されました。これに対しロシア内外から抗議がありました。やがて陪審の結果、2年余り投獄されていたベイリスの無実が明かされ、ベイリスは釈放されます。

物語世界

あらすじ

 1911年ヤコフ=ボクはキエフで不法に暮らしており、居住資格を得るための法的書類を提出したことはありませんでした。

 その春の過越祭の週に、キエフでキリスト教徒の少年が殺害されます。ロシア警察のユダヤ人に対する偏見に満ちた捜査で、ボクは容疑者になり、適正な手続きを経ずに投獄されます。ボクは起訴されていないのに、面会権と弁護士を拒否されます。刑務所にいる間、ボクは頻繁に尋問され、拷問をうけます。尋問のなか、政治、イデオロギーなどに関する情報をきかれます。ボクは、自分は政治的でも宗教的でもないと主張するものの、外国人嫌いの警察は、ボクがユダヤ人であるという理由で、信じようとしません。警察はユダヤ人を政治的強欲さと宗教的過激主義と結びつけていました。

 ボクは、正式な告発も証拠もないまま、何ヶ月も刑務所で過ごします。ボクはそんななか、自分の人生を振り返ります。それから世界における自分の立場や、外国人嫌いと政治権力がしばしば人権を否定することに思い巡らせます。

 何人かの友人が彼の人格を保証し、彼を刑務所から出そうとさまざまな策略を試みるものの、彼らはロシア政府に逮捕され、嫌がらせを受け、脅迫されます。ボクの妻の父親は、警備員に金を渡し、2人が話をできるようにしました。しかし警備員は捕まり、公務執行妨害で刑務所に入れられます。別の男、ビビコフ判事がボクを訪ねるものの、ロシア政府が政治的転覆への関与を誇張したため、国家の敵として捕まり、投獄されます。ビビコフは独房に入れられ、絶望して自殺します。

 ボクは、逮捕されるずっと前に別れた疎遠の妻と面会します。ボクは、警察が妻に面会権を与えて殺人の自白書を手に入れるための計画を練り、面会を強要したことを知ります。ボクは、自白の強要を拒否し、無実を主張します。また妻が他の男性の子供を妊娠しており、その父親が亡くなっていると知ります。妻の精神的葛藤を理解したボクは、彼女を許し、ユダヤ人コミュニティからの承認のため、赤ん坊の父親の役を演じることに同意します。

 刑務所に送られてから 2 年後。ロシアの官僚機構はついにボクに裁判をみとめ、弁護士を雇うことを許可します。弁護士はボクの窮状に同情し、ロシアにはユダヤ人をスケープゴートにする国策が存在することを認めます。弁護士はまた、現在ロシアで自由になっているユダヤ人の多くが、将来ロシアで政治的な理由により根絶されるのを懸念しています。

 裁判所に向かう途中、ボクはニコライ2世皇帝と話しているところを空想します。ボクは、ユダヤ人をスケープゴートにし憎悪する構造を固めた皇帝を非難します。抗議者たちがボクの警察車列を妨害し、護衛の1人が負傷します。ボクは、もはや政治に関与しないではいられないという皮肉について思い巡らせます。

参考文献

・Philip Davis”Bernard Malamud”

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