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マラマッド『ナチュラル』解説あらすじ

マラマッド
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始めに

マラマッド『ナチュラル』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

神話的象徴の手法

 マラマッドはモダニズム文学の作家から神話的象徴の手法や、エピファニーの発想から影響を受けました。

 モダニズム文学はT=S=エリオットの『荒地』などを皮切りに、フォークナー(『アブサロム、アブサロム!』『響きと怒り』)、ジョイス(『ユリシーズ』)、三島由紀夫(『奔馬』)、大江健三郎(『万延元年のフットボール』『取り替え子』)など、神話的象徴の手法を取り入れるようになりました。これは神話の象徴として特定の対象が描写され、新しい形で神話や特定の対象が発見される機知が喚起する想像力に着目するアプローチです。

 例えば『ユリシーズ』では冴えない中年の広告取りレオポルド=ブルームを中心に、ダブリンの1904年6月16日を様々な文体で描きます。タイトルの『ユリシーズ』はオデュッセウスに由来し、物語全体はホメロスの『オデュッセイア』と対応関係を持っています。テレマコスの象徴となるスティーブン=ディーダラス、オデュッセウスの象徴としてのレオポルド=ブルームのほか、さまざまな象徴が展開されます。

 本作も、野球の世界を神話的な象徴によって描いています。マラマッドはジョイスやヘミングウェイなどからの影響から、独自の象徴的手法を展開していきました。

失楽園神話

 本作は神話的ヒーローである才能あふれる十九歳の投手ロイ=ハブズの活躍を描きます。ニューヨーク=ナイツに打者として入団し、手作りのバット「ワンダーボーイ」で活躍するロイでしたが、シーズンの終盤、このまま野球を続けると古傷で死ぬことを知り、また八百長の誘惑を持ちかけられます。

 ロイは悪魔の誘惑に敗れ、試合にも三振によって敗北します。また銃撃事件や八百長スキャンダルが明るみになったことで、野球界という楽園からロイは追放されてしまいます。

 このように物語は失楽園神話の象徴になっています。

映画版との違い

 本作はレヴィンソン監督により映画化されています。

 原作のこちらは全体的にミルトン『失楽園』的な、破滅の物語になっています。ロイは悪魔の誘惑にも、試合にも敗北します。またスキャンダルが明るみになったことで、野球界という楽園からロイは追放されてしまいます。さながらクッツェー『恥辱』のようです。

 一方で、映画版はむしろ『オデュッセイア』やアーサー王伝説のような英雄譚の神話的象徴の物語になっています(マラマッドはJessie weston”From Ritual to Romance”を読んで『ナチュラル』を書いています。これはフレイザー『金枝篇』の影響下で書かれたもので、アーサー王神話の成立を考察するものです)。英雄であるロイは誘惑や苦難を乗り越え、騎士団の名を持つ球団を勝利へと導きます。

物語世界

あらすじ

 才能あふれる十九歳の投手ロイ=ハブズは、シカゴ=カブスの入団テストを受けにいく途中、アスリートを狙う謎の女に銃で撃たれてしまいます。
 それから十五年後、三十四歳になったロイはニューヨーク=ナイツに打者として入団します。手作りのバット「ワンダーボーイ」で活躍するロイでしたが、シーズンの終盤、このまま野球を続けると古傷により突然死する危険があることを知らされます。
 やがて、リーグ優勝を決めるプレイオフが迫ってきて、ロイは八百長を持ちかけられます。この誘いに負けてしまい、最後の打席では心変わりをするものの、それが新聞にリークされ、失脚します。

参考文献

・Philip Davis”Bernard Malamud”

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