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シェイクスピア『終わりよければ全てよし』解説あらすじ

シェイクスピア
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始めに

 シェイクスピア『終わりよければ全てよし』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

典拠

 この劇はボッカッチョの『デカメロン』のナルボーナの女主人ジレッタの物語(3日目の第9話)に基づいています。

 ナルボンヌのジレッタはフランス王の瘻孔を治し、妻を欲しがるベルトラン・ド・ルシヨンを、彼の意に反して結婚させ、彼を裏切ってフィレンツェへ連れ去ります。そこで彼が若い女性に求愛すると、ジレットは彼女に代わって彼と寝て、二人の息子をもうけます。そのために彼は後に彼女を寵愛し、妻として懇願します。ネイフィレが語るこの物語は、サンスクリットの劇作家で詩人の カーリダーサが『シャクンタラーの認識』で先に書いたものです。

 このベッドトリック的な要素などを参照しています。

問題劇

 一般に『終わりよければ全てよし』『尺には尺を』『トロイラスとクレシダ』の3作を問題劇と呼びます。しばしば『ハムレット』『冬物語』『アテネのタイモン』『ヴェニスの商人』などをも含めます。この用語は、批評家フレデリック・ボアズが、ヘンリック=イプセン(『民衆の敵』『人形の家』)の作品を評した問題劇というタームをシェイクスピアに転用したもので、悲劇や喜劇の枠に一致しない、ジャンルとして両義的な要素をはらんでいる傾向のシェイクスピア作品についていう概念です。

 イプセンに対して言われていた「問題劇」というのは、19世紀フランスのウェルメード=プレイの伝統であるプロットと形式重視の恋愛劇の傾向に反した、社会性を重視し古典的形式に必ずしものっとらない自由なスタイルの傾向に言及するものでした。シェイクスピアについて言われる「問題劇」というのは、社会批判的テーマに着目していわれるのでなく、単に悲劇と喜劇のジャンルに則さない内容について特徴づけるもので、まず三一致の法則に則さないロマン主義的スタイルがイプセンと重ねられた感じです。

 本作が問題劇たる所以は、ひとえにそのラストにあり、喜劇ではあるもののヘレナとバートラムのカップル2人の間には今後明るいことばかりではなさそうであるのにデウス・エクス・マキナ的なハッピーエンドで締めくくられています。

物語世界

あらすじ

第1幕

 父を亡くしてロシリオン伯爵の地位を継いだばかりのバートラムが家臣のペーローレスとフランス国王のもとへ伺候し、パリへ向かいます。

 バートラムの母であるロシリオン伯爵夫人に拾われた美しい孤児のヘレナはバートラムを愛しているものの、身分の違いから隠していました。ヘレナは優れた医師であった父から受け継いだ秘伝の処方箋でフランス国王の病を治療し、見返りにバートラムとの結婚を許してもらおうとします。

 この計画に気がついた執事から知らされてロシリオン伯爵夫人はヘレナに問いかけ、自分の息子に対する強い愛情を確かめ、ヘレナに許しを与え、必要な費用や人手も提供します。

第2幕

 ヘレナはパリへ到着し、成功したら選んだ男性を国王の力で夫にする、その代わり失敗したら死ぬという条件で国王の治療にあたります。

 治療は成功し国王は約束通り宮廷にいた若い男たちをヘレナに選ばせ、ヘレナはバートラムを指名します。バートラムは貧乏医者の娘と結婚を拒否するものの、国王に咎められてて結婚します。

 しかしヘレナと初夜の床を避けたいバートラムは用事があるから先に帰宅しろとヘレナにいって、ペーローレスを連れてフローレンスへ出陣します。

第3幕

 ロシリオン伯爵夫人の元へ、バートラムからの手紙が届きます。ヘレナとベッドを共にできないので逃げると告げる手紙を読んで、伯爵夫人は義憤に駆られます。ヘレナもそこへやってきて、「もしも私の指輪を手に入れて、私の子供を産んでみせればお前を妻と認る」記したバートラムからの手紙を伯爵夫人にみせます。手紙を届けた貴族からバートラムのことを聞き、息子が不実な人間になったのはペーローレスの悪影響だと考えます。

 ヘレナは、自分さえいなくなればバートラムは危険な戦場から戻ってこられるだろうからと巡礼の旅に出ます。ヘレナは旅先で知り合ったキャピレット未亡人の家に泊めてもらい、当地でバートラムが大きな戦功を上げたこと、未亡人の娘ダイアナがバートラムから言い寄られていることを知ります。

 そのころ、バートラムの手紙を伯爵夫人に届けたフランス貴族がペーローレスは口先だけの男でバートラムが信頼するに値しない人間だと忠告し、バートラムに証拠を見せようとします。

 ヘレナはダイアナとキャピレット未亡人に協力を請い、ベッド・トリックの作戦を練ります。

第4幕

 軍太鼓を敵に奪われたペーローレスは一人で取り返しに行ってみせると言って、引き下がれなくなります。そこで、ペーローレスに貴族たちが襲い掛かって目隠しをします。

 でたらめな外国語を話して敵に捕まったと思わせ、貴族たちはペーローレスをバートラムの前へ連れていきます。軍事機密をバラし、バートラムを無能呼ばわりするペーローレスに、バートラムは彼を陣中から追放します。

 同じ夜、バートラムに呼び出されたダイアナはヘレナの作戦通りに本当に自分を愛してくれるのならばバートラムの指輪がほしい、その代わりに今夜の二人の逢瀬の記念の指輪をバートラムにプレゼントするという条件を出します。ダイアナは承諾し、ダイアナ(実はヘレナ)と寝ることにします。

第5幕

 戦役も終わり、バートラムも戻ってきたロシリオンではヘレナは死んだと思われています。やむなく国王や伯爵夫人は、バートラムの申し出たラフューの娘との結婚を許すものの、誓いの印として指輪を渡すよう国王が言い渡し、バートラムは自分の指から指輪をラフューの娘に渡します。これを見た国王はその指輪は自分がヘレナに治療の贈ったものだが、と問いただします。

 そこへダイアナが現われ、バートラムの指輪を示しつつ結婚の約束を反故にしたバートラムを非難します。国王にキャピレット未亡人が指輪の本当の持ち主を紹介するといってバートラムの子供を身ごもったヘレナを連れてきます。

 ヘレナはバートラムが以前書き送った手紙を示しその通りにしましたと話し、バートラムは降伏し、「ヘレナをいつまでも愛します」と国王の前に誓います。

 国王は「終わりよければ全てよし」と締めくくります。

参考文献

・高橋 康也 (編集)『研究社シェイクスピア辞典』

・倉橋健 編『シェイクスピア辞典』

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