始めに
シェイクスピア『ヴェニスの商人』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
典拠
友人の借金の保証人になった商人が、致命的な債務を没収される話は、16世紀後半のイギリスで典型的な話です。
ベルモントでの求婚者たちの試練、弁護士に変装した友人の新妻が商人を「肉の1ポンド」の罰から救い出し、支払いとして婚約指輪を要求するという話は、ジョヴァンニ・フィオレンティーノの『イル・ペコローネ』から影響されています。
3つの小箱の話は、物語集『ローマの歌』にあります。
大まかな流れ
ドラマの中心はバサーニオとポーシャのメロドラマと、2人のために金策をはかるアントーニオの悪徳商人シャイロックとの対決です。
アントーニオは、シャイロックから金を借りたものの、返せなければ自分の肉一ポンドを与えなくてはいけなくなり、返す当てがつかなくなったことで、追い込まれてしまいます。そこでポーシャが機転を利かせて、アントーニオを助ける、という流れです。
物語世界
あらすじ
舞台はイタリアのヴェニス(ヴェネツィア)。バサーニオは富豪の娘で相続人のポーシャと結婚したく思っており、友人のアントーニオから金を借りようとするものの、アントーニオの財産は航海中の商船にあります。
そこでアントーニオは悪名高い高利貸しのシャイロックに金を借りに行きます。アントーニオは金を借りるために、指定された日付までにシャイロックに借りた金を返せないと、シャイロックに彼の肉1ポンドを与えなければいけないという条件に合意します。
しかしアントーニオは、船が難破し、全財産を失ってしまいます。シャイロックは、自分の商売を邪魔されて恨んでいたアントーニオに復讐できる機会を得て喜びます。一方、シャイロックの娘ジェシカは純真で、父を嫌ってロレンゾと駆け落ちします。
その頃、バサーニオは、ポーシャと結婚するためにベルモントに向かいます。ポーシャの父親は金、銀、鉛の3個の小箱から正しい鉛の箱を選んだ者と結婚するよう遺言を残していました。バサーニオはポーシャの巧妙なヒントによって正しい箱を選択します。バサーニオはポーシャから貰った結婚指輪を絶対はずさないと誓います。
バサーニオの元にアントーニオがシャイロックに借金返済が出来なくなった報せが届きます。バサーニオはポーシャから金を受け取りヴェニスへと戻ります。一方、ポーシャも侍女のネリッサを連れてベルモンテを離れます。
シャイロックはバサーニオから金を受け取ろうとしません。アントーニオへの憎悪からです。
シャイロックは裁判に訴え、契約通りアントーニオの肉1ポンドを要求します。若い法学者に扮したポーシャがこの件を担当します。ポーシャはシャイロックに慈悲の心を見せるように促すものの、シャイロックは認めず、ポーシャは肉を切り取っていいという判決を下します。
シャイロックは肉を切り取ろうとするもののポーシャは「契約書にない血を1滴でも流せば、契約違反として全財産を没収する」と伝えます。肉を切り取る事を諦めたシャイロックは金を要求するものの、一度金を受け取る事を拒否していた事から認められず、アントーニオの命を奪おうとした罪で財産は没収となります。アントーニオはキリスト教徒としての慈悲を見せ、シャイロックの財産没収を免じ、財産の半分をシャイロックの娘ジェシカに与える事を求めます。シャイロックは、刑を免除され、キリスト教に改宗させられます。
バサーニオはポーシャの変装に気付かずに、お礼をしようとします。結婚指輪を要求するポーシャに、結局指輪を渡してしまいます。
ベルモンテに戻ったバサーニオは、指輪を失った事をポーシャに責められます。謝罪し許しを請うバサーニオに、ポーシャはあの指輪を見せ、全てを告白します。また、アントーニオの船も無事だったのでした。
参考文献
・高橋 康也 (編集)『研究社シェイクスピア辞典』
・倉橋健 編『シェイクスピア辞典』




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