始めに
シェイクスピア『夏の夜の夢』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
典拠
明確に下敷きになった作品はないものの、オウィディウスの『変身物語』やジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』に入っている「騎士の話」などの影響があるとされます。
オウィディウス『変身物語』は、ギリシア・ローマ神話の登場人物たちがいろいろなものに変身してゆく物語集で、ナルキッソスの話が特に有名です。
シーシアスとヒポリタの物語はプルタルコスの『英雄伝』に収録されている「シーシアスの生涯」、ボトムがロバになる展開についてはアプレイウスの『黄金のロバ』などの影響が垣間見えます。
タイトルの意味
本作は『十二夜』と似て、神秘的、霊的祝祭や儀礼を背景にしたドタバタが展開されていきます。
ヨーロッパでは、夏至の祭りが聖ヨハネ祭に移り、この前夜であるワルプルギスの夜には、妖精や魔女が現れ、男女が森に入って恋を語るのが許され、無礼講が認められるなど、さまざまな迷信がありました。
しかし物語のなかで森での騒ぎは五月祭の前夜の4月30日です。五月祭もまた自然の復活や再生を祝うものですが、”A Midsummer Night’s Dream”というタイトルの「ミッドサマー」の示す季節(6月21日前後)になっていません。
これを巡ってさまざまな論争がありますが、「さながら夏至祭のような無礼講」を象徴するタイトルとして設定されているなどと解釈されたりします。
物語世界
あらすじ
アテネ公シーシアス(テセウス)とアマゾン国のヒポリタ(ヒッポリュテ)との結婚式が間近に迫っています。
ハーミアとライサンダーは恋仲ですが、ハーミアの父イジーアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとします。ハーミアは聞き入れず、イジーアスは父の言いつけに背く娘は死刑という古い法律に則って、シーシアスに娘ハーミアを死刑にさせようとします。シーシアスは悩むものの、自らの結婚式までの4日を猶予として、ディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせます。
ライサンダーとハーミアは夜に抜け出して森で会おうとします。ハーミアはこのことを友人ヘレナに打ち明けますが、ディミートリアスを愛しているヘレナは二人の後を追いかけます。
シーシアスとヒポリタの結婚式で芝居をするために、6人の職人が家に集まっています。練習のために次の夜、森で集まることにします。
森では妖精王オーベロンと女王ティターニアが「とりかえ子」を巡って喧嘩をしています。オーベロンはパックを使って、ティターニアのまぶたに花の汁の媚薬をぬらせようとします。媚薬は、目を覚まして最初に見たものに恋させるものです。
パックが森で眠っていたライサンダーたちにもこの媚薬を塗ってしまい、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛してしまいます。また、パックは森に来ていた職人のボトムの頭をロバに変え、ティターニアは彼に惚れます。
とりかえ子の問題が解決し、オーベロンはボトムの頭からロバの頭をとりさり、ティターニアにかかった魔法を解いて和解します。また、ライサンダーにかかった魔法も解かれます。
ディミートリアスはヘレナに求愛し、ハーミアの父イジーアスに頼んで娘の死刑を取りやめさせようとします。
2組の男女、妖精の王と女王は円満になり、6人の職人たちもシーシアスとヒポリタの結婚式で劇を行いました。
参考文献
・高橋 康也 (編集)『研究社シェイクスピア辞典』
・倉橋健 編『シェイクスピア辞典』



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