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ミハイル・ショーロホフ『静かなドン』解説あらすじ

ミハイル・ショーロホフ
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始めに

ミハイル・ショーロホフ『静かなドン』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

​ショーロホフの作家性

 ​ショーロホフの代表作『静かなドン』は、しばしば『戦争と平和』と重ねられます。個人、家族、そして国家の運命が激動の歴史の中で交錯する描き方は、トルストイの手法を直接的に継承しています。


​ アレクサンドル=セラフィモーヴィチは​ショーロホフの才能をいち早く見出し、文壇への足がかりを作った育ての親的存在です。内戦を描いた名作『鉄の流出』の著者である彼は、若きショーロホフの原稿を読み、励まし、助言を与えました。同じくドン地方の出身であったセラフィモーヴィチから、民衆の生活を力強く描く姿勢を学びました。


​ ショーロホフの初期の短編集『ドン物語』などに見られる、土着的で時にグロテスクなまでの生命力や、ユーモアと悲劇の混在は、ゴーゴリの影響を感じさせます。また市井の人々の心理に対する繊細な眼差しや、簡潔ながらも情景が浮かぶ自然描写においてチェーホフの伝統を引いています。


​  ソ連文学の重鎮であったゴーリキーは、ショーロホフが政治的な批判にさらされた際に彼を擁護しました。

個人と歴史

 ​この作品の核心は、歴史の激流の中で、一個人はどう生きるべきかという問いです。主人公グリゴーリ=メレホフは、ロシア革命から内戦という激動の時代に放り込まれます。彼は何が正しいのかを求めて、赤軍(革命派)と白軍(反革命派)の間を揺れ動き、何度も陣営を変えます。


 どちらの側にも真理があり、同時にどちらの側にも残酷な暴力があり、この板挟みの中で、グリゴーリはすべてを失っていく悲劇のヒーローとして描かれています。


​ ​ショーロホフは、ドン地方のコサックという特殊な軍事共同体の伝統的な生き方が、近代化と革命によって根底から破壊される様を描きました。土地への愛着、家父長制、独自の軍事的誇りといったコサックの伝統が、階級闘争という新しい論理によって引き裂かれていきます。昨日までの隣人や家族が、思想の違いから殺し合う内戦の残酷さが克明に描写されています。


​ ​グリゴーリを巡る二人の女性、不倫の恋に燃えるアクシーニャと、献身的な妻ナターリヤとの関係は、作品のもう一つの大きな柱です。暴力と死が支配する戦時下において、アクシーニャとの道ならぬ恋は、彼にとって唯一の生の実感であり、救いでもありました。しかしその情熱が、伝統的な家族の絆を壊し、さらなる悲劇を招くという皮肉な構造になっています。

物語世界

あらすじ

 ​第一次世界大戦前、ドン川沿いのタタールスキー村。コサックの青年グリゴーリは、隣人の妻アクシーニャと激しい恋に落ちます。しかし、保守的なコサック社会では許されぬ不倫でした。父の強制で従順な女性ナターリヤと結婚させられるものの、グリゴーリは彼女を愛せず、家を飛び出してアクシーニャと駆け落ちします。


 ​1914年、第一次世界大戦が勃発。グリゴーリは出征し、戦場での手柄により軍功を立てますが、同時に凄惨な殺し合いの中で精神をすり減らしていきます。


 やがて1917年、ロシア革命が起こります。帝政が崩壊し、戦場にいたコサックたちは革命派(赤軍)と反革命派(白軍)に分裂し、村の中でも対立が始まります。


​ グリゴーリは、どちらの陣営が正しいのか悩み、所属を転々とします。​赤軍に加わるものの、その冷酷な処刑に絶望して離脱します。白軍に加わり、自分の土地と特権を守るために戦うものの、そこにも腐敗と暴力を見出します。


 ​彼は正義を求めて戦場を駆け巡りますが、その代償として、愛する家族を次々と失っていきます。妻ナターリヤは絶望の中で命を落とし、村の仲間たちも血で血を洗う内戦の中で散っていきます。


​ ​内戦の終盤、グリゴーリは最後にして唯一の心の支えであるアクシーニャと共に逃亡を図ります。しかし、その途上で彼女は追っ手の弾丸に倒れ、彼の腕の中で息を引き取ります。​愛する人をすべて失い、疲れ果てたグリゴーリは、武器を川に捨てて村に戻ります。家の門前で、生き残った幼い息子を抱き上げたところで物語は終わります。

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