始めに
ビュルガー『ほらふき男爵の冒険』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
モデルと成立
この物語の主人公、ヒエロニュムス=カール=フリードリヒ=フォン=ミュンヒハウゼン男爵は実在の人物です。
彼はロシア軍に従軍してトルコとの戦争に参加した後、故郷のドイツに帰り、そこで客人に戦場での武勇伝を面白おかしく脚色して語ることで有名になりました。その話があまりに面白かったため、別人の手によって勝手に本にまとめられてしまったのが、この物語の始まりです。
この本は、一人の作家が書き上げたものではなく、時代を経て進化しました。1785年のはドイツ人のルドルフ=エーリヒ=ラスペが、男爵の話を元にロンドンで匿名で出版、当初は英語でした。1786年のはドイツの詩人ビュルガーがドイツ語に翻訳、増補したものです。ここで物語がより芸術的に洗練され、現在知られる形になりました。
ナンセンスな物語
物語の中で語られるホラ話は、論理や物理法則を完全に無視したスケールが特徴です。
敵の陣地を偵察するために、自分が撃った大砲の弾に飛び乗って移動したり、途中で逆方向へ飛ぶ敵の弾に乗り換えて帰還したり。底なし沼に馬と一緒に落ちた際、自分の弁髪を自分の腕で上に引っ張り上げ、その勢いで自分と馬を沼から引きずり出したり。門が閉まった拍子に馬が真っ二つに切断されたが、男爵はそれに気づかず、前半分だけの馬に乗って走り続けたり。散弾が切れたため、代わりに桜の種を装填して鹿を撃ったところ、数年後にその鹿の頭から立派な桜の木が生えていたり。
物語世界
あらすじ
物語は、男爵がロシア軍の騎兵大尉として、トルコとの戦争に参加するところから始まります。雪原で馬を杭に繋いで寝たら、翌朝、雪が溶けて馬が教会の尖塔のてっぺんに吊るされていました。雪が数メートル積もっていたためです。敵陣偵察のために砲弾に飛び乗り、往復します。激戦の末、馬が門の落とし格子で真っ二つにされるものの、男爵は前半分だけで戦い続け、後に馬を縫い合わせます。
男爵は旅の途中で、それぞれ特殊能力を持つ5人の奇妙な家来を仲間に加えます。韋駄天は片足に重りをつけないと速すぎて制御できない男、地獄耳は数マイル先の草が伸びる音まで聞こえる男、名射手は遠く離れたハエの目玉を撃ち抜く男、大力無双は 木を一本残らず引き抜く怪力の男、暴風の鼻は片方の鼻の穴を塞がないと嵐を起こしてしまう男です。この5人と共にトルコのスルタンを訪ね、宮廷のワインを全て飲み干す、世界一速く水を汲んでくるといった無理難題な賭けに勝ち、皇帝の全財産を奪って逃げ切ります。
物語のスケールはさらに広がり、現実離れした場所へと向かいます。投げすぎた斧を拾うためにトルコ豆のつるを登って月へいくと、そこには頭を取り外せる月人間が住んでいました。海上で巨大なクジラに飲み込まれ、その胃袋の中で他の船の乗員たちと村を作って生活、やがて胃袋の中で暴れて脱出します。エトナ火山の火口から地球の裏側へ突き抜けます。
数々の冒険を終えた男爵は、故郷の邸宅に落ち着き、暖炉の前でこれらの話を語ります。




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