始めに
エイクマン『奥の部屋』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
エイクマンの作家性
エイクマンはアンソロジー『フォンタナ・ブック・オブ・グレート・ゴースト・ストーリーズ』の編纂を通じて、先行する怪談作家たちを徹底的に研究していました。
エイクマンはM.R.ジェイムズを高く評価していましたが、単なる模倣ではなく古い伝統を現代の心理的実存的な不安へとアップデートするという形をとりました。
デラメアの持つ夢のような曖昧さや詩的な文体は、エイクマンの作品における何が起きているのか確信が持てないが、とにかく不穏であるという質感の源流といえます。ほかにもマッケン、ブラックウッドに影響されました。
またエリザベス=ボウエンやハートリーからも刺激があります。
朦朧法の恐怖
この物語の核となるのは、巨大で不気味な人形の家です。人形の家は、大人が子供に与える秩序だった小さな世界の象徴です。しかし、エイクマンはその秩序の中に開かない部屋や勝手に動く人形を配置することで、子供が感じる家庭という場所の不気味さを描き出しました。主人公のリーネが、人形たちに奇妙な恐怖と執着を抱くのは、それが彼女自身の抑圧された感情や、理解不能な大人たちの世界の鏡合わせだからです。
物語のタイトルでもある奥の部屋は、心理学的な比喩として機能しています。 ドールハウスの中にある、決して開くことのできない部屋は、人間が誰しも心の中に持っている自分でも触れることができない記憶や本能を象徴しています。
物語世界
あらすじ
物語の語り手であるレネは、自身の子供時代のある誕生日の出来事を回想します。その日、彼女の両親は彼女をドライブに連れて行きますが、ひどい雨に見舞われ、一行は道に迷ってしまいます。たどり着いたのは、人里離れた場所にある、古びた巨大な屋敷でした。
その屋敷の中には、気が遠くなるほど精巧に作られた巨大なドールハウスが置かれていました。ドールハウスの中には、数多くの人形たちが配置されており、それぞれがまるで生きているかのように生活のひとコマを演じています。レネはその異様な精巧さと、どこか冷ややかな雰囲気に強く惹きつけられます。
レネはドールハウスを観察するうちに、あることに気づきます。それは、どれだけ目を凝らしても中を覗くことができない奥の部屋が存在することでした。
屋敷の主人は、その部屋について多くを語りません。レネはその見えない部屋に対して、好奇心と同時に、得体の知れない恐怖を抱くようになります。
歳月が流れ、大人になったレネ。しかし、あの雨の日に見たドールハウスの記憶は、影のように彼女の人生に付きまといます。
かつてドールハウスの中で見た、奇妙でどこか不自然なポーズをとっていた人形たち。それと全く同じ容姿、同じ服装をした人々が、現実の人間として現れます。彼らはただそこにいるだけでなく、まるで最後の一人が帰ってくるのをずっと待っていたかのような雰囲気で彼女を迎え入れます。
子供の頃、レネはどうしてもドールハウスの奥の部屋を覗くことができませんでしたが、最後まで正体はわからないまま物語は終わります。




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