PR

ロスタン『シラノ=ド=ベルジュラック』解説あらすじ

ロスタン
記事内に広告が含まれています。

始めに

ロスタン『シラノ=ド=ベルジュラック』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロスタンの作家性

​ ロスタンに最も深い影響を与えたのはユゴーです。醜い外見に高潔な魂という『シラノ・ド・ベルジュラック』の造形は、ユゴーの『ノートルダム・ド・パリ』のカジモドや『ルイ・ブラス』の精神を継承しています。また​『三銃士』の作者であるデュマの影響も色濃く反映されています。


​ ​ミュッセからは、繊細な心理描写とエスプリ、恋愛に対する情熱的な態度を学びました。ほかに​ロスタンは、言葉の美しさそのものを重視する高踏派のゴーティエなども好んでいました。

尊厳

 パナッシュ(Panache)が描かれます。​本来は「兜の羽根飾り」という意味ですが、劇中ではどんな窮地に陥っても失わない騎士道精神、誇り、粋な振る舞いを指します。​シラノは最後にこれだけは誰にも奪われずに天国へ持っていくと言い残しますが、それは富や名声ではなく、自分の生き様に対する誇りそのものでした。


​​ シラノは醜い外見の中に、誰よりも美しい詩人の魂と勇気を持ちます。​クリスチャンは類まれな美貌を持つものの、気の利いた言葉を持ちません。​ロクサーヌは当初は外見に惹かれますが、最終的に魂の美しさこそが愛の正体であることに気づきます。
​ 
 シラノは自分の恋心を隠し続け、愛するロクサーヌの幸せのために、ライバルであるクリスチャンの恋を助けます。自分の言葉で彼女を酔わせながら、その功績をすべてクリスチャンに譲るのです。愛されることよりも、自分自身の愛を貫くことに価値を置きました。


​  ​シラノは才能がありながら、パトロンに媚びることを極端に嫌います。自分の魂を売ってまで出世することを拒みます。世俗的な成功を捨ててでも、自分のペンと剣を自由に振るうことを選ぶ孤独な自由人としての姿は、現代の読者にも強い共感を呼びます。

モデル

 シラノには、17世紀のフランスに実在した作家、軍人であるサヴィニアン=ド=シラノ=ド=ベルジュラックというモデルがいます。


​ ​実在の彼も、物語のシラノに負けず劣らず多才で破天荒な人物でした。実際に近衛連隊に所属し、多くの決闘をこなした凄腕の剣士でした。肖像画などを見ると大きな鼻をしています。また『月世界旅行記』や『太陽世界旅行記』といった作品を残しています。当時の権威や宗教に対して批判的な視点を持つ知識人でもありました。

物語世界

あらすじ

​ ​剣術の達人で稀代の詩人であるシラノは、自分の巨大な鼻に強いコンプレックスを持っていました。彼は美しい従姉妹のロクサーヌに恋をしていましたが、その容姿ゆえに想いを伝えられずにいます。


 ​そんなある日、シラノはロクサーヌからある男性を守ってほしいと頼まれます。その相手は、彼女が一目惚れした美青年クリスチャンでした。クリスチャンはハンサムですが、女性を口説く教養も知性もありません。


 シラノは、ロクサーヌを失望させないために、自分の知性とクリスチャンの外見を合わせて一人の完璧な男を演じることを提案します。

 ​クリスチャンはシラノが書いた手紙をロクサーヌに送り、彼女はすっかりその言葉の美しさに心酔します。


 有名なバルコニーのシーンでは、暗闇に乗じてシラノがクリスチャンのふりをして、ロクサーヌに情熱的な愛の詩を囁きます。彼女はその魂の美しさに感動し、二人は急いで結婚します。しかし、ロクサーヌに横恋慕していた権力者ド=ギッシュ伯爵の怒りを買い、シラノとクリスチャンは即座に戦場へ送られてしまいます。

 ​激戦地のガスコーニュ。シラノは自分の命を危険にさらしてまで、毎日クリスチャンの名前でロクサーヌへ手紙を送り続けます。


 戦場に駆けつけたロクサーヌは、クリスチャンに告げます。「最初はあなたの美しさに惹かれたけれど、今は手紙の中の素晴らしい『魂』を愛している。たとえあなたが醜くなっても愛し続けるわ」。

 クリスチャンは、彼女が本当に愛しているのは自分ではなく、言葉の主であるシラノだと悟ります。彼はシラノに真実を話せと促しますが、その直後、敵の弾丸に倒れて死んでしまいます。シラノは友の思い出を守るため、真実を墓場まで持っていく決意をし、ロクサーヌには何も言いませんでした。


​ ​それから15年後。夫を亡くしたロクサーヌは修道院で隠遁生活を送っており、シラノは毎週彼女を訪ねていました。
 ある日、シラノは闇討ちに遭い、重傷を負いながらも彼女のもとへ向かいます。死を悟った彼は、クリスチャンの最後の手紙を読ませてほしいと頼みます。


​ 暗闇の中、何も見えないはずなのに、その手紙を完璧に暗唱するシラノ。その声を聞き、ロクサーヌはついに気づきます。「あの日、バルコニーで囁いていたのも、私を支えてくれた手紙を書いていたのも、すべてあなただった」。

真実が明かされた瞬間、シラノは誇りを胸に、愛する人の腕の中でその生涯を閉じます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました