始めに
アルフレッド=ジャリ『ユビュ王』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ジャリの作家性
ジャリの代表作『ユビュ王』に見られる、下品で強烈なエネルギー、身体性、痛烈な風刺はラブレー『ガルガンチュワとパンタグリュエル』から色濃く受け継いでいます。また『マルドロールの歌』で知られるロートレアモンの、既存の論理を破壊するようなイメージの飛躍や、悪への讃美は、ジャリに影響します。
ジャリは高校(リセ・アンリ4世校)時代、哲学者ベルクソンの教え子で、ベルクソンの「笑い」に関する考察や、主観的な時間の概念に影響が見えます。
ジャリは当時の象徴主義運動の中に身を置いていました。特にマラルメの形式主義からの刺激が大きいです。
ラブレー的喜劇とパロディ
主人公のユビュ王は、食欲、物欲、性欲といった下級の欲望だけで動く生き物として描かれています。
彼の象徴は、腹部に描かれた渦巻き(ジドゥイユ)です。これは、すべてを飲み込み、消化し、排泄する際限のない欲望を視覚化したものです。高尚な理念など一切なく、腹を満たしたい、金を奪いたいという極めて動物的で卑俗な動機が物語を動かします。
ユビュ親父はポーランド王の座を奪いますが、その統治は支離滅裂です。彼は臆病で愚かですが、同時に残酷です。自分に反対する者を次々と処刑し、税を絞り取ります。
『ユビュ王』のあらすじは、シェイクスピアの『マクベス』や『ハムレット』をなぞっています。しかし、高潔な王や苦悩する英雄の代わりに、卑怯で下品なデブの親父を置くことで、伝統的な悲劇の崇高さを徹底的にパロディ化しました。高尚な芸術という権威を相対化しようとします。
現実の論理が通用しない不条理が全編を支配しています。ジャリが提唱した「パタフィジック(形而超学)」、空想的な解決の学問が色濃く反映されています。理屈ではなく、ラブレー的なナンセンスな勢いとグロテスクな笑いによって、世界の不条理を肯定しています。
物語世界
あらすじ
かつてアラゴン王だったユビュ親父(ユビュ・ロワ)は、現在はポーランド王ヴェンセラスの重臣となっています。
欲深い妻のユビュお袋に唆された彼は、王を殺して王位を奪う計画を立てます。彼は仲間とともに宴会を開き、毒を盛ったり力尽くで王を暗殺、まんまとポーランド王の座に就きます。
王になったユビュ親父が真っ先に始めたのは、徹底的な略奪でした。自分の地位を脅かしそうな貴族や役人を片っ端から処刑用の穴に放り込み、彼らの財産を没収します。
「フィナンス」という言葉を連呼し、農民からも不当に高い税を絞り取ります。自ら計算機を持って国民から金を奪い取り、贅沢の限りを尽くすという、極めて卑俗な独裁者ぶりを発揮します。
しかし殺された前王の息子、ブグレラス王子がロシア皇帝の助けを借りて反撃を開始します。
ユビュ親父は軍を率いて出陣しますが、その実態は究極の臆病者でした。敵が来れば逃げ回り、味方を盾にし、ひたすら情けない姿をさらします。一方で、留守を預かっていたユビュお袋は、夫の隠し財産を盗んで逃げようと画策。夫婦の間でも裏切りと罵り合いが始まります。
結局、戦争に敗れ、ロシア軍と反乱軍に追い詰められたユビュ夫妻は、残党とともにポーランドを脱出します。最後は船に乗り、どこか別の場所(フランス)へ向かって逃げ去るところで幕が閉じます。




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