始めに
コレット『青い麦』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
コレットの作家性
ウィリー(ヘンリー=ゴーティエヴィラール)は最初の夫であり、コレットにペンを取らせた張本人です。当時の流行作家、プロデューサーであり、コレットに少女時代の思い出を書けと命じました。母シドはコレットの文学においてインスピレーションの源です。『シド』や『わが母の家』に描かれる母の姿は、彼女の倫理観や審美眼の土台となっています。
またコレットはバルザックを非常に崇拝しており、彼の写実主義から多くを学んだと言われています。「欲望」「金銭事情」「物」に対する緻密な描写は、バルザック的な写実主義の流れを汲んでいます。
プルーストはライバルであり、友人でもありました。ほかにピエール=ロティは当時のフランスで人気を博した、エキゾティズム漂う作家で影響を受けました。
青い麦へ
主人公のフィリップ(16歳)とヴァンカ(15歳)は、幼馴染として兄弟のように育ちました。しかし、肉体の変化と共に、二人の間にあった無垢な調和が壊れ始めます。かつては共有していた秘密や遊びが、性の目覚めによって孤独な沈黙へと変わっていく過程が描かれます。
フィリップは、年上の謎めいた白い服の貴婦人(ダレレー夫人)によって、性の世界へと誘われます。 夫人はフィリップを愛しているわけではなく、一時的な情熱の対象として扱います。フィリップは愛と性が必ずしも一致しないという大人の苦い真実を知ります。
フィリップが年上の女性との経験に溺れ、罪悪感に苛まれる一方で、ヴァンカはすべてを察しながらも彼を受け入れ、最終的には自ら主導権を握るような強さを見せます。休暇が終わり、二人の家族はパリへ戻る列車に乗ります。窓の外を眺める二人は、もはや数週間前までの無邪気な子供ではありません。共有していた楽園を失い、それぞれが別々の孤独を抱えた「青い麦(未熟な大人)」として、日常へと戻っていくところで物語は幕を閉じます。
物語世界
あらすじ
16歳の少年フィリップ(フィル)と、15歳の少女ヴァンカは、毎年夏を同じ別荘で過ごす幼馴染です。二人は将来結婚するものとお互い信じ、兄弟のように無邪気に遊んできました。
しかし、その年の夏、二人の間には微妙な空気が流れ始めます。少年から男へと変わりつつあるフィルは、ヴァンカの子供っぽさに苛立ち、同時に彼女の膨らみ始めた胸や脚に、今まで感じたことのない動揺を覚えます。少女らしい鋭い直感で、ヴァンカはフィルが自分から離れていくような不安を感じ、彼を繋ぎ止めようと献身的に振る舞います。
そんなある日、フィルは海岸近くの邸宅ケル=アナに住む、年上の謎めいた女性ダレレー夫人(白い服の貴婦人)と出会います。夫人は熟した大人の色香でフィルを誘い、彼は未知の快楽への好奇心から、夜な夜な彼女の元へ通うようになります。 夫人の寝室で、フィルはついに「男」になります。しかし、そこで得たものは幸福感ではなく、ヴァンカに対する裏切りと、大人たちの世界の陰鬱さへの幻滅でした。
フィルが隠し事をしていることは、ヴァンカには筒抜けでした。彼女は彼から漂う別の女の匂いや、彼の沈黙からすべてを悟ります。ヴァンカはフィルを責めるのではなく、彼を自分たちの世界に取り戻すために、自らも女としての覚悟を決めます。
夏休みが終わりに近づいたある晩、月明かりの下で二人は結ばれます。フィルの経験によるリードではなく、ヴァンカのすべてを受け入れるという静かな決意によって。
儀式を終えた後、彼はこれで僕たちはもう元には戻れないという絶望と、大人になることの重圧に押しつぶされそうになり、涙を流します。ヴァンカは冷静で、朝の光の中で平然と身なりを整えます。彼女はすでに、男よりもずっと先に生の現実を受け入れていたのです。
休暇が終わり、二人の家族はパリへ戻る列車に乗ります。窓の外を眺める二人は、もはや数週間前までの無邪気な子供ではありません。共有していた楽園を失い、それぞれが別々の孤独を抱えた「青い麦(未熟な大人)」として、日常へと戻っていくところで物語は幕を閉じます。




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