はじめに
ドストエフスキー『白夜』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
ゴーゴリからバルザック風のリアリズムへ
ドストエフスキーはキャリアの初期には特に初期から中期のゴーゴリ(「鼻」「外套」)の影響が強く、『貧しき人々』も書簡体小説で、繊細かつ端正なデザインですが、次第に後期ゴーゴリ(『死せる魂』)やバルザック(『従妹ベット』)のリアリズムから影響されつつ、独自のバロック的な、アンバランスなリアリズム文学のスタイルを確立していきます。
本作はまだそのような作家性の定まる前の作品ですが、『貧しき人々』『地下室の手記』と重なる内容です。
語りの構造
サンクトペテルブルクに引っ越して以来友人が一人もできず夢想的で非常に孤独な生活を送る青年の語り手です。
彼はタイトルになっている白夜のある晩に橋のたもとで一人の少女ナステンカと出会います。青年とナステンカはプラトニックな友情を育むものの、青年は次第に彼女に惹かれていきます。しかし、結局ナステンカの恋人がやってきて、青年の恋は報われないまま終わります。このあたりのプロットは『貧しき人々』と共通です。
また語り手の内向的でナイーブなキャラクターは、『地下室の手記』と重なります。
物語世界
あらすじ
語り手はサンクトペテルブルクの小さなアパートに一人で暮らしており、付き添いは年老いた女中のマトリョーナだけです。
歩いていると、若い女性ナステンカが柵にもたれかかって泣いているのを目にします。どうしたのか尋ねようかとも思ったものの、そのまま歩き続けます。その時、彼女の叫び声が聞こえ、語り手は結局介入して、ナステンカを脅迫していた男から救い出します。
ナステンカは語り手の手を握るものの、彼は女性を知らず、ナステンカと一緒にいると臆病になってしまいます。ナステンカは、女性は臆病なのが好きだし、自分もそうだと、語り手を安心させます。語り手は毎日、自分に話しかけてくれる、拒絶したり嘲笑したりしない女の子のことを夢見ているとナステンカに告げます。見知らぬ女の子に、臆病に、敬意を込めて、情熱的に話しかけるのです。そして孤独に死にかけていること、またナステンカとうまくいく見込みがないことを告げます。自分のように臆病で運の悪い男を無礼に拒絶したり嘲笑したりするのは、女の子の義務だと語り手は言います。
ナステンカの家の玄関に着くと、語り手は彼女にまた会えるのかと尋ねます。彼女が答える前に、語り手は孤独な人生におけるこのたった一つの幸せな瞬間をもう一度味わうために、明日も会った場所にいると付け加えます。ナステンカは同意し、来るなと言うことはできないし、自分も行くといいます。
二度目の出会いで、ナステンカは彼についてもっと知りたいと思います。語り手は、これまで全く孤独な人生を送ってきたことを彼女に打ち明けます。語り手は仲間への切望を語り、自らを「英雄」と呼び、三人称で物語を語り始めます。この「英雄」は、すべての仕事が終わり人々が歩き回る時間に幸福を感じるのです。詩人たちと親しくなることから、冬に少女と過ごす場所を持つことまで、あらゆることを夢見ています。日々の退屈さは人を殺してしまうが、夢の中では自分の人生を思い通りにできると語り手は言います。
ナステンカは語り手に同情し、自分が彼の友人であることを約束します。
それからナステンカは自分の身の上話をします。ナステンカは厳格で目の不自由な祖母のもとで育ち、祖母はナステンカを過保護に育てます。祖母の年金が少ないため、一家は家の中の一室を借りました。最初の下宿人が亡くなると、祖母は若い男に部屋を貸します。その若い男はナステンカに惹かれ、読書の習慣が身につくようにと本を贈ります。若い男はナステンカと祖母を芝居の公演に招待します。
若い下宿人がペテルスブルグを発ってモスクワに向かう夜、ナステンカは彼に結婚を求めます。彼はすぐに結婚することを拒否し、養うお金がないと言いながらも、1年後には必ず迎えに来ると約束します。ナステンカは話を終え、1年が経ったが、彼から手紙は一通も来ていないと告げます。
語り手は、プラトニックな友情のままでいてくれると約束していたにもかかわらず、自分が彼女に恋してしまったことに徐々に気づき始めます。それでも語り手は、彼女の恋人に手紙を書いて郵送することで彼女を助け、彼女への想いを隠そうとします。二人は彼の返事か、あるいは彼が現れるのを待つものの、ナステンカは相手の不在に焦燥感を募らせ、語り手との友情に安らぎを見出します。語り手の想いの深さに気づかない彼女は、語り手が自分に恋をしていないからこそ、愛しているのだと言います。語り手は、報われない恋に絶望し始めます。
やがてナステンカは、恋人がペテルスブルグにいるのに連絡を取ってこないことを知って絶望します。語り手は彼女を慰め続け、ついには愛を告白します。ナステンカは最初は戸惑い、語り手は、もう以前と同じようには友人でいられないと悟り、二度と彼女に会わないと言い張ります。彼女は彼に留まるよう促し、いつか二人の関係が恋愛関係になるかもしれないが、友情は大切にしてほしいとほのめかします。語り手はこの見通しに希望を抱くのでした。
歩いていると、ナステンカの恋人とすれ違います。彼は立ち止まり、二人を呼び止めます。ナステンカは彼の腕の中に飛び込みます。ナステンカは戻ってきて語り手にキスをするものの、傷心の語り手を一人残して夜の闇へと旅立って行くのでした。
語り手はナステンカから手紙を受け取ります。手紙の中でナステンカは、彼を傷つけたことを詫び、彼の友情にいつまでも感謝すると述べます。ナステンカは一週間以内に結婚する予定で、語り手が来てくれることを願っていると綴ります。手紙を読みながら、語り手は涙を流します。
マトリョーナが蜘蛛の巣を掃除し終えたと告げます。語り手は、マトリョーナを年寄りだと思ったことは一度もなかったものの、実際よりもずっと老けて見えたと話し、自分の未来は友情と愛のないものなのだろうかと自問します。しかし、彼は絶望を拒むのでした。




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