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チェーホフ『狩場の悲劇』解説あらすじ

アントン=チェーホフ
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始めに

 チェーホフ『狩場の悲劇』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

トルストイ流のリアリズム、メーテルリンク流のシンボリズム

 チェーホフはトルストイ(『戦争と平和』『アンナ=カレーニナ』)流のリアリズム、メーテルリンク流のシンボリズムの影響が強いです。

 よくジェイムズ=ジョイスと作風が似ているとも指摘されますが、ジョイスは『ダブリン市民』を著したとき、チェーホフは読んでいなかったといいます。ジョイスの場合、イプセン(『民衆の敵』『人形の家』)のリアリズム演劇や象徴主義の影響が強く、偶然似ている模様です。

信頼できない語り手

 本作はクリスティ『アクロイド殺し』に先駆けて、信頼できない語り手による殺人を描いた、叙述トリック的趣向の光る作品になっています。

 本作では、語り手がある無名の著者である人物から「狩場の悲劇」の原稿を受け取り、その作中作がテクストの大半を構成します。その作中作の書き手であり語り手は田舎の地方の行政長官です。その友人で飲み仲間のアレクセイ伯爵は、勤勉な執行官のウルベーニンと、精神を病んだ小売業者のニコライ=エフィミチと近くの屋敷に住んでいますが、ニコライの娘オルガも屋敷におり、行政長官とウルベーニンとの三角関係になっています。やがてこのオルガが殺され、ウルベーニンが逮捕されて有罪となります。

 しかし、実際には『狩場の悲劇』の書き手こそが犯人であると示唆されます。

その悲劇性

 物語の核は、男性たちの視線・所有欲・階級的優位のなかで消費される女性(オリガ)の悲劇です。いずれも彼女を人格ではなく欲望の対象、物語の素材、所有物として扱います。殺人そのものよりも彼女が殺されるに至る社会的配置が主題です。つまり、狩りの獲物でしかないということです。

 この作品で重要なのは、語り手が作家であることです。他人の悲劇を「面白い話」として回収すること、事実を編集し、演出し、商品化することは明確に文学そのものの加害性を示しています。

 語り手が犯人であること自体が驚きというよりも、語り手の歪みが信頼できない語りで示されます。

物語世界

あらすじ

 「狩場の悲劇」は、無名の著者がモスクワの出版社に読んで出版してほしいと懇願した原稿の名前です。語り手はそれを読むことに同意し、著者は判決を聞くために 3 か月後に戻ってくると言います。

 この原稿が本の大部分になり、書き手であり語り手は田舎の地方の行政長官です。その友人で飲み仲間のアレクセイ伯爵は、勤勉な執行官のウルベーニンと、精神を病んだ小売業者のニコライ=エフィミチと近くの屋敷に住んでいます。ニコライの娘オルガも屋敷におり、行政長官とウルベーニンとの 三角関係になっています。

 ウルベーニンと結婚した後、オルガはアレクセイ伯爵と不倫関係になるものの、政務官への愛を公言します。屋敷近くの森で狩猟パーティーの最中、オルガは一人でそこを抜け出て行方不明になります。そしてその後、刺殺体で発見されるのでした。

 容疑はウルベーニンにかけられます。彼女の遺体を発見した後、彼は血まみれの手で現れたのでした。別の殺人犯を知っている可能性がある片目の農民が名乗り出るが、告発する前に殺されます。ウルベーニンはオルガ殺害の有罪判決を受け、シベリアに送られて19年の重労働の刑に処されたのでした。原稿はそこで終わります。

 出版者が書いた追記によると、真犯人は原稿の無名の著者とされます。

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