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チェホフ『三人姉妹』解説あらすじ

アントン=チェーホフ
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始めに

 チェホフ『三人姉妹』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

トルストイ流のリアリズム、メーテルリンク流のシンボリズム

 チェーホフはトルストイ(『戦争と平和』『アンナ=カレーニナ』)流のリアリズム、メーテルリンク流のシンボリズムの影響が強いです。

 よくジェイムズ=ジョイスと作風が似ているとも指摘されますが、ジョイスは『ダブリン市民』を著したとき、チェーホフは読んでいなかったといいます。ジョイスの場合、イプセン(『民衆の敵』『人形の家』)のリアリズム演劇や象徴主義の影響が強く、偶然似ている模様です。

ささやかな生活のデッサン

 この作品では特に大きなプロットの起伏があるわけではありません。けれどもささやかな日常をペーソスとユーモアで包み、豊かな表現で体制の変化が描写されています。

 日常デッサンの中に、ブルジョワ化という社会の変化を主題として盛り込む手腕が卓越しています。

 本作は、ロシア革命の迫るロシアのブルジョワ社会の閉塞感を描いています。ブルジョワ社会への適合を象徴するのが主人公の三姉妹(オリガ、マーシャ、イリーナ)の兄アンドレイの妻ナターリアです。結婚後は三姉妹たちのプローゾロフ家の実権を握っていきます。夫の上司であるプロトポポフと不倫している俗っぽい人間です。

 他方で三姉妹(オリガ、マーシャ、イリーナ)と兄アンドレイはうまくブルジョワ社会に適合できず、理想と現実の落差に苦悩します。

物語世界

あらすじ

第1幕

 プローゾロフ家自邸。亡父の一周忌で、イリーナの聖名祝日の5月初旬。居間に三姉妹(オリガ、マーシャ、イリーナ)、食堂にはトゥーゼンバッハ男爵とチェプトゥイキン軍医、ソリューヌイ大尉がいます。

 そこへヴェルシーニン中佐がやってきます。モスクワ時代の一家の知り合いだったことを知り、三姉妹は中佐を気に入り、ランチに誘います。

 マーシャの夫クルイギン、アンドレイとその恋人ナターリヤも来てランチが始まります。三姉妹は教養のない町の暮らしに嫌気が差し、モスクワに帰りたそうにします。オリガは仕事が嫌になり、マーシャは夫に幻滅し、イリーナは労働に意欲を示します。姉妹はアンドレイを過大評価し、ナターリヤに批判的です。

第2幕

 3年後のプローゾロフ家自邸。正教会の祭がある1月のある日の夜。

 アンドレイと結婚しナターリヤは子供を得ました。息子ボビークのために、日当たりのいいイリーナの部屋をボビークに譲らせようとします。アンドレイは大学教授になれずに役所勤めになり、ヤケになって賭博に浸っています。

 祭の祝宴にプローゾロフ家を訪れたマーシャとヴェルシーニン中佐は結婚生活の不満を話し、愛の言葉を交わします。イリーナとトゥーゼンバッハ男爵も現れ、男爵はイリーナとの将来を囁きかけるものの、イリーナは躱します。チェプトゥイキン軍医も現れますが、ヴェルシーニン中佐の妻が服毒自殺を図ったらしく、中佐は出ていきます。

 祝宴の余興に来る芸人たちをナターリヤが断っていたことがわかり、客たちはがっかりしてプローゾロフ家を去り、アンドレイと軍医も遊びにいきます。去り際、ソリョーヌイはイリーナに愛を告白し、ナターリヤも不倫相手プロトポポフに誘われて出掛けます。

 残ったイリーナは、モスクワへの憧憬をつのらせます。

第3幕

 翌年の夏。ボビークに部屋を譲り、同室となったイリーナとオリガの部屋で深夜。

 ソファにはマーシャがいます。窓の外で火事があり、オリガは被害者のために自分の衣服をかき集めます。ヴェルシーニン中佐一家もプローゾロフ家に避難します。

 ナターリヤは金持ちの義務として被災者支援をしようとするものの、年老いたアンフィーサを役立たずとして追い出すようオリガに迫ります。チェプトゥイキン軍医は患者を死なせたために断酒を破り自己嫌悪になります。

 イリーナ、トゥーゼンバッハ男爵、ヴェルシーニン中佐が現れ、軍が町から移動になるという噂話をします。不倫を悟りつつ、夫クルイギンはマーシャへの愛を語ります。アンドレイが自宅を抵当に借りた金をナターリヤが支配していると知り、イリーナは幻滅し、モスクワ行きが叶わないと悟って絶望します。オリガはイリーナを諭して男爵との結婚を勧め、マーシャはヴェルシーニン中佐を愛していることをオリガとイリーナに話します。

 アンドレイが現れ、姉妹が妻のナターリヤに批判的なのを咎め、自分の現職への誇りや、そうするよりなかったことを語ります。

 イリーナは男爵との結婚を決意します。

第四幕

 プローゾロフ家の庭。イリーナとトゥーゼンバッハ男爵は翌日結婚して町を離れようとしています。軍隊はポーランドに従軍することになり、軍人たちがプローゾロフ家に挨拶に来ます。

 前夜、ソリョーヌイと決闘することになった男爵は、チェプトゥイキン軍医とともに決闘の場に向かいます。オリガは老乳母のアンフィーサと家を出て学校の寮で暮らしています。アンドレイとナターリアには新しい子供も増え、ナターリアはプローゾロフ家を牛耳ります。マーシャはヴェルシーニン中佐と別れの挨拶をし涙するものの、夫クルイギンは昔の生活にまた戻れるので喜びます。

 決闘で男爵が殺されたことをイリーナは知るものの、予定通り家を出て教師となろうとします。三姉妹はこれからも生きていく覚悟を示します。

参考文献

・アンリ=トロワイヤ 村上香住子訳『チェーホフ伝』(中央公論社.1992)

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