始めに
芥川「桃太郎」解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
アナトール=フランス、森鴎外流のヒューマニズムとリリシズム
芥川龍之介はアナトール=フランスからの影響が顕著で、そこから合理主義的科学的ヒューマニズムを展開していきました。『地獄変』に描かれるテーマを芥川自身の芸術至上主義を体現するものではないと、以前そちらの記事に書きましたが、芥川龍之介は倫理やモラルを重視するヒューマニストです。
またロマン主義的なリリカルな意匠は手本とした森鴎外からの影響が顕著です。
オスカー=ワイルド、ショーのシニズム
また芥川龍之介ら新思潮派の作家は、ショー(『ピグマリオン』)やワイルド(『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』)といった英国の演劇から顕著な影響を受けています。
本作もショーやワイルドを思わせる、シニカルな文明批評の眼差しが特徴です。童話の桃太郎のパロディとして、シニカルなテイストが冴えています。
侵略文学
本作は侵略文学(Invasion literature)的なデザインになっています。これは1871年から第一次世界大戦ころ人気があった文学ジャンルで、『ドーキングの戦い:ある志願兵の回想』 (1871年)などを皮切りにし、これはドイツによるイングランド侵攻を描いたものです。
本作「桃太郎」は侵略者としての桃太郎を描きます。桃太郎は、働くのが嫌で、仕事を逃れるために鬼ヶ島を侵略しようとします。しかし鬼ヶ島は平和な楽園で、鬼も善良な存在です。仲間にする犬、猿、雉も、自分たちの利益のことばかりで侵略に追従します。
戦争と憎悪
本作において、桃太郎は鬼ヶ島を征服するものの、その後鬼からの復讐に悩むようになります。
桃太郎はさながら植民地のごとく鬼ヶ島を支配し、鬼の子供を人質にしましたが、その鬼の子が大きくなって脱走し、他の鬼たちも執念深く桃太郎に復讐します。
桃太郎が戦争と暴力による支配によって手に入れたのは、財産だけではなく、自分に向けられる復讐と憎悪もでした。
物語世界
あらすじ
鬼ヶ島は、自然豊かで平和な場所で、鬼たちは踊りや琴の演奏、詩などを楽しみ、穏やかに暮らしていました。自然と共存する鬼たちは、子供たちに人間は危険だから近づかないようにと教え、人間を避けていました。
桃から生まれた桃太郎は、成長しても働くのが嫌で、祖父母に蔑まれています。そこで桃太郎は、仕事を避けるために鬼ヶ島を征服しようとします。
桃太郎は旅の途中で犬、猿、雉に出会います。動物たちは仲が悪く、鬼の財宝という利益のために桃太郎に従います。桃太郎は彼らにきび団子を半分だけ渡し、鬼退治に協力させることにします。桃太郎一行は互いに険悪になりつつも、鬼ヶ島へ向かいます。
鬼ヶ島に到着した桃太郎は、犬、猿、雉に鬼を一匹残らず殺すよう命令します。鬼たちは、襲撃に混乱し逃げ惑いますが、桃太郎たちに一方的に殺されます。
虐殺の後、鬼たちは降伏し、桃太郎に宝物を差し出します。桃太郎は鬼の子供を人質に取り支配します。鬼の首長が襲撃の理由を問うと、桃太郎は征服したいと思ったからだと答え、不満があるなら殺すと脅します。
桃太郎は、鬼の財宝を持ち帰りますが、その後、鬼たちの復讐が始まります。人質にした鬼の子供が、成長して雉を噛み殺し、逃げませ。生き残った鬼たちは桃太郎の家に放火したり、その命を狙ったり報復を続けます。
こうして桃太郎は鬼たちの復讐に悩まされるようになったのでした。
参考文献
・進藤純孝『伝記 芥川龍之介』




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