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ウェルズ『タイムマシン』解説あらすじ

H.G.ウェルズ
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始めに

 ウェルズ『タイムマシン』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

SFのルーツ

 ウェルズはSFの先駆的作家とされます。

 プラトンの『国家』、トマス・モアの『ユートピア』、ダニエル・デフォーの作品など、多くの古典作品から刺戟されて、創作にフィードバックしました。

 メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』などからも刺激され、独自のSFフィクションをものしました。

語りの構造

 タイムトラベルもののトウェイン『アーサー王宮廷のコネティカット=ヤンキー』などと重なる、枠物語構造が設定されています。

 主人公は、単純に「時間旅行者」と名付けられた科学者で本名は不明です。語り手はその友人で、「時間旅行者」から聞いたタイムトラベルのことを語ります。

進化論の影響

 トマス・ヘンリー・ハクスリーの下で生物学を学び、進化論はウェルズの人生に影響を与え、作品のテーマになり続けました。

 ダーウィンの進化論は、ラマルクなどと対照的に、非目的論的なアルゴリズムによる進化を唱え、それはつまるところ、人間は必ずしも善や理性に従ってそれを伸ばすように目的論的に進化するわけではなく、非目的論的に、環境に適応的な形質と個体が支配的になっていくことから、人間が悪や野蛮に進化していく可能性がそこに開かれていたのでした。

 ウェルズはそうして、人間が進化によって野蛮へと堕落してしまうことを懸念し、それを理性と科学によって克服したいと願いました。本作は人間の理性をも歪めようとしてしまう、進化の不条理、進化の恐怖を描いています。

 また、本作はレイ・ランケスターの社会退化論の影響も受けています。それは本作のモーロックによく表れています。時間旅行者が旅した未来世界では、現代の階級制度が持続した結果、人類の種族が2種に分岐し、裕福な有閑階級は無能で知性に欠けたイーロイへと進化、抑圧された労働階級は地下に追いやられ、モーロックになっています。最初はイーロイに支配されてその生活を支えるために機械を操作して生産労働に従事していたものの、モーロックは地下の暗黒世界に適応し、夜の闇に乗じて地上に出ては、イーロイを捕らえて食べていました。

社会主義とユートピア文学

 本作はウェルズの社会主義的な政治観、労使関係についての不安などを背景にします。

 またユートピア小説のエドワード=ブルワーリットン『来たるべき種族』の影響も顕著です。 この作品は地下世界に人類とは異なる種族が作り上げたユートピア世界があって、そこに迷い込んだ主人公の冒険を描きます。『タイムマシン』では、地下にはモーロックの棲むディストピアが広がっていて対照的です。

 ウェルズのイーロイは、社会主義者ウィリアム=モリスの作品『ユートピアだより』から影響が見えます。この作品では金銭は無用なものになり、労働は単に楽しみの一形態となっています。

 またスウィフト『ガリヴァー旅行記』の影響、類似性も指摘されやすいです。

物語世界

あらすじ

 主人公は、単純に「時間旅行者」と名付けられた科学者で本名は不明です。語り手はその友人で、「時間旅行者」から聞いたことなどを語ります。

 時空旅行者は友人達の前で理論を唱え、小型の模型を使って、時間が第4の次元であり、適切な装置はこの第4の次元を移動できることを実演し、自分を運搬可能な大型の時間移動装置を完成させます。その後に、彼は自分を実験台に未来へ旅します。

 時間旅行者が到達した紀元802701年の未来世界は、イーロイという単一の人種が幸福に暮らす、平和で牧歌的な桃源郷でした。イーロイは身の丈約4フィートに、ピンク色の肌と華奢な体躯、巻き毛と小さな耳と口、大きな目を持ち、男女共によく似た女性的な穏やかな姿をしています。イーロイは高く穏やかな声で話し、知能は退化して幼児のようですが、争いはないようです。

 到着した場所に戻ると、時間旅行者は自分の機械がなくなっていることに気づきます。レバーを外しておいたので、機械はタイムトラベルしていないはずです。その後、時間旅行者は、地下の暗闇に住み、夜だけ地上に現れる類人猿のような洞窟人、モーロックに遭遇します。彼らにタイムマシンを盗まれたに違いないと推測し、モーロックの住居に通じる多くの「井戸」の 1 つを探索し、地上の楽園であるイーロイの世界を可能にする機械と産業を彼らが操作していることを発見します。時間旅行者は、現代(彼自身の時代)の階級制度が持続した結果、人類の種族が2種に分岐し、裕福な有閑階級は無能で知性に欠けたイーロイへと進化、抑圧された労働階級は地下に追いやられ、モーロックになったと知ります。最初はイーロイに支配されてその生活を支えるために機械を操作して生産労働に従事していたものの、モーロックは地下の暗黒世界に適応し、夜の闇に乗じて地上に出ては、イーロイを捕らえて食べていました。

 時間旅行者は、川でおぼれかけたイーロイの女性ウィーナを助けて仲良くなります。

 旅人はウィーナを連れて「緑の磁器の宮殿」への遠征に出かけます。そこは遠くにある建物で、廃墟となった博物館であす。旅人はここで新しいマッチを見つけ、モーロックに対する武器を作ります。タイムマシンを取り戻すために、モーロックと戦わなければなりません。旅行者はウィーナを自分の時代へ連れて帰り、未来の世界の恐怖から救おうとします。

 ウィーナの家まで戻るのは困難で、森で一夜を過ごします。するとモーロックに襲われ、ウィーナは気絶します。旅人はモーロックを追い払うために残していった小さな火が山火事に変わると逃げるものの、ウィーナとモーロックは炎の中で行方不明になります。

 モーロックたちは取り乱した旅行者を捕まえるための囮としてタイムマシンを使うものの、旅行者がそれを使って逃げられると知りません。旅行者はレバーを再び取り付けてから、自分の時代から約 3000 万年後の未来へと旅します。

 そこで旅行者は、死にゆく地球に最後に残った生き物たちを目にします。地衣類のような植物に覆われた世界で、血のように赤い浜辺を歩き回り、巨大な蝶を追いかけるカニのような生き物がいます。さらに時間を進み、地球の自転が止まり、太陽が大きくなり、最後の生き物が死に絶えるにつれて世界が静まり返り、凍りつくのを目にします。

 圧倒された時間旅行者は、自分の時間に戻り、最初に出発してからわずか 3 時間後に研究室に到着しました。時間旅行者は自分のディナーパーティーに遅れて到着し、食事を終えると、訪問者たちに自分の冒険を語り、ウィーナが彼のポケットに入れた 2 つの珍しい白い花を証拠として提示しました。

 語り手は、翌日に時間旅行者の家に戻ると、次の旅の準備をしており、すぐに戻ってくると約束していたと語っています。しかし、3年待っても旅人は戻ってこなかったのでした。

参考文献

・ジーン=デイジー=マッケンジー (著), ノーマン=イアン=マッケンジー『時の旅人―H.G.ウェルズの生涯』

 

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