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三島由紀夫『命売ります』解説あらすじ

三島由紀夫
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始めに

 三島由紀夫『命売ります』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ジャン=コクトー、ラディゲ流の新古典主義。シュルレアリスム

 三島由紀夫は私淑したラディゲ(『ドルジェル伯の舞踏会』肉体の悪魔』)、コクトー(『恐るべき子供たち』)流の新古典主義が特徴です。端正な線で対象を流離に描く姿勢はここでも発揮されています。

 ラディゲはコクトーなどのモダニスト、シュルレアリストと親交があって、前衛的な文学的潮流と接触していたものの、本人はフランスの心理小説(コンスタン『アドルフ』、ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』)やロマン主義文学(ミュッセ)に習いつつ、古典的な小説スタイルでもって小説を展開していきました。『ドルジェル伯の舞踏会』もクラシックな心理小説『クレーヴの奥方』の翻案として、王宮文学としてのメロドラマを展開します。

後期の珍作?

 三島由紀夫は、もともとウェルメイドな中間小説は得意なのですが、60年代以降は割と得意だった戯曲と通俗小説も破綻が目立つようになり、自殺に近づき精神的にしだいにボロボロになっていく結果、珍作の類も増えていきます。

 本作も割合珍作で、三島作品では割合珍しいスラップスティックな笑いが見えます。ナンセンスではあるものの、結構プロットはしっかり作られていて、物語もテンポよく飽きさせない工夫があります。

ハードボイルド小説

 全体的にスパイ小説やハードボイルド小説のパロディになっていて、山田羽仁男が不意に虚無に襲われて、命を投げ売りするようになったことによって巻き込まれるドタバタを描きます。

 山田羽仁男はやがて、秘密組織・ACSに付け狙われることになり、死の恐怖を次第に覚えるようになっていきます。

物語世界

あらすじ

 広告会社に勤務する27歳のコピーライターの山田羽仁男は、ある日、新聞紙の活字が全てゴキブリに見え、世の中が無意味と思い睡眠薬自殺を図って失敗します。自殺しそこなった羽仁男は自由な世界がひらけ、三流新聞の求職欄に、「命売ります」と広告を出します。

 第一の依頼人の老人がやって来ます。老人は、50歳年下の若妻のるり子が成金悪党の三国人の愛人となったので、羽仁男がるり子の間男となって2人でその三国人に殺されてほしいと頼みます。

 羽仁男は老人の依頼に従い、るり子の部屋に行くものの、彼女の話によると、その三国人は秘密組織・ACS(アジア・コンフィデンシャル・サーヴィス)の人間だそうです。羽仁男はるり子とベッドにいるのをベレー帽をかぶった三国人に見つかるものの、殺されずに帰されます。しかし、るり子は翌日隅田川で死体で見つかります。

 次の依頼者は図書館の女司書です。彼女はある外人らに、飲むと自殺したくなる薬の製法が載った甲虫図鑑を高額で売ったものの、羽仁男を薬の実験台として、再び金を貰おうとしていました。

 外人一味の待つ芝浦の倉庫に羽仁男は女とむかい、その薬は効き目がなかったものこ、羽仁男は自分のこめかみにピストルを当てます。しかし何故か女が羽仁男からピストルを奪い取り、彼女が自殺します。女は羽仁男を愛したため、身代わりになりました。

 次の依頼者は井上薫という少年です。薫は、吸血鬼の母親(未亡人)のために、羽仁男に犠牲の愛人になってもらいたいそうです。依頼に従い羽仁男は、夫人に血を吸われながら、荻窪の井上家で薫親子と過ごします。

 夫人は羽仁男と一緒に心中するため家に火をつける計画をし、薫を親戚の家に泊まらせます。しかし羽仁男と夫人が最後に公園へ散歩している時、羽仁男は煙草屋の前で倒れて救急車で運ばれます。夫人は家でただ一人で焼身自殺してしまいました。

 見舞いに来た薫の跡をつけて、次の依頼者の2人組が病院にやってきます。2人はB国と対立するA国大使のスパイで、羽仁男にB国大使館に潜入して、毒入り人参スティックの中から、暗号解読のカギになる人参を探すよう頼みます。羽仁男は話を聞いただけで暗号解読のヒントを得て、B国大使館に潜入せずに事件を解決します。

 多額の報酬を得た羽仁男は中休みをするため、世田谷に引越先を探し、梅丘の周旋屋に来ます。そこで出会った30歳前の玲子の家に間借りします。彼女は元大地主だった両親の屋敷の離れに住み、妄想から自分が先天性梅毒で将来、発狂すると思い込み薬物に溺れてヒッピーとなっていました。

 玲子は新宿で配られていた羽仁男の写真を持っていてその商売も知っていました。そして玲子は羽仁男に処女を捧げ、一緒に心中してくれと羽仁男に言います。羽仁男は玲子の死を引きとめ、2人は新婚夫婦のように暮します。ある日、羽仁男は玲子と公園にいる時に偶然、第一の依頼者の老人を見つけます。老人は別れ際に、「君は監視されている。時期がきたら消される」と忠告します。

 玲子の夢は平凡な主婦になることです。玲子は自分が将来発狂したら、羽仁男は自分を捨てると思い、羽仁男に毒をもろうとします。羽仁男はそんな玲子から逃げ出し、逃亡中、誰かが羽仁男の太腿に小さな針の発信機を刺します。羽仁男は手当てをし、ホテルを転々としたものの、発信機のせいで怪しい男たちに狙われます。

 太腿の発信機に気づいた羽仁男はナイフでそれを取り去り、「死の恐怖」を感じながら池袋駅から飯能へ逃げます。しかしその地で落ちついていたのも束の間、大型トラックに轢き殺されそうになります。羽仁男は商店街でストップウォッチを買い、木工所で木箱を作ってもらい、小型爆弾に似せたものを持ち歩きます。

 ある日、羽仁男は飯能駅前で、初老の外人に羅漢山の場所を聞かれ、道を案内中、商工会議所の前に待ち伏せしていた車に拉致されます。目隠しされて到着した場所は洋館の地下室です。そこにいたのは車に同乗した男2人と、甲虫の薬の実験台の時にいた外人3人と、るり子の愛人だった三国人と、第一の依頼者の老人(実は三国人の使用人)でした。

 三国人らは本当に秘密組織・ACSのメンバーでした。リーダー格の三国人らは、「命売ります」の広告は自分たちをおびき寄せる罠で、羽仁男をおとり捜査官だと思い込んでいました。

 彼らはわざと手下の老人や図書司書の女を使って羽仁男を泳がせ、羽仁男の仲間とおぼしき警察スパイを調べる尾行していました。彼らは、羽仁男がA国大使のためのスパイ活動をした時から羽仁男を警察スパイだと確信し、捕らえようとしていました。羽仁男は偽小型爆弾を取り出し、自爆すると脅して彼らを退散させ、別のドアから逃げます。

 羽仁男が町まで来るとそこは青梅市でした。羽仁男は交番に助けを求め、密輸と殺人秘密組織・ACSのことを話すものの、住所不定の羽仁男であるため、信用してもらえません。泣き声で訴える羽仁男に警官は、命を売る奴は人間の屑だと言います。

 羽仁男は留置場にも匿ってももらえず、突き帰されてしまいます。

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