始めに
太宰治『女生徒』解説あらすじを書いていきます。
背景知識,語りの構造
芥川龍之介の影響。等質物語世界の語り手
太宰治は私淑した芥川龍之介の影響が顕著で、芥川『藪の中』『地獄変』のような等質物語世界の口語的語りを得意としています。
また女性を主人公とする語りも太宰の得意とするところで、その辺りは芥川「秋」などを連想します。
ドストエフスキー、チェーホフの影響。不幸な妻
太宰治はロシア文学、特にドストエフスキー(『貧しき人々』『分身』)やチェホフからの影響が顕著です。チェホフ『桜の園』の影響で『斜陽』が書かれたことはよく知られています。
ドストエフスキーは、バルザック狂だったのでしたが、バルザックは妹を溺愛し、妹たちが不幸な結婚をしたことから、作品において不幸な妻(『従姉妹ベット』など)を描きました。ドストエフスキーもそこから影響され、不幸な妻の自殺を描く「やさしい女」はブレッソンの映画化も有名です。
本作でも、儚く可憐な少女の語り手を描いています。王子様のいないシンデレラという言葉に象徴される、理想化傾向のつよい、孤独な少女を描きます。
強い女
一方で、ドストエフスキーやチェーホフは、単に不幸で儚い女性だけではなく、ドストエフスキー『罪と罰』におけるソーニャや、チェホフ『桜の園』のアーニャなど、現実的で高潔でタフな女性を描いてきました。太宰の作品にもこうした作品からの影響を顕著に伺わせます。
本作の語り手である少女も、確固たる自我と、個性と強かさをもっています。そして、世間での体裁と自分の個性の矛盾に悩みます。
モデルの有明
本作は有明淑という女性から太宰に送付された日記をもとに、14歳の女生徒の一日を主人公の語りで綴っています。
本作は『パンドラの匣』『走れメロス』などのように、もとになった著作に、ちょこちょこ太宰が手入れした内容です。
よく、これを女装したおじさんの文章とかいう人がいますが、実際には元になった少女の日記があります。
物語世界
あらすじ
朝、夏の訪れを感じ、死んだ父を想います。母は人に尽くす人で、私の両親は美しく安らかな夫婦でした。
母への勤労奉仕の草むしりを終え、電車の停車場に向かいます。そして御茶ノ水の学校に着くと、先生に絵画のモデルにされてうんざりします。
放課後、お寺の娘のキン子とハリウッドで髪を結ってもらいます。キン子は私を一番の親友だと言うものの、私はそんなつもりはありません。
家に帰ると今井田さんの夫婦がいて、厚かましさに殴りたくなります。また母に映画の許可をもらいます。
眠りに落ちるときの気持ちは重く、糸をゆるめたり引いたり。私は、王子さまのいないシンデレラ姫だと、語り手は思います。
参考文献
・野原一夫『太宰治 生涯と作品』



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