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マイクル・コニイ『ハローサマー、グッドバイ』解説あらすじ

マイクル・コニイ
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始めに

 マイクル・コニイ『ハローサマー、グッドバイ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

マイクル・コニイの作家性

 イギリスSFの伝統を築いたウェルズは、コニーにとって最大の源泉の一つです。コニーは幼少期からウェルズを愛読しており、日常的な風景の中に異質なSF的ガジェットを投げ込むという手法や、進化・社会構造への冷徹な視点はウェルズからの継承が見て取れます。


​ 特に『天国行きの蒸気機関車』や『神なき宇宙の神々』などに見られる、数十億年単位の悠久の時間を扱う壮大なビジョンや、意識の集合体といったテーマには、ステープルドンの『最後にして最初の人類』や『スター・メイカー』の影響が色濃く反映されています。


​ 異世界の動植物や奇妙な風習を持つ社会を、色彩豊かで詩的な散文で描くスタイルは、ジャック=ヴァンスとの共通点が多く指摘されます。コニーの描く異星生物の生態系は、単なる背景ではなく物語の核心として機能しており、その緻密な世界構築の姿勢に影響が見られます。


​ クリフォード・D・シマックは直接的な影響というよりはパストラルSFという共通の領分で語られることが多い作家です。科学技術の進歩よりも、地方都市や田園風景に流れる時間、そしてそこに暮らす人々の感情を重視する姿勢は、コニーの『ハローサマー、グッドバイ』などの傑作に共通する精神性です。

冬。パストラル

 ​​大冬(グレート・ウィンター)は数十年周期で訪れる過酷な冬は、単なる背景設定ではなく、登場人物たちの運命を規定する絶対的な指標です。少年ドローヴと少女ブラウンアイズの初恋は、文字通り夏が終わればすべてが凍りつくという物理的な制約の中に置かれています。これは、あらゆる青春がいつかは終わりを迎えるという普遍的なメタファーでもあります。

 ​SF的なガジェットとして、社会構造の歪みが重要な役割を果たしています。港湾都市の住人と内陸の住人、あるいは支配層と被支配層の間の根深い不信感が、迫りくる危機を前にしても解消されない様子が描かれます。破滅を前にした人間が、いかにして自らの生存を優先し、他者を切り捨てるかという社会批判的な視点が含まれています。

物語世界

あらすじ

 舞台は、極端な楕円軌道を持つ惑星。その軌道のために強烈な夏と長く厳しい冬が交互に訪れます。物語は、その長い夏が終わりに近づいている時期から始まります。


 エルトの政府高官の息子である少年アリカ・ドローヴは、毎年の慣習に従い、両親とともに港町パラークシを訪れます。両親との関係が冷え切っていたドローヴですが、幼馴染のパラークシ・ブラウンアイズに会うために同行する。ブラウンアイズは宿屋兼酒場黄金のグルームワタリ鳥亭の店主の娘で、ドローヴの初恋の相手です。


 パラークシでは、海水が粘り気を帯びるグルーム(粘流)と呼ばれる現象が到来し、独特の生態系を持つ生き物たちが活動します。精神感応能力を持つ毛深い小型生物ロリンが、町の周縁に静かに佇んでいます。二大国アスタとエルトの戦争が激化するなか、パラークシに謎めいた新缶詰工場が建設され、地元の人々と政府(パール)の対立が深まっていく。


 やがてドローヴは政務官スローンから衝撃の真実を告げられます。天文学的研究により、この惑星に40年にわたる氷期が迫っていることが判明しています。新缶詰工場は、政府高官たちが秘密裏に冬を生き延びるために作ったシェルターでした。両国はその事実を知りながら、戦争を続けることで民衆に隠蔽していました。


 氷期が迫るなかドローヴはシェルターに閉じ込められるものの、フェンスひとつ隔てた外側でブラウンアイズをはじめとするパラークシの人々が凍える寒さにさらされます。一人また一人と姿を消していく人々。ドローヴは特権的な避難場所を捨て、ブラウンアイズを探すために凍てつく外へ踏み出します。


 物語はドローヴの回想という形で語られており、その構造自体が彼は生き延びたという事実をほのめかしていたす。ラストでドローヴはロリンに導かれ、ブラウンアイズとともにロリンによる催眠的な冬眠によって40年の氷期を生き延びます。

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