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ヴォネガット『プレイヤー・ピアノ』解説あらすじ

カート=ヴォネガット
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始めに

 ヴォネガット『プレイヤー・ピアノ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

トウェイン、ビアスの影響

 ヴォネガットは、マーク=トウェイン(『ハックルベリー・フィンの冒険』『王子と乞食』)やアンブローズ・ビアスという作家からの影響が顕著です。

 トウェインは口語的でエネルギッシュかつリズミカルな語りと、ペーソスを特徴とします。本作も、砕けた口語的な語でありつつも、ペーソスある物語を展開していきます。

 またトウェインやビアスのシニカルな風刺性と、ヴォネガットに影響しています。

オーウェル、ショーのリアリズム

 ヴォネガットはまた、オーウェル(『1984』『動物農場』)やショー(『ピグマリオン』)のシニズム、ペシミズムからも大きな影響を受けています。

 オーウェルのSF作品は、SF仕立ての内容の中に社会批判などを孕んでいますが、本作も同様です。

 ショーも寓意的で辛辣な諷刺作品を展開しましたが、本作も同様の精神を観て取れます。

機械化の果て

 本作の最大のテーマは人間が経済的・生産的に不要になったとき、その自尊心をどう保つかという問いです。ほとんどの労働が機械化され、人間よりも正確で効率的に作業が行われる社会では、一部のエリート技術者を除き、一般市民は存在価値を失います。物質的な不自由はなくても、社会に必要とされていないという感覚が、人々の精神を蝕んでいく様子が描かれています。


​ ​社会が知能指数(IQ)と技術的適性によって厳格に二分されている点が特徴的です。社会を支配するマネージャー・技術者層と、軍隊か単純な公共事業(復興再生局。「リークス&レックス」)に従事するしかない持たざる人々との間に、埋めがたい深い溝が生じています。教育と適性検査によって人生が決定されるシステムの非情さが批判的に描かれています。

タイトルの意味

 作中の社会において、技術革新はそれ自体が目的化しており、誰もその流れを止めることができません。科学者やエンジニアたちはより効率的で、より間違いのないシステムを追求しますが、それが人間を不幸にしている可能性については盲目です。題名のプレイヤー・ピアノは、鍵盤が勝手に動き、あたかも誰かが弾いているように見えますが、そこには奏者はいません。これは、人間不在で回る社会の象徴です。


​ ​物語後半の大きなテーマは、人間は結局、機械を求めてしまうという悲観的な文明論です。​ゴースト・シャツ団による、機械を破壊し、人間の尊厳を取り戻そうとする革命が起きますが、その結末は極めて皮肉です。革命によって機械を壊した直後から、人々は再び便利さを求めて壊れた機械を修理し始めます。これは、技術に対する人間の依存性が根源的なものであることを示唆しています。

物語世界

あらすじ

 舞台は近未来のアメリカ、ニューヨーク州イリアム市。社会は川を挟んで真っ二つに分かれています。​東側は高いIQを持ち、社会を管理するマネージャーや技師たちの居住区。​西側は機械に職を奪われ、軍隊か道路補修などの無意味な公共事業(リークス&レックス)に従事するしかない大多数の市民の居住区。


 ​主人公ポール=プロテウスは、イリアム製作所の所長であり、この管理社会を築き上げた偉大な父を持つ、エリート中のエリートです。しかし、彼は物質的に満たされた生活の中で、人間が機械の部品のようになっている現状に強い違和感を抱き始めていました。


​ ​ポールの不満は、かつての同僚でドロップアウトしたフィンナティや、体制転覆を狙う牧師のラッシャーとの再会によって加速します。彼は昔ながらの生活を求めて古い農場を買い取りますが、近代的な教育を受けた彼には、機械なしで土にまみれて生きる術がありませんでした。


 ​一方、組織の上層部はポールの不審な動きを察知します。彼は反体制組織に潜入するためのスパイになるよう命じられますが、皮肉にもそのまま本物の反逆者として組織に迎え入れられることになります。


​ ​ポールがリーダーとして祭り上げられた反乱組織ゴースト・シャツ団は、19世紀のインディアンの絶望的な抵抗になぞらえた名称です。彼らの目的は、人間から尊厳を奪った機械を破壊し、社会を人間の手に取り戻すことでした。​ついにイリアム市で大規模な暴動が発生します。ポールたちは次々と自動化された工場や施設を破壊し、一時的に勝利を収めたかのように見えました。


​ 反乱は全国的な広がりを見せず、一部の都市が破壊されただけで、軍隊によって制圧されます。最も衝撃的なのは、機械を壊した直後の反乱軍たちの行動です。彼らは壊れた機械の残骸を前にすると、持ち前の修理好きな性質を抑えられず、再び機械を組み立て、元の便利な生活に戻そうとしてしまうのです。​ポールは、人間が結局は技術の進歩と便利さから逃れられない運命にあることを悟り、自ら出頭する道を選びます。

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