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ブコウスキー『勝手に生きろ!』解説あらすじ

ブコウスキー
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始めに

 ブコウスキー『勝手に生きろ!』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ブコウスキーの作家性

 ジョン=ファンテは​ブコウスキーにとっての「神」であり、最大の恩人です。ロサンゼルス中央図書館でファンテの『塵に問え』を見つけて衝撃を受けました。俗語、自伝的な語り、滑稽さと哀愁を継承します。
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 セリーヌの影響も顕著です。代表作『夜の果てへの旅』に見られる、反俗精神と皮肉、そして口語的世界は、ブコウスキーの文体の核となりました。
 

 クヌート=ハムスン 『飢え』は、極限状態にある人間の心理描写や、プライドと惨めさの板挟みになる姿から感化を受けます。
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 ブコウスキーは後にヘミングウェイを批判することもありましたが、初期の短編におけるハードボイルドからは多大な影響を受けています。他にもドストエフスキー、ツルゲーネフに示唆を受けました。

タイトルの意味

​ 主人公チナスキーは、掃除人、倉庫番、工場労働者など、あらゆる職に就きますが、どれも長続きしません。彼は真面目に働いて出世するという社会のルールを心底軽蔑しています。仕事をクビになることは彼にとって敗北ではなく、むしろ自分を取り戻すための儀式として描かれています。


​ ​世界が戦争に沸き、人々が国家や企業のために心血を注ぐ中、彼はただ自分の快楽と創作だけに忠実であり続けます。タイトルの”Factotum”(雑用係)は皮肉であり、彼は社会の便利な歯車になることを徹底的に拒みます。どれだけ泥酔し、どん底の生活を送っていても、彼はタイプライターに向かい、雑誌社に原稿を送り続けます。彼にとって書くことは成功するための手段ではなく、過酷な現実の中で正気を保つための唯一の呼吸法です。


​ 彼は女性たちと共同生活を送りますが、そこにあるのは甘いロマンスではなく、互いの欠乏を埋め合わせるような、あるいは共依存的な刹那の繋がりです。誰とも分かち合えない個の孤独を、彼は冷笑的に、かつ淡々と受け入れています。作品のテーマはどれほど無能な、あるいは社会のクズだと見なされる存在であっても、自分の魂の主権だけは誰にも渡さないという、究極の個人主義です。チナスキーはその最後までやり通すために、社会的な成功を喜んでドブに捨てているのです。

物語世界

あらすじ

​ ​第二次世界大戦中、アメリカ中が愛国心に燃えるなか、主人公のヘンリー=チナスキーは「身体検査不合格(4-F)」となり、徴兵を免れます。彼は重苦しい家庭を捨て、ニューオーリンズからロサンゼルスへと、安いバスを乗り継ぎながら放浪の旅に出ます。


​ ​彼は生きるために、ありとあらゆるまともな人間がやりたがらない仕事に就きます。​倉庫の荷出し、​清掃員、​トラックの運転手、​発送業務。しかし、どれも長続きしません。二日酔いで欠勤するか、上司の顔が気に入らないから辞めるか、あるいはあまりの無能さにクビを言い渡されるかのどれかです。


​ ​チナスキーの生活を支えるのは、安いワインと競馬、そして自分と同じように社会の底辺を漂う女たちです。特に、似た者同士の女性ジャンとは、激しく愛し合い、酒を飲み、罵り合い、別れてはまたくっつくという自堕落な共同生活を送ります。


​ ​どんなにボロボロの部屋に住み、明日の食費がなくても、彼は安物のタイプライターで小説を書き続けます。文芸誌に送っては突き返される日々。しかし、彼は絶望するわけでもなく、ただ淡々と書くことだけを唯一の聖域として守り続けます。


​ ​物語は、何かを成し遂げて終わるわけではありません。最後もまた、仕事を失い、女と別れ、一人でストリップ劇場に紛れ込み、またどこかへ向かおうとするチナスキーの姿で幕を閉じます。

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