始めに
ジョン=バンヤン『天路歴程』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
バンヤンの作家性
バンヤンにとって、聖書は世界のすべてでした。彼の文体、比喩、語彙のほとんどは聖書から来ています。特に使徒パウロの手紙は、彼の神学的なバックボーンとなりました。
バンヤンの霊的な苦悩を救ったのが、ルターの『ガラテヤ書講義』です。バンヤンはこの本を古本屋で見つけ、自分の心の中をすべて書き透かされているようだと深く感動しました。バンヤンが獄中で繰り返し読んだのが、ジョン=フォックスの『殉教者の書』です。信仰のために苦難に耐える人々の物語は、バンヤンの不屈の精神を支えました。
バンヤンの最初の妻が持参金代わりに持ってきた2冊の本、アーサー=デントの『天国への平易な道』と、ルイス=ベイリーの『敬虔の修練』は当時のピューリタンの間で広く読まれていた手引書で、バンヤンが世俗的な生活から宗教的な生活へと転換するきっかけを作りました。
若い頃に親しんだ騎士道物語や民話(『ベヴィス卿』など)の影響もあります。
信仰の旅
物語の冒頭、主人公クリスチャンは背中に大きな重荷を背負っています。これは彼自身の罪や死への恐怖を象徴しています。
人間は自力でこの重荷を下ろすことはできず、十字架を仰ぎ見たときに初めて、その重荷が自然と転がり落ちるという、福音派的な救済のプロセスが描かれています。
旅の途中、クリスチャンはさまざまな困難に直面します。これらはすべて、信仰生活における内面、外面のハードルを擬人化したものです。絶望の沼は罪の自覚に打ちひしがれる状態です。虚栄の市は世俗的な名声、富、快楽といった、信仰を邪魔する世の中の誘惑です。死の陰の谷は孤独や精神的な暗闇です。
クリスチャンは常に、歩きやすい脇道へ誘われますが、それらはすべて破滅につながっています。多数派が流される広い道ではなく、聖書が示す狭い門から入り、困難でも正しい道を選び続けることの重要性を強調しています。彼が目指すのは、この世の幸福ではなく天の都です。この世はあくまで一時的な滞在先であり、真の故郷は天国にあるという寄留者としての生き方を提示しています。
物語世界
あらすじ
物語は、クリスチャンが聖書を読み、自分の背中に巨大な重荷があることに気づき、絶望して泣き叫ぶところから始まります。
自分の住む滅びの町がいずれ天からの火で焼かれると知った彼は、家族の制止を振り切り、伝道者に教えられた狭い門を目指して走り出します。
道中、彼は信仰を揺るがす様々な場所や人物に遭遇します。絶望の沼では、罪の意識に押しつぶされそうになり、泥沼に沈みかけます。十字架の丘でようやく、背負っていた重荷が自然に外れ、墓の中へと転がり落ちます。謙遜の谷では悪魔の王アポルオンと死闘を繰り広げ、辛くも勝利します。死の陰の谷では真っ暗闇の中、左右の落とし穴に怯えながら進みます。
旅の途中で仲間になった忠義(フェイスフル)と共に、虚栄の市という町に辿り着きます。ここは、金、名誉、快楽など、あらゆる世俗的なものが売られている場所です。
旅の目的を忘れない二人は見世物にされ、裁判にかけられます。ここで「忠義」は処刑されて殉教しますが、クリスチャンは奇跡的に脱出し、新たな仲間「希望(ホープフル)」と出会います。
疑いの城では巨人の「絶望」に捕まり、地下牢で自殺しろと脅されますが、預かっていた「約束」という鍵で脱出します。
ゴールの天の都の直前には、橋のない深い川(死の象徴)が流れています。信仰が揺らぐと溺れそうになりますが、必死に泳ぎきります。川を渡りきった二人は、輝く天使たちに迎えられ、ついに目的地である天の都へと入城します。




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