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ウィリアム・S・ギルバート「ミカド」解説あらすじ

ウィリアム・S・ギルバート
74426331, 8/9/04, 12:12 pm, 8C, 7080x10660 (506+0), 100%, bent 6 stops, 1/60 s, R105.4, G80.6, B96.7
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始めに

ウィリアム・S・ギルバート「ミカド」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ウィリアム・S・ギルバートの作家性

 ギルバートに最も直接的な影響を与えたのは、19世紀前半に活躍したプランシェだと言われています。エクストラバガンザ(空想的軽演劇)の先駆者です。ギルバート以前の英国喜劇は粗野なドタバタ劇が主流でしたが、プランシェはそれを知的なウィットと洗練された韻文に昇華させました。ギルバートはプランシェが確立したこのエレガントな形式を引き継ぎ、さらにそこに独自の論理性を加えました。


​ ​劇作家としてのギルバートを語る上で欠かせないのが、近代演劇の先駆者ロバートソンです。彼はカップ・アンド・ソーサー演劇と呼ばれる、日常的なリアリズムを舞台に持ち込みました。ギルバートは、どれほど不条理な設定であっても、登場人物たちは大真面目に、現実の人間のように振る舞うべきだという演出哲学をロバートソンから学びました。


 ​古典に目を向けると、古代ギリシャの喜劇作家アリストパネスの影響も指摘されます。政治家や社会現象を容赦なく風刺し、合唱隊を駆使して物語を展開させる手法は、まさにギルバートのオペレッタの構造と一致します。


​ 同時代の偉大な小説家ディケンズの影響も無視できません。ギルバートはディケンズの作品、特にそのキャラクター造形やネーミングセンスを深く愛読していました。

階級批判、官僚批判

 『ミカド』の最大の標的は、イギリスの政治システムと、肩書きばかりを欲しがる官僚たちです。​プーバーはほとんどすべての役職である大法官、海軍大臣、大蔵大臣などを兼任するキャラクターです。これは、当時の役人が複数の役職を掛け持ちして不当に利益を得ていたことや、賄賂が横行していた状況を皮肉っています。


​ 不倫は死罪という極端な法律が物語の核にありますが、これは時代遅れで実態に合わない法律を、文字通りに守ろうとする滑稽さを象徴しています。

​ この作品の面白さは、死という重いテーマを、徹底して事務的論理的に扱うところにあります。
​「罪にふさわしい罰」はミカドの有名な歌のフレーズですが、その内容はお喋りな奴は歯医者の治療を延々と受けさせるといった風変わりなものばかり。正義が単なる気まぐれや形式に成り下がっている様子を描いています。


 実際に処刑しなくても、処刑したという報告書があればそれは事実である、という役人的な理屈が展開されます。事実よりも手続きを重んじる官僚主義への批判です。

 1880年代、ロンドンのナイツブリッジで日本村という博覧会が開催され、日本ブームが起きていました。ギルバートはこのブームを利用し、観客にとって自分たちの話ではないと思わせることで、より自由にイギリス社会を批判しました。実際の内容はイギリス的なのに、ビジュアルだけを日本風にするというギャップが、作品に独特のユーモアと芸術性を与えています。

物語世界

あらすじ

 物語の主人公ナンキ=プー(実は放浪の楽師に変装したミカドの息子)は、恋する娘ヤムヤムに会うためにティティプへやってきます。


 ​しかし、ヤムヤムは町の処刑吏ココ(もとは仕立屋だが、不倫の罪で死刑寸前だったところを自分を処刑するのは無理という理屈で処刑吏に抜擢された男)の婚約者になっていました。
 ​

 そこへ、ミカドから早く誰かを処刑しないと町を格下げするという命令が届きます。ココは誰でもいいから処刑したい、​ナンキ=プーはヤムヤムと結婚できないなら死にたい。そこで一ヶ月間だけヤムヤムと結婚して贅沢をしていい代わり、一ヶ月後に君を処刑する、というとんでもない契約が成立します。


​ ​二人の結婚準備が進む中、ココは古い法律を発見します。​「処刑された男の妻は、生きたまま埋められなければならない」と。


 ​これを聞いたヤムヤムは結婚を拒否、ナンキ=プーは再び絶望します。困ったココは、ミカドが町に到着するという知らせを聞き、実際に殺すのは可哀想だから、処刑したことにして書類だけ偽造しようと思いつきます。


​ 町に到着したミカドと、ナンキ=プーを追ってきた年増の令嬢カティシャに対し、ココたちは処刑は無事に終わりましたと誇らしげに報告します。


 ​ところが、処刑した相手が実はミカドの息子だったことが発覚します。​ミカドは「私の息子を殺したのか。なら君たち全員、煮えたぎる油で死刑だ。これは規則だ」と言います。


 ​絶体絶命のココは、生き返った(実は隠れていた)ナンキ=プーをミカドの前に連れて行くしかありません。しかし、ナンキ=プーは、「カティシャが怖くて姿を現せない。ココが彼女と結婚して静めてくれるなら、生き返ってもいい」と条件を出します。


 ​結局、ココは泣く泣く恐ろしいカティシャと結婚。ナンキ=プーとヤムヤムも結ばれ、ミカドも書類上死んでいたとしても本人が生きてるなら万事解決だ、という論理で全員を許し、大団円を迎えます。

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