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村田沙耶香『地球星人』解説あらすじ

村田沙耶香
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始めに

 村田沙耶香『地球星人』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

シュルレアリスムの系譜(大江健三郎、吉村萬壱)、新即物主義(ジュール=ルナール)、表現主義の系譜(本谷有希子)

 村田沙耶香はエッセイでもシュルレアリスムの系譜を継ぐ作家(大江『僕が本当に若かった頃』、吉村萬壱)、新即物主義の作家ジュール=ルナール(『にんじん』)、表現主義の系譜の作家(本谷有希子『嵐のピクニック』)への好意的な言及が見え、そこからの影響が伺えます。

 ブルトンにおけるシュルレアリスムはアウトサイダーアートであって、現実の犯罪者へ着目するなど、ブルジョワ社会の規範、モラル、法に対するアンチテーゼとして犯罪を捉える視点がありました。

 本作も、そのようなアウトサイダーの視点から、モラルを相対化します。

語りの構造

 全体的に、ジェイムズ『ねじの回転』や大岡『野火』と重なる、信頼できない語り手が展開されます。特に後者とはカニバリズムのテーマも重なります。

 語り手はヒロインの奈月です。奈月と、いとこで恋人の由宇には、幼少期から妄想がありました。奈月のそれは自分が魔法少女であり、ポアピピンポボピア星の魔法警察からやってきた使者であるピュートからもらったコンパクトで変身することができ、ステッキで魔法を使うことができるというものです。由宇のそれは自分が宇宙人であり秋級に来る度に宇宙船をさがしているというものでした。

 他愛ない妄想ですが、これが2人が成長するにつれて、トラブルに見舞われたことで次第に強化されていきます。

 奈月は、塾のアルバイトの伊勢崎から性暴力を受けたことで、魔法少女の妄想を強めて、解離のなかで、伊勢崎を殺めてしまいます。由宇も、人間関係のままならなさから、件の妄想を強化します。

 やがて三人は、自分たちを地球の慣習になじまない宇宙人という妄想を強化して共同生活を送り、そのなかでカニバリズムも実践します。

 現実には以上のような事が起こっていると思われますが、語り手は奈月なので、そのことが朦朧とした語りで示され、あくまでも伊勢崎殺しは魔女との戦いであって、魔女から解放してあげたに過ぎないというのが本人の認識です。

タイトルの意味

 主人公たちの孤独と妄想を象徴するのがタイトルの「地球星人」です。

 奈月とその夫と由宇の三人は、それぞれ地球の慣習になじめず、次第に自分たちを地球星人の暮らしになじめない宇宙人だと認識するようになっていきます。

 三人はモラルを逸脱し、近親相姦やカニバリズムをも犯します。

物語世界

あらすじ

 小学4年生である奈月が一年ぶりに、祖父と祖母が住んでいる秋級を訪れます。

 家族の中で自分の居場所がない奈月にとって夏に親戚が集う秋級で、恋人になったいとこの由宇に会うのが楽しみでした。

 奈月と由宇にはそれぞれ秘密がありました。奈月の秘密は自分が魔法少女であり、ポアピピンポボピア星の魔法警察からやってきた使者であるピュートからもらったコンパクトで変身することができ、ステッキで魔法を使うことができるというものです。由宇の秘密は自分が宇宙人であり秋級に来る度に宇宙船をさがしているというものでした。

 しかし、翌日に姉の貴世がいとこにからかわれたことでヒステリーの発作になり、二日で奈月は実家に帰ることになります。

 奈月は帰る前に由宇に結婚してほしいと頼みます。由宇は奈月の言葉に対して結婚しようとかえします。二人は針金で作った指輪をつけあい恋人になったときと同じように二人だけの決まりを作ります。他の女の子と手をつないだりしないこと
、寝るときに指輪をつけて眠ること、なにがあってもいきのびること。

 その後、実家に戻った奈月は一年後の由宇との再会を楽しみにしています。

 しかし塾の伊賀崎先生から性暴力を受けます。伊賀崎は大学生のアルバイトですが、奈月に対して指導といって度々体に触れたりします。伊賀崎の行為について奈月はおかしいと違和感を感じますが、伊賀崎のようなかっこいい先生が自分に好意を抱いているわけがないと誰にも相談をしません。

 伊賀崎の行為はエスカレートし、母親に相談するものの、母はそんな奈月をスケベなことを考えるなと一蹴します。

 一年が経ち由宇との再会まで一週間となった夏祭りの日。友人の静ちゃんが具合が悪く伊賀崎の家で休んでいると伊賀崎に教えられます。奈月は静ちゃんまで伊賀崎の魔の手に落ちるのではと考え、静ちゃんを助けるために奈月は伊賀崎とともに家に向かいます。

 しかし伊賀崎の家に静ちゃんはいませんでした。騙された奈月は伊賀崎に「ごっくんこ」って知っていると尋ねられます。知らないと答えた奈月に伊賀崎は「ごっくんこ」の指導をするといます。

 逆らったら殺されると考えた奈月は伊賀崎にしたがいます。「ごっくんこ」をさせられた奈月は魔法を使って幽体離脱をしたような状況になり、無意識のうちに家へと帰っていきます。

 翌日奈月は意識が戻るものの、味が分からなくなっていました。ジュースを飲んでも腐った飲み物を飲んだような気がして味を感じません。

 その翌日、祖父が亡くなり、葬式のため予定より早く奈月は再び秋級を訪れます。秋級で一年ぶりに由宇と再会した奈月は由宇に伊賀崎に殺される前に性行為をしてほしいとお願いします。由宇は了承します。

 次の日の夜中、奈月と由宇はセックスを行います。満足した奈月は伊賀崎に殺される前に、母親から盗んだ睡眠薬を大量に服用して自殺をしようとします。しかしそれに気がついた由宇は奈月を生き延びなければいけないと言って止めます。由宇により、奈月は自殺を踏みとどまりました。

 そうした中、二人を探しにきた大人たちに二人は見つかってしまいます。服を着ていない二人を見て大人たちは二人を別々の蔵に閉じ込めて反省させます。奈月は大人たちを見て、世界に従順ではなくなった私たちに動揺していると感じます。

 翌日、実家に連れ帰られることになった奈月は、由宇が自分の靴の底に宝物を残していたことに気がつきます。その宝物は昨年結婚式の際に約束した三つの約束事が書かれた結婚誓約書でした。誓約書の約束を守ろうと奈月は誓います。

 時はかわって、現代。奈月は3年前の31歳のときに結婚し、現在は千葉のマンションに住んでいました。しかし結婚生活には秘密がありました。

 夫と奈月が出会ったきかっけは「すり抜け・ドットコム」というサイトでした。奈月は社会という人間を生産する工場の部品の一部に自分を偽装するために自分と同じような考えを持つ結婚相手を探していました。そこで見つけたのが今の夫です。夫も奈月と同じように工場の部品として機能しているかのように偽装するために結婚相手を探していました。

 二人の結婚生活は性行為もありません。

 そうした生活が続く中夫が会社をクビになったことで、二人は秋級を訪れます。都会で育った夫にとって秋級は憧れの場所でした。奈月は由宇が現在秋級の家に住んでいることを知ります。

 秋級を訪れた奈月は久しぶりに由宇と再会します。奈月たち夫婦はこれからしばらく由宇と同じ家で暮らすということで自分たちの秘密を話します。自分たちは宇宙人であると話す二人に対して由宇は、「自分はれっきとした地球人だ」とかえします。

 奈月は久しぶりに訪れた秋級の地で、小学生のとき秋級から連れ戻されてすぐに伊賀崎の家で魔女を殺したことを思い出します。

 家に連れ戻された奈月は遊びに行くのは禁止されますが、塾には行けと母親から言われます。

 塾に行くと伊賀崎から明日塾は休みですが奈月のために特別授業をするといわれます。その晩奈月はピュートとの作戦会議でピュートから魔女に操られている伊賀崎を助けてあげるように言われます。

 伊賀崎を助けることを決意した奈月はピュートと変身コンパクトと魔法のステッキを持ってこっそり家を抜けだし伊賀崎の家へと向かいます。伊賀崎の家に着くと伊賀崎から事前に教えられていた鍵を見つけて家に入りました。

 伊賀崎の部屋に入る直前、以前伊賀崎にごっくんこを強要されたときのように奈月は幽体離脱の魔法が使えました。幽体離脱した奈月は自分が抜けた体の様子を眺めます。奈月の体は伊賀崎に近づき家から持ってきた草刈り鎌を何度も伊賀崎に振り下ろしたのでした。

 幽体離脱の魔法はいつの間にかとけており奈月はピュートに言われるがままに1分近く呪文を唱えながら鎌を振り下ろしました。

 ピュートからもういいよと言われた奈月は、自分の服が金色の液体で汚れているのに気がつき、学校の焼却炉で服や使用した道具を燃やし下着姿でリュックを背負ったまま帰宅しそのままシャワーを浴びたのでした。

 新学期になり学校で静ちゃんから伊賀崎が殺されたことを教えられます。静ちゃんに誘われて伊賀崎の両親が犯人を探すためのビラを配っているということで奈月もビラ配りに参加しました。それから毎日ビラ配りに行き家に帰るとピュートに話しかけるものの、ピュートからは同じお礼の言葉しか聞くことができません。

 ある日のビラ配りの帰り静ちゃんから凶器は鎌であったことを聞きます。ピュートにそのことを相談するとピュートは奈月とはもう喋れないが奈月がポハピピンポボピア星人だと告げられます。その後ピュートはミイラのように一言も喋らなくなったのでした。

 その後奈月はポハピピンポボピア星人として孤独で生きていくより早く地球星人に洗脳されたいと考えるようになります。

 二人はしばらく由宇とともに秋級で人間工場から開放された生活を送るものの、しばらくして貴世がいつまで秋級にいるのかと奈月を訪ねてきます。夫は貴世のことを、工場からの使者と見て、工場生活に戻されると恐れます。

 貴世が帰った翌日の朝、夫から大切な話があると打ち明けられます。人間であることを捨てるために人間としてのタブーを犯すというのです。そのタブーとは家族の男性との近親相姦です。夫は週末実家に帰り兄と近親相姦しようとします。

 翌朝夫は兄と近親相姦をするために家を朝早くにでていきます。奈月は、いとこの陽太の家に泊まらせてもらうことになりました。奈月はその晩一人で秋級の家で眠ります。

 翌日の昼頃になり夫が戻って来たものの、帰ってきた夫は近親相姦に失敗し父に追われていました。夫の父が秋級を訪れて、奈月と夫の二人を無理やり工場へと連れ戻します。

 工場に連れ戻された奈月は家族からの取調べが行われます。取調べ内容は工場としての義務を果たすためにどうして夫と”仲良し”をしないのかというものでした。

取調べが続くある日、奈月は姉の貴世から仲良しできないのは昔塾の先生にいたずらされたからではないのかと言われます。実は姉は奈月と伊賀崎の関係を知っており、それだけではなく奈月が伊賀崎を殺したことも知っていたのです。姉は犯罪者の家族になると世界に従順な存在ではなくなるため、奈月が犯行に使用した道具を隠していました。貴世はまっとうな人生を送るために夫と仲良しをしろと言います。

 翌日、奈月は工場に戻ろうとしている夫に一緒に逃げないかと言います。夫は了承し逃げるとともに、地球星人へ洗脳されかけている由宇を助けに行こうと秋級の家へと向かいます。

 由宇を迎えに行くと最初は由宇も地球星人と同様に真当な人間として生きるために工場から出ていくことに反対しますが、やがて由宇は真実を打ち明けます。由宇は昔から周りの命令に従っていただけで、現在も命令に従って地球星人になろうとしていたことを告白します。そのあと由宇も夫婦とともに工場から逃亡することを決意します。

 秋級の家に逃亡した奈月たちはそこで地球星人とは別の生き方をしようとします。三人の合理性は”いきのびること”を重視して、少ない貨幣で食料を買うのがもったいないと気がつけば食料を盗むようになります。

 地球星人としての生活が続くある日、秋級の近くの道路で起きた土砂崩れが原因で秋級の人々が秋級から出て行っていることを知ります。人が少なくなった秋級で食べ物を盗みます。

 翌日の朝、頭に強い衝撃が走ります。衝撃の正体は地球星人からの攻撃であった。奈月は地球星人から身を守るために近くにあったトロフィーで地球星人を殴り殺しました。襲撃してきた地球星人の正体は伊賀崎の両親です。伊賀崎が死んだ理由を知った両親は仇をうつために奈月を殺しに来たのでした。

 伊賀崎の両親を殺した3日後、土砂崩れが原因で他の地球星人が秋級に戻ってこないため奈月たちの食料はつきかけます。そこで以前殺した地球星人の肉を冷凍しておこうと由宇は提案します。

 夫と奈月もその提案に賛同するものの、奈月はそれをしたらもう地球星人として生きていけないことを恐れ最初は地球星人の解体作業に参加しません。やがて奈月が由宇たちの様子を見に行くと二匹目の地球星人を解体しようとしていました。それを奈月も手伝うことにし、最初のうちは抵抗があったものの、解体してみると地球星人はただの肉でした。

 三人は地球星人を使った料理を食べます。その料理を食べた奈月は伊賀崎にごっくんこさせられていらい感じられなくなっていた味を感じられました。口が治ったのです。

 食事を食べ終わった三人は今後食料が尽きた場合、お互いを食べあわないかという話し合いをします。話し合いの結果一番おいしい人物から食べることになり、三人はそれぞれの味を確認します。

 それからしばらくした明るい日、三人の元に地球星人がやってきます。その地球星人の正体は奈月の姉と母です。姉と母からは悲鳴があがります。

 悲鳴を元にやってきた救助隊員は三人に「あなたたちは人間か」と尋ねます。由宇は流暢な地球星人の言葉で「ポハピピンポボピア星人です」とかえすのでした。

 その後三人は手を取り合い地球星人の住む星へとゆっくり歩んでいったのでした。

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