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川端『たんぽぽ 』解説あらすじ

川端康成
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はじめに

 川端『たんぽぽ 』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

モダニズム(ジョイス,横光利一)、異質物語世界の語り手、桃井銀平らへ焦点化

 川端康成は新感覚派を代表するモダニズム文学の作家として知られています。ジョイス(『ユリシーズ』)、横光利一(『機械』)は意識の流れの手法を展開し、一人称的視点のリアリズムを展開しましたが、本作も一人称的視点のリアリズムを描く内容と言えます。

 本作における語り手は異質物語世界によるもので、主に木崎稲子の母親に主な焦点化がされます。

 マインドワンダリングやフラッシュバックのような形で、主な視点が置かれる稲子の母の内面のなかで主観的なタイムトラベルがなされ、過去のエピソードや連想の映像的なモンタージュが印象的な内容で、「水晶幻想」からあるモダニストとしての確かな性格を感じさせます

語りの構造

 本作の語りは印象的で、もっぱら物語は稲子の母親と稲子の恋人の久野の会話から構成されているのですが、そのなかで二人は過去をさまざまに回想していて、過去のことが縦横に物語られていく、というデザインになっています。

 このような語りの構造はリョサ『ラ=カテドラルでの対話』、フォークナー『アブサロム、アブサロム!』と強く重なります。

奇病もの

 本作はエドガー=アラン=ポーなどがしばしば用いた謎の奇病というものを作品のなかに展開しています。ポーは川端に影響した芥川、谷崎も好んだ作家です。

 木崎稲子の奇病は、突然と目前の人の体が見えなくなる「人体欠視症」で、最初が恋人の久野に抱かれている時で、これは極度の愛から起こるものでした。

物語世界

あらすじ

 2月、木崎稲子の母親と稲子の恋人・久野は、生田町の常光寺境内にある精神病院・生田病院に稲子を入院させます。稲子の奇病は、突然と目前の人の体が見えなくなる「人体欠視症」で、最初が久野に抱かれている時でした。これは極度の愛から起こるものでした。

 母親と久野は稲子を入院させた帰り道、黄色いたんぽぽが咲く生田川の堤を歩きます。稲子の入院に反対する久野は、結婚して自分が治すと訴えるものの、「人体欠視症」の産婦が赤ん坊の首を絞めて殺した話を東京の医者から聞いた母親は、稲子の病気を病院で治すことを先決とします。

 入院したばかりの稲子が撞いた15時の常光寺の梵鐘の音がします。その音から、母親は稲子が中学1年の暮に親子3人で家族旅行をした折、近江八景の三井寺で鐘を撞いた娘を想い出します。その3年後に稲子の父親・木崎正之が亡くなったのでした。正之は、高校生の稲子と西伊豆に騎馬旅行中、崖から馬と転落死します。それは稲子のトラウマになります。

 生田の停車場の方に向う土橋で、母親は、たんぽぽのような少年を見つけて、その子が川か海の妖精に見えて、稲子に会わせれば病が治ると考え、少年を追い駆けたく思います。久野の方は、生田川の向う岸に白い鼠や、白いたんぽぽを見ます。

 明日、生田病院を訪ねようとする久野の要望で、母親と久野は、この町の生田館という宿に宿泊します。2人は宿で、18時を知らせる常光寺の梵鐘を聞きます。それに対して、稲子が撞いた15時の鐘の幻を母は聴き、久野は、生田病院の患者・西山老人が撞いた気高い問罪者が鳴らす音だと感じます。

 食事と風呂の後の会話で、母親は少女時代の稲子を回想し、卓球部だった高校生の稲子が試合中に玉が見えなくなって早退したことを思い出します。夜21時の梵鐘の音が響くと、友人との関西旅行で仁徳天皇の御陵大仙陵古墳の緑地で白鷺の群れに感動する稲子のことを語ります。

 母親は寝支度で帯を解く時、急に隣室の久野を男として意識し、亡き夫・正之との夫婦生活を回想します。旧陸軍中佐だった正之は、戦地で負傷し右脚が義足になり性的不能になりました。他方で稲子が病院で眠っているか考えていた久野は、寝床の上の古い電球を見ているうちに、稲子が久野の体の手前に見たという桃色の弓形の虹が現われ、稲子との愛を回想します。

参考文献

小谷野敦『川端康成伝-双面の人』(2013.中央公論新社)

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