始めに
始めに
最近、綿矢さんは中国に行ったみたいですね。というわけで(?)綿矢りさ『勝手に震えてろ』レビューを書いていきたいと思います。
語りの構造、背景知識
等質物語世界の語り手
この作品は等質物語世界の語り手・江藤良香が設定されています。自意識過剰で内向的な彼女のモノローグや妄想が、キュートなラブコメディとしてユーモラスに描かれています。
田辺聖子の影響が顕著
『インストール』に関する記事でも書きましたが、綿矢りさは田辺聖子やその源流となった谷崎潤一郎、スタンダール(『赤と黒』)などのフランス心理主義の流れを汲む作家からの直接、間接的な影響が顕著です。綿矢は、演劇的バックグラウンドの強い谷崎や田辺に似て、キャラクターの造形に加えて状況の設定が上手いのですが、本作品はシチュエーションの面白さというよりはもっぱら登場人物のキャラクター性が魅力を湛えています。
また、綿矢は代表作『蹴りたい背中』など、リアリスティックでグロテスクな心理描写も売りとする作家ですが、本作品はどちらかというと田辺聖子(「感傷旅行」)の諸作品のような、享楽的でコミカルな心理劇として展開されています。
町田康、村上春樹、ルイス=キャロルの影響。とりとめのないモノローグで綴られる精神世界
本作品は綿矢が私淑した町田康(「きれぎれ」)、ルイス=キャロル(『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』)の影響を感じさせます。語り手のとりとめのないモノローグや妄想の世界は、映画版ではフォルマリスティックな語り口でもって、たとえばジャンピエール=ジュネ監督『アメリ』にも似たラブコメディとして描かれています。
口語的でリズミカルな語り口は綿矢の好んだ村上春樹をも連想させますが、春樹や彼が私淑したサリンジャーとは異なって、内的世界がモノローグによって綴られても、そこに何か重大な心的外傷の影が見えてくるわけではなく、ハートフルなものとしてここでは展開されています。
フィクション世界
あらすじ
恋愛経験の少ない良香は、日々、中学時代に片思いをしていた一宮(イチ)との「脳内恋愛」を楽しんでいました。ある日、良香は同期の霧島(二)からの告白を受けます。イチへの思いと、特に好意をはない二との間で心が揺れます。そんな中、良香はイチと再開することに…
登場人物
・江藤良香:語り手。イチに片思いし、脳内での恋愛を楽しんでいる。内向的な性格で、自分の世界に篭りがち。
・一宮:良香に片想いされている。
・霧島:良香に恋している。
総評
拗らせヒロインのハートフルなラブコメ
綿矢りさ得意の拗らせ女子を描くラブコメディです。爽やかな後味を残します。おすすめ。




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