始めに
ワイルド『真面目が肝心』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
古典主義
ダブリン大学トリニティ・カレッジ、次にオックスフォード大学マグダレン・カレッジで学び、古典を学んだワイルドでした。
ワイルドは、ウォルター・ペイターとジョン・ラスキンが中心となる、ギリシア・ローマ文学やルネサンス芸術に着目する古典主義的ムーブメントから、多大な影響を受けました。
本作もクラシックなスタイルの戯曲作品です。
英国ルネサンス演劇
『真面目が肝心』『ウィンダミア卿夫人の扇』『理想の夫』『つまらぬ女』で四大喜劇と呼ばれています。
本作はシェイクスピアに代表される英国ルネサンス演劇的な、クラシックなスタイルの艶笑喜劇になっていて、すれ違いと誤解が引き起こす物語が展開されます。
本作はアルジャーノンとアーネスト(ジャック)という友人同士がいて、2人とも架空の設定をこしらえて田舎にきていました。アルジャーノンは架空の親友のためによく田舎へ来ていて、アーネストは実はジャックという名前だったのですが、放蕩者のその弟アーネストという設定で田舎に来ていました。
ジャックは田舎では彼の被後見人であるセシリーのために、謹厳な紳士を装っていて、またアルジャーノンの従姉妹であるグウェンドレンとの結婚を望んでいます。しかしグウェンドレンがジャックを愛しているのは、ジャックの名が、グウェンドレンにとって世界で最も美しい名である「アーネスト」だと、グウェンドレンが思い込んでいるからでした。また口やかましいブラックネル夫人も結婚の障壁でした。
そんななかでアルジャーノンがセシリーに惹かれて、ジャックの弟アーネストに成りすまして接近しようとするものの、ジャックはアーネストを死んだことにしてしまっていたため、ドタバタが巻き起こります。
しかし、最終的に実はジャックはアルジャーノンの実の兄で、更にジャックの本名がアーネストであると明かされ、カップリングの二つの障壁が消えうせて、アルジャーノンはセシリーと、ジャックはグウェンドレンと結ばれ、デウス・エクス・マキナ的ハッピーエンドになります。
ブラックネル夫人は親戚と分かったジャックに「くだらないことばっかりしてそうね」と嫌味を漏らしますが、「いやいや。オーガスタ叔母さん、私は生まれて初めてアーネスト(真面目)であることの大切さに気づいたのです」、と返してタイトルを回収します。
物語世界
あらすじ
第一幕
裕福なロンドン子のアルジャーノンは、田舎に住んでおり体の弱いバンベリーという名の友人を持っているふりをしています。逃げたいときは、アルジャーノンはこの「病弱な友達」への表向きの訪問を行っていました。責任を逃れてロンドンを離れる完璧な口実を得ることにより、アルジャーノンは敬虔かつ献身的な人物を装うことができて、アルジャーノンはこの習慣を「バンベリーする 」と名付けました。
アルジャーノンの本当の親友は田舎に住んでいるものの、頻繁にロンドンを訪問しています。この友人の名はアーネストである、とアルジャーノンは信じていました。アーネストが銀の煙草入れをアルジャーノンの部屋に置き忘れた時に、アルジャーノンは煙草入れの中に「セシリーより」「親愛なるジャックおじさまへ」という文句が刻まれているのを発見します。これにより、アーネストはロンドンを訪れるために彼もまたバンベリーをしていることを、明らかにします。
アーネストの田舎での本名はジャック・ワージングであり、ロンドンに住むアーネストというだらしない弟を持っているふりをしています。真面目なジャックがロンドンにやってくると、放蕩者のアーネストの名前と振る舞いを装います。ジャックは田舎では彼の被後見人であるセシリーのために、謹厳な紳士を装っています。
ジャック自身はアルジャーノンの従姉妹であるグウェンドレンとの結婚を望んでいるものの、グウェンドレンがジャックを愛しているのは、ジャックの名が、グウェンドレンにとって世界で最も美しい名である「アーネスト」だと、グウェンドレンが思い込んでいるからに過ぎないように見えるし、グウェンドレンの母親が口やかましいブラックネル夫人であることが障壁です。
第二幕
ジャックからセシリーの話を聞いたアルジャーノンは、セシリーに会おうと心に決め、アルジャーノンはジャックの弟である「アーネスト」のふりをして、田舎のジャックの屋敷を訪問する事を思い付きます。しかしジャックはこれ以上「バンベリーする」ことを放棄することに決めます。
ジャックは完全に喪に服してやって来て、兄がパリでひどい寒さで亡くなったことを告げますが、アーネストに扮したアルジャーノンの存在によって、その話は台無しになります。グウェンドレンは、母親に内緒でブラックネル家のロンドンの家を出て、やって来ます。2人の男性が一時的に不在の間、彼女はセシリーに出会います。最初は仲が良かったものの、お互いの婚約を知ると憤慨して、自分がアーネストと婚約していると宣言します。ジャックとアルジャーノンが一緒に再び現れると、グウェンドレンとセシリーは騙されたことに気づき、庭に男たちを残して家に引きこもります。
第三幕
グウェンドレンとセシリーはこの男たちの策略を許します。娘を追って到着したブラックネル夫人は、アルジャーノンとセシリーが婚約していると聞いて驚きます。セシリーの富が明らかになると、ブラックネル夫人はすぐにこの若い女性がふさわしいかどうか疑念を抱くが、彼女の保護者であるジャックは婚約を禁じます。ジャックは、ブラックネル夫人がグウェンドレンとの結婚に同意する場合のみ同意するものの、夫人はそれを拒否します。
やがてミス=プリズムがやってきます。ブラックネル夫人は、ミス=プリズムが、28年前に一家の乳母として、ブラックネル卿の家から男の赤ちゃんを乳母車に乗せて連れ出し、二度と戻ってこなかった人物だと認識します。問い詰められたミス=プリズムは、自分が執筆中の小説の原稿をうっかり乳母車に入れ、赤ちゃんをハンドバッグに入れて、後にヴィクトリア駅に置き忘れたと説明します。ジャックは同じハンドバッグを取り出し、自分が行方不明の赤ちゃんであり、ブラックネル夫人の亡き妹、モンクリフ夫人の長男であり、したがってアルジャーノンの兄であることを示します。これにより、グウェンドレンの求婚者として受け入れられます。
グウェンドレンは、アーネストという名の男性しか愛せないと言い張ります。ブラックネル夫人はジャックに、長男であるジャックは父親のモンクリフ将軍にちなんで名付けられるはずだったと告げます。ジャックは陸軍名簿を調べ、父親の名前、つまり自分の洗礼名が実はアーネストだったことを知ります。アーネストとグウェンドレン、アルジャーノンとセシリー、さらにはドクター=チャズブルとミス=プリズムまで、幸せな二人が抱き合います。しかしブラックネル夫人は新しく見つけた親戚に「くだらないことばかりしてそうね」と不満を漏らします。ジャックは答えます。「いやいや。オーガスタ叔母さん、私は生まれて初めてアーネスト(真面目)であることの大切さに気づいたのです」、と。
参考文献
・宮崎かすみ『オスカー・ワイルド – 「犯罪者」にして芸術家』




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