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ワイルド『サロメ』解説あらすじ

オスカー=ワイルド
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始めに

 ワイルド『サロメ』解説あらすじを書いていきます。

 

背景知識、語りの構造

古典主義

 ダブリン大学トリニティ・カレッジ、次にオックスフォード大学マグダレン・カレッジで学び、古典を学んだワイルドでした。ワイルドは、ウォルター・ペイターとジョン・ラスキンが中心となる、ギリシア・ローマ文学やルネサンス芸術に着目する古典主義的ムーブメントから、多大な影響を受けました。

 本作も『新訳聖書』のサロメを題材にしており、このあたりは古典主義教育の影響が見えます。モロー「出現」が、本作の創作の契機とされます。

新約聖書におけるサロメと本作の脚色

 ワイルド『サロメ』は、洗礼者ヨハネに魅せられたサロメが誘惑を拒絶するヨハネに嫉妬して、ヘロデにヨハネの首を求め、最後には、その首にサロメが口づけするという内容です。ファム=ファタールという悪女のステレオタイプとして、本作などが皮切りとなってサロメは浸透していきました。

 従来からサロメを扱った創作は多く、もともとサロメは『新訳聖書』の名無しの女性で、『マルコによる福音書』などでは、ヘロデ・アンティパスの宴会で踊り、一同を喜ばせたサロメが、望みの褒美を問われ、母のヘロデヤに尋ねると洗礼者ヨハネの首と言われたので、洗礼者ヨハネの首を盆に乗せるよう頼み、ヨハネは殺されます

 最初、ヘロデヤは、ヘロデ大王とその3番目の妻・大祭司シモンの娘マリアムネとの間に生まれたヘロデと結婚して、娘サロメを儲けたものの、夫の異母兄弟のヘロデ・アンティパスと恋して、ヘロデ(ピリポ)と離婚してヘロデ・アンティパスと結婚しました。この結婚を批判してヨハネは投獄され、ヘロデヤは以降もヨハネを恨んで、夫ヘロデ・アンティパスをそそのかして処刑させたのでした。

 『新訳聖書』におけるサロメは母のラジコンでモブキャラなのですが、ワイルド『サロメ』はそんなサロメを男を惑わせる稀代の悪女として脚色しています。サロメを悪女として脚色するのは、前近代の絵画などからそうで、ワイルド独自の意匠ではないですが、サロメをヨハネに恋する女性としたのは独特の脚色です。

ファム・ファタール

 本作はサロメというファム・ファタールを描いた作品です。ビアズリーの「サロメ」挿絵も相まって、サロメのそうしたイメージを定着させていきます。

 ファム・ファタールとは人を狂わせる悪女のことで、本作のサロメはその代表格です。

 従来からこうした悪女の活躍を描く作品は多かったですが、ワイルドなどの時代になると、フェミニズムの勃興など女性の権利拡大や、娼婦からの性病の恐怖などが相まって、世紀末芸術以降、広く定着しました。

 例えばセイレーンなどは、よく悪女として描かれ、男を誘惑して破滅させる娼婦の象徴として描かれました。

物語世界

あらすじ

 ユダヤの王エロドは、自分の兄の前王を殺し妃を奪ったのでした。妃の娘の王女サロメに性的な眼差しを向けます。サロメは嫌がり、預言者ヨカナーン(ヨハネ)が閉じ込められている井戸に行きます。

 預言者との接触は王に禁じられているものの、サロメは色仕掛けで見張り番でシリアの青年を誑し、預言者を見ます。彼に恋をするものの、預言者は彼女の生い立ちをなじるばかりで、拒まれたサロメはヨカナーンに口づけすると誓います。

 エロドはサロメにダンスを要求し、何でもほうびにとらせると約束します。サロメはこれに7つのヴェールの踊りをして、エロドにヨカナーンの首を所望します。最初は断るエロドですが、サロメは聞き入れません。

 結局、エロドはヨカナーンの首をサロメにとらせます。銀の皿にのったヨカナーンの唇にサロメが口づけし、愛を語ります。これを見たエロドはサロメを殺させるのでした。

参考文献

・宮崎かすみ『オスカー・ワイルド – 「犯罪者」にして芸術家』

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