始めに
ワイルド『理想の夫』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
古典主義
ダブリン大学トリニティ・カレッジ、次にオックスフォード大学マグダレン・カレッジで学び、古典を学んだワイルドでした。
ワイルドは、ウォルター・ペイターとジョン・ラスキンが中心となる、ギリシア・ローマ文学やルネサンス芸術に着目する古典主義的ムーブメントから、多大な影響を受けました。
本作もクラシックなスタイルの戯曲作品です。
英国ルネサンス演劇
『真面目が肝心』『ウィンダミア卿夫人の扇』『理想の夫』『つまらぬ女』で四大喜劇と呼ばれています。
本作はシェイクスピアに代表される英国ルネサンス演劇的な、クラシックなスタイルの艶笑喜劇になっていて、すれ違いと誤解の織りなす喜劇にデザインされています。
タイトルになっている「理想の夫」というのは、チルターン夫人の潔癖症を象徴するもので、チルターン夫人は道徳的に理想的な夫であることを夫に常に要請していて、そのために2人の関係はすれ違ってしまいます。
チルターン夫人に学生時代からの敵であるチェヴァリー夫人がおり、彼女がロバート卿を脅迫しようとするなか、ロバートの友人でロバートの妹メイベルとの結婚を望むゴーリング卿が助け舟を出そうとするものの、ロバートはチルターン夫人とゴーリング卿の不貞を疑ってしまいます。しかしやがてゴーリング卿の機転に救われてチェヴァリー夫人から脅迫の種が奪われ、ロバートとチルターン夫人の絆は再生し、ゴーリングとメイベルも結ばれます。
物語世界
あらすじ
第一幕
グロブナー スクエアにあるロバート=チルターン卿の邸宅のオクタゴン ルーム。
下院議員で下級政府大臣のロバート卿と妻のチルターン夫人は、友人でダンディな独身男性のゴーリング卿、チルターンの妹メイベル、その他のゲストを含む集まりを主催しています。パーティーの最中、チルターン夫人の学生時代からの敵であるチェヴァリー夫人が、ロバート卿を脅迫してアルゼンチンに運河を建設するという詐欺的な計画に協力させようとします。彼女の亡き指導者で愛人であったアーンハイム男爵は、若いチルターンに内閣の機密を売るようそそのかし、そのおかげでアーンハイムは英国政府がスエズ運河会社の買収を発表する3日前に同社の株を購しました。アーンハイムへの賄賂はロバート卿の財産の基礎であり、チェヴァリー夫人はロバートがアーンハイムに宛てた手紙を彼の犯罪の証拠として持っています。
キャリアと結婚生活の両方が破滅することを恐れたロバート卿は、彼女の要求に従います。チェヴァリー夫人が、運河計画に関するロバート卿の心変わりをチルターン夫人にはっきりと伝えると、潔癖なチルターン夫人は、夫の過去も脅迫計画も知らず、ロバート卿にチェヴァリー夫人との約束を破るよう要求します。チルターン夫人にとって、彼らの結婚は「理想的な夫」、つまり彼女が私生活でも公生活でも崇拝できる模範的な配偶者を持つことを前提としていました。
第二幕
ロバート・チルターン卿の邸宅のモーニングルーム。
ゴーリングはチルターンに、チェヴァリー夫人と戦い、妻に罪を認めるよう促します。また、自分とチェヴァリー夫人はかつて婚約していたことも明かします。チルターンとの会話を終えた後、ゴーリングはチルターン夫人を脇に連れ出し、もっと寛容になるように遠回しに促します。
ゴーリングが立ち去ると、チェヴァリー夫人が現れ、昨晩失くしたブローチを探しています。チルターンが約束を破ったことに激怒したチェヴァリー夫人は、彼の妻に彼のことを暴露します。チルターン夫人は夫を非難し、許しません。
第三幕
カーゾン ストリートにあるゴーリング卿の家の図書館。
ゴーリング卿は、有罪の証拠となる手紙を焼却します。ゴーリングはチルターン夫人から助けを求める手紙を受け取る。ゴーリングがこの手紙を受け取ると、ちょうどそのとき、彼の父であるキャヴァーシャム卿が訪ねてきて、息子がいつ結婚するのかを尋ねた。続いてチルターンが訪れ、ゴーリングにさらなる助言を求めます。
一方、チェヴァリー夫人が突然やって来て、執事にゴーリングが待っている女性だと勘違いされ、ゴーリング卿の応接間に案内されます。待っている間に、チェヴァリー夫人はチルターン夫人の手紙を見つけます。チルターンは応接間にチェヴァリー夫人を見つけ、この二人の元恋人の間に情事があると確信し、家を飛び出します。
チェヴァリー夫人とゴーリング卿が対峙すると、彼女はある提案をします。彼女は、ゴーリング卿を愛していると主張し、チルターンの手紙と引き換えに結婚を申し出ます。ゴーリング卿は、求愛を俗悪な取引に変えて愛を汚し、チルターン家の結婚を台無しにしたとして、彼女を非難して断ります。
そして、彼は罠を仕掛けます。机の引き出しからダイヤモンドのブローチを取り出し、隠し鍵でチェヴァリーの手首に縛り付けます。ゴーリングは、その品物が彼女の手に渡った経緯を明かします。何年も前に従妹のメアリー・バークシャーから盗んだのでした。逮捕を逃れるため、チェヴァリーは、宝石をちりばめた手錠から解放してもらうために、罪を証明できる手紙と引き換えにしなければなりません。
ゴーリングが手紙を入手して燃やした後、チェヴァリー夫人は彼の机からチルターン婦人のメモを盗みます。彼女は復讐心から、表面上はチルターン夫人からゴーリングへのラブレターとしてそれをチルターンに送る計画を立てます。チェヴァリー夫人は勝ち誇って家を出ます。
第四幕
ゴーリング卿はメイベルにプロポーズし、受け入れられます。キャバーシャム卿は息子に、チルターンが下院でアルゼンチン運河計画を非難したと伝えます。チルターン夫人が現れ、ゴーリング卿はチルターンの手紙は破棄されたが、チェヴァリー夫人が手紙を盗み、それを使って結婚生活を破綻させようとしていると告げます。その時、チルターンがチルターン夫人の手紙を読みながら入ってくるものの手紙に宛名がないため、自分宛だと思い込み、許しの手紙として読みます。そして、夫婦二人は和解します。
チルターン夫人は当初、チルターンが政界を捨てる決断を支持することに同意するものの、ゴーリングは夫が辞職するのを認めないよう説得します。チルターンがゴーリングがチェヴァリー夫人と関係を持ったとまだ信じ、妹との結婚を断ると、チルターン夫人は昨夜の出来事と手紙の真相を説明します。チルターンは理解し、ゴーリングとメイベルは結婚を許可されます。
チルターン夫人は夫への愛を再確認し、夫婦は再生します。
参考文献
・宮崎かすみ『オスカー・ワイルド – 「犯罪者」にして芸術家』



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