始めに
ワイルド『幸福な王子』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
古典主義
ダブリン大学トリニティ・カレッジ、次にオックスフォード大学マグダレン・カレッジで学び、古典を学んだワイルドでした。
ワイルドは、ウォルター・ペイターとジョン・ラスキンが中心となる、ギリシア・ローマ文学やルネサンス芸術に着目する古典主義的ムーブメントから、多大な影響を受けました。
全体的にクラシックでウェルメイドなスタイルがワイルドの特徴です。
児童文学
本作は児童文学で、それゆえに普段のワイルド作品と違ってシニカルなテイストが抑えめで、利他や友愛を説く理想主義的な物語になっています。
街の自慢だった王子の像が、王子の博愛精神からみすぼらしくなって、取り壊されてしまう展開や、天国で王子とツバメがようやく幸せになる展開には象徴主義的な厭世的なリアリズムが垣間見えるかもしれません。
物語世界
あらすじ
ある街の柱の上に、「幸福な王子」と呼ばれる像があります。かつてこの国で、幸福な生涯を送りつつ、若くして死んだと王子を記念したものです。両目には青いサファイア、腰の剣の装飾には真っ赤なルビーがあり、体は金箔に包まれていて、心臓は鉛でした。
その像には、死んだ王子の魂が宿っており、ゆ自我を持っていることは、人々は知りません。王子は、かつて宮殿にいた頃には知らなかった、この町の貧しく不幸な人々の実態を知り、悲しんでいます。
渡り鳥でエジプトへ旅に出ようとしていたツバメが寝床を探し、王子の像の足元で寝ようとすると、突然上から大粒の涙が降ってきます。王子はこの場所から見える不幸な人々に自分の宝石をあげて欲しいとツバメに頼みます。ツバメは言われた通り王子の剣の装飾の美しいルビーを病気の子供がいる貧しい母親に届けます。
王子は片目のサファイアを飢えた若い劇作家に、もう片方を幼いマッチ売りの少女に持っていって欲しいと話し、ツバメは目が見えなくなると忠告するものの、この風景を見る方が辛い、と返されて、両目のサファイアを届けます。
街に残り、王子と共に過ごす覚悟をしたツバメは、街中を飛び回り、王子に色々な話を聞かせます。王子はツバメの話を聞き、まだたくさんいる不幸な人々に、自分の体の金箔を分け与えて欲しいと頼みます。
やがて冬が訪れ、王子はみすぼらしい姿になり、ツバメも衰弱します。死を悟ったツバメは飛び上がり、王子にキスをし、やがて彼の足元で力尽きます。その瞬間、王子の鉛の心臓は二つに割れます。
みすぼらしい姿になった王子の像は心無い人々に柱から取り外され、溶鉱炉で溶かされますが、鉛の心臓だけは溶けず、ツバメと一緒にゴミ溜めに捨てられます。
天国では神が、天使にこの街で最も尊きものを二つ持ってきなさいと命じます。天使はゴミ溜めから王子の鉛の心臓とツバメの骸を持ってきます。神は天使を褒め、そして王子とツバメは楽園で幸福になるのでした。
参考文献
・宮崎かすみ『オスカー・ワイルド – 「犯罪者」にして芸術家』




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