始めに
プーシキン「スペードの女王」解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ロマン主義
ホメロス、ウェルギリウスなどのギリシア・ローマ文学、タッソー、ラブレー(『ガルガンチュアとパンタグリュエル』)などルネサンス文学、ラシーヌ、コルネイユ、モリエール、ヴォルテールなどの古典主義、ルソーのロマン主義に早くから親しみ、ロマン主義を展開したプーシキンです。
中途からシェイクスピアの研究をも始め、影響を受けました。シェイクスピアにも『テンペスト』『夏の夜の夢』など幻想文学がありますが、本作も幻想文学です。また『マクベス』のように予言に裏切られる主人公を描きます。
本作はまた、ホフマンの作品を思わせる幻想的なストーリーです。
大まかな筋
大まかなプロットとしては、主人公ゲルマンが賭け事に取り憑かれていて、必勝の手がありそれをアンナ=フェドトブナ伯爵夫人が知っているという噂を聞いて、夫人を訪ねるものの、ゲルマンは夫人を銃で脅迫して聞き出そうとしてしまったことから、彼女をショックで死なせてしまいます。
その後、彼女の霊が訪ねてゲルマンに必勝の手を教え、それに従って勝負で勝ち続けていたものの、最後におそらくは死んだ老夫人の恨みによって、手札のエースがスペードの女王に変わってしまっていて、大敗します。そして精神を壊してしまうという内容です。
モデル
作品に現れる伯爵夫人は、ナタリア=ペトローヴナ=ゴリツィナ公爵夫人がモデルです。 伝説によると、ゴリツィナはギャンブルで成功し、その孫がトランプで大金を失い、彼女のところに金を乞いに来たとき、ゴリツィナは代わりに、パリでサンジェルマン伯爵が彼女に教えた秘密の3枚の手を彼に明かします。
物語世界
あらすじ
工兵士官であるゲルマンは、騎兵士官トムスキイの家で連夜開かれるカルタ勝負を熱心に見守りますが、自分では金を賭けようとはしません。トムスキイに言わせれば、ゲルマンよりも自分の祖母アンナ=フェドトブナ伯爵夫人が賭けをしないことのほうが奇妙でした。伯爵夫人はかつてカルタで大きく負けたものの、ある人から必勝の手を教わり、失った大金を取り戻したのでした。また同じように大負けした青年を哀れに感じ、その策を授けて勝たせたそうです。それを聞いたゲルマンは興奮するものの、自分にとっての必勝の手は節度なのだと思い直します。
思索にふけりながら歩き、ふと顔を上げた先は伯爵夫人の屋敷でした。ゲルマンは覚悟を決めます。伯爵夫人にいいように使われる娘リザヴェータをかどわかし、逢い引きを装って館に忍び込み、伯爵夫人の寝室にやってきます。ゲルマンは勝つための手を教えろと迫るものの、伯爵夫人は「あれは笑談だ」と話したきり、無言です。ゲルマンは懐から拳銃をとりだして突きつけますが、伯爵夫人は恐怖に戦き、そのまま亡くなります。
リザヴェータの手引で館を脱出し、その後の伯爵夫人の葬式にも顔を出したゲルマンはある夜に目を覚まします。ゲルマンの枕元に、あの伯爵夫人が姿を現したのでした。驚くゲルマンに、老女は「三トロイカ」「七セミョルカ」「一トウズ」の順でカルタを張れば勝てると告げます。
必勝の策を得たゲルマンは、カルタで大金持ちとなったチェカリンスキイのテーブルにつきます。「三」に有るだけの金を賭け、ゲルマンは勝ちをおさめます。次の日は「七」に有るだけの金を賭け、鮮やかに勝ちます。三度目の勝負の日には、噂からたくさんの観衆が集まります。
チェカリンスキイは顫える手に札を配ります。右手には『女王』が、左手には『一』があります。
「『一トウズ』がやった!」とゲルマンは言って、持ち札を起こしますが、女王ダーマの負けとチェカリンスキイが指摘します。
ゲルマンは愕然と自分の手を見ます。張った筈の『一』は消えて、開いたのはスペードの『女王』でした。
そのとき、スペードの『女王』が眼を窄めて、笑みを漏らします。それはあの老婦人にそっくりでした。
「あいつだ!」とゲルマンは絶叫します。
ゲルマンは精神が壊れ、精神病院に入れられます。何を聞かれても早口で「三トロイカ」「七セミョルカ」「一トウズ」、「三トロイカ」「七セミョルカ」「女王ダーマ」と呟くだけになりました。
参考文献
・池田健太郎『プーシキン伝』




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