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イプセン『民衆の敵』解説あらすじ

イプセン
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始めに

イプセン『民衆の敵』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

環境問題と個人の戦い

 物語はトーマス=ストックマン医師が町の新しい温泉で深刻な汚染問題を発見し、この真実を公表するという勇気ある決断は、町の有力な政治家である兄のペーター=ストックマンを含む地元の指導者たちから激しい反発を招きます。

 タイトルになっている「民衆の敵」とはトーマスのことです。会議において、真実の考えは常に政府の愚かさと古典的自由主義者のせいで非難されるものの、こんなやつらは根絶されてもかまわないと、温泉街の経済を守ろうとする民衆を糾弾したために、「民衆の敵」と周囲から叫ばれてしまいます。

 世間の不正義に抗うことで社会の中で孤立し、それでも孤独に正義を追求しようとするトーマスを描きます。

モデル

 悪役であるピーター=ストックマンはイプセン自身の叔父であるクリスティアン=コルネリウス=パウスがモデルです。イプセンの故郷であるシーエンでの政治的影響力と権威的な立場がモデルになっています。

問題劇

 批評家フレデリック・ボアズが、ヘンリック=イプセン(『民衆の敵』『人形の家』)の作品を問題劇と評し、それはシェイクスピアに転用されてひろく知られる語となりました。

 イプセンに対して言われていた「問題劇」というのは、19世紀フランスのウェルメード=プレイの伝統であるプロットと形式重視の恋愛劇の傾向に反した、社会性を重視し古典的形式に必ずしものっとらない自由なスタイルの傾向に言及するものでした。シェイクスピアについて言われる「問題劇」というのは、社会批判的テーマに着目していわれるのでなく、単に悲劇と喜劇のジャンルに則さない内容について特徴づけるもので、まず三一致の法則に則さないロマン主義的スタイルがイプセンと重ねられた感じです。

物語世界

あらすじ

第一幕

 トーマス=ストックマン博士は、小さな町に最近開いた温泉の医療責任者です。ストックマン博士と妻のカトリーンが主催するディナーパーティーから始まります。ディナーのゲストには、ストックマン博士の弟ピーター 市長とホフスタッドという新聞編集者)がいます。

 ピーターは、ストックマン博士が温泉について書いた記事をホフスタッドが印刷しようとしているという噂についてストックマンに尋ねます。ストックマン博士はこの記事の内容をあいまいにはぐらかし、ピーターは立ち去ります。

 ストックマン博士の娘ペトラは、温泉の水が細菌に汚染されているというストックマン博士の疑いを裏付ける検査結果を記載した手紙を持ってきます。ホフスタッドは、真実を明らかにすると温泉が閉鎖され、町の経済に悪影響が出る可能性があるものの、ストックマン博士の記事を印刷することに同意します。

第2幕

 翌朝、ストックマン博士の義父であるモーテン=キイルが立ち寄ります。ホフスタッドと印刷工のアスラクセンは、博士への誓いを新たにし、感謝の意を表すために訪問します。新聞社は町の政府と対決し、腐敗を明らかにしようとしています。

 ピーターが到着し、ストックマン博士に、もしこの記事を出版すれば、町の破滅に責任を負わされると告げます。ピーターはストックマン博士に、もっと広い視野で考え、記事を撤回し、穏便に問題を解決するよう促します。ストックマン博士は拒否し、ピーターは博士とその家族に恐ろしい結果がもたらされると警告します。

第3幕

 新聞社では、ホフスタッドと編集長のビリングが、ストックマン博士の記事を掲載することの賛否について話し合っています。ストックマン博士がやって来て、記事を掲載するように言うものの、ホフスタッドらは政府を暴露することにどれほどの価値があるのか​​疑問を持ち始め、むしろ経済的悪影響のほうが結論付けます。ピーターは、温泉の安全性について住民を安心させることを意図した独自の声明を持って現れ、新聞社はそれを掲載することに同意します。

 絶望したストックマン博士は、新聞に掲載する必要はないと決め、この戦いは自分で戦うと決めます。博士は町の集会を招集し、そうして情報を広めようとします。カトリーン=ストックマンは、夫の味方をします。

第4幕

 ホルスター大尉の家で開かれた会議で、ストックマン博士は町民に水に関する報告書を読もうとします。ビリング、家族、市長、アスラクセン、ホフスタッドが出席しています。尊敬される市民であるアスラクセンが会議の議長に選出されます。ストックマン博士の発言許可の投票が行われようとしたものの、そのときストックマン博士は別の話題があると言います。そして、社会の進化について熱弁をふるいます。新しい真実の考えは常に政府の途方もない愚かさと結束した古典的自由主義者の大多数の狭量さのせいで非難されるが、こんなやつらは根絶されてもかまわないと言います。

 聴衆はこうした非難に侮辱されたと感じ、怒ります。会議の終わりには聴衆は「彼は民衆の敵だ!」と何度も叫んびます。

 ストックマン博士は義父のキールに、毒物のほとんどが浴場に漏れているのは彼の皮なめし工場だと言います。

第5幕

 翌朝までに、ストックマン博士の家、特に書斎は、町の人々がいやがらせしために、ひどく損傷していました。家主は彼らを家から追い出そうとします。ペトラは進歩的な意見を持っているという理由で教師の職を解雇されました。ピーターは、契約を解除する浴場の理事会からの手紙と、この町で二度とストックマン博士を雇ってはならないという住宅所有者協会の決議書を持って家にやってきます。

 ストックマン博士の義父、モートン=キールがやって来て、娘と孫に残すつもりだったお金で、バスの株を買ったばかりだと告げます。キールは、これで義理の息子が運動をやめ、温泉が破産せず、家族の将来が安泰になることを期待します。

 ストックマン博士はキールの脅しをはねつけ、数か月町を離れるようにというピーターのアドバイスも無視します。カトリーンは、町の人々が博士を町から追い出すのではないかと心配しているとストックマン博士に告げます。ストックマン博士は、自分は町に留まるつもりだと答えます。最後に、自分は一人でも立ち向かえるので、町で一番強い男だと宣言します。

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