始めに
T.S.エリオット『荒地』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
エリオットの作家性
エリオットが自分自身の声を見つける最大のきっかけとなったのが、19世紀後半のフランス詩人たちです。ジュール=ラフォルグはエリオットが最も直接的に影響を受けた一人です。『プルーフロックの恋歌』に見られる、皮肉で冷笑的なトーンや、日常的な言葉と高尚なイメージを混ぜ合わせる手法は、ラフォルグから学びました。都会の風景や倦怠を詩の主題にできることをボードレールはエリオットに示しました。
エリオットにとって、ダンテは最も尊敬する師であり、生涯を通じての指標でした。ダンテの簡潔で正確な描写と、精神的な深淵を高く評価しました。『荒地』や『四つの四重奏』には、ダンテからの引用やオマージュが至る所に散りばめられています。
エリオットは、イギリス文学の伝統を再評価する批評家としても活動しました。ジョン=ダンの感情と知性を分離させずに表現する形而上詩を高く評価しました。エリオットの有名な概念感性の分裂は、ダン以降の詩人が知性と感情を切り離してしまったという批判から生まれています。ウェブスターやターナーなど、エリザベス朝・ジャコビアン時代の劇作家たちの、暗く、情熱的で、鮮烈なイメージ表現に惹かれました。
エリオットは『荒地』をパウンドに捧げました。
F.H.ブラッドリーに関する博士論文をエリオットは書いています。彼の経験に関する哲学は、エリオットの客観的相関物の考え方に影響を与えました。
ハーバード大学でサンスクリット語を学んだ彼は、東洋の宗教的思考にも深く通じており、『荒地』の結びなどでその影響が見られます。
荒地としてのイギリス
第一次世界大戦という未曾有の惨劇を経て、当時のヨーロッパ社会は「価値観の崩壊」に直面していました。ロンドンを行き交う人々は、ただ物理的に生きているだけで、魂は死んでいるように描かれます。性愛や人間関係が、ただの事務的な作業や暴力的なものとして描かれ、そこに救いや結びつきがなくなっている様子を強調しています。
エリオットは、ジェームズ=フレイザー『金枝篇』やジェシー=ウェストンの聖杯伝説研究から強い影響を受けています。王が病に倒れ、その土地も不毛の地となってしまったという漁夫王の伝説を、現代社会の投影として使っています。過去の神話では死と再生のサイクルがありましたが、現代の『荒地』では、4月は残酷な月として描かれます。なぜなら、死んでいれば痛みを感じないのに、無理やり命を呼び起こされるからです。
この詩は、一貫したストーリーではなく、多くの言語(英語、フランス語、ドイツ語、サンスクリット語など)や過去の文学からの引用の断片で構成されています。詩の終盤にあるこの言葉通り、崩壊した文明の瓦礫の中から、過去の偉大な知恵の破片を拾い集めて、なんとか自分を支えようとする苦闘が表現されています。
物語世界
あらすじ
第一次世界大戦後のロンドンを舞台に、予言者タイヤシアス(ギリシャ神話の盲目の予言者)の視点を通して、5つの場面が展開されます。
第1部 死者の埋葬:有名な「4月は残酷極まる月」という一節で始まります。冬の眠りから無理やり目覚めさせられる生への苦痛が描かれます。貴族の昔語り、不吉なタロット占い、そして死体のような群衆が橋を渡る非現実の都市ロンドンの光景が描写されます。
第2部 チェスの一局:上流階級と下流階級、二つの対照的な男女の場面が描かれます。豪華な部屋でヒステリックに問いかける女と、何も答えない男。一方、パブでは避妊や中絶といった殺伐とした世間話にふける女たち。どちらの世界でも、愛は枯れ果てています。
第3部 火の説教:聖なるテムズ川が汚れ、情欲だけが空虚に繰り返される様子が描かれます。盲目の予言者タイヤシアスが、タイピストと事務員の情熱のない情事をただ眺めている場面。かつての高潔な愛は消え、機械的な性交渉だけが残っています。
第4部 水による死:水死したフェニキア人の商人フレバスが登場します。彼は世俗的な利益も苦しみもすべて忘れ、海の底へと沈んでいきます。これは滅びであると同時に、一種の浄化のようにも見えます。
第5部 雷のいうこと:不毛の地を抜け、水を求めて岩だらけの山を越える精神的な旅が描かれます。東方のヒマラヤの空に雷鳴が響き、古代インドの言葉(サンスクリット語)が聞こえてきます。「与えよ、共感せよ、自制せよ」。世界が崩壊していく中で、詩人は釣り糸を垂らし、かろうじて平和を祈りながら詩を終えます。




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