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アンドレ=マルロー『人間の条件』解説あらすじ

アンドレ=マルロー
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始めに

 アンドレ=マルロー『人間の条件』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造 

マルローの作家性

 マルローの根底にある神なき世界でいかに生きるかという実存的な問いは、諸々の思想家から強く影響を受けています。


 特にニーチェはマルローにとって最も重要な哲学者の一人です。神の死のあとに来る超人思想や、運命に立ち向かう意志の力、そして悲劇的肯定といった概念は、マルローの描く英雄像の核となりました。​パスカルはキリスト教思想家ですが、マルローはパスカルが描く「人間の悲惨(無限の空間に放り出された人間の孤独)」に強く共鳴しました。


​ 革命家、テロリスト、聖人といった極端なキャラクターたちが、自らの思想を賭けて激突するドストエフスキーの小説世界は、マルローの初期作品(のモデルとなりました。コンラッドにおける東南アジアなどの異国を舞台にした冒険と、その裏にある虚無感や道徳的葛藤を描く手法は、マルローの冒険家としての側面にも繋がっています。またマルローはスタンダールのエネルギーと行動する主人公を愛しました。


​ 若き日のマルローにとってジッドは精神的な師のような存在でしたが、次第に別の道を歩みます。ほかに『西洋の没落』で知られるシュペングラーの文明循環論は、マルローの歴史観に大きな影響を与えました。

人間の条件とは

​ ​マルローにとって「人間の条件」とは、人は必ず死に、本質的に孤独であるという逃れられない宿命を指します。神という救いがない世界で、人間はただの消耗品にすぎないのかを問うています。登場人物たちは、自分がどう死ぬか、あるいは何のために命をかけるかを選択することで、ただの生物から人間になろうとします。 


​ 小説の登場人物たちは、それぞれ異なる方法で虚無から逃れようとします。チェンは殺人と自己犠牲を通じて、孤独を圧倒的な恍惚に変えようとします。キヨは個人の孤独を組織や理想の中に溶け込ませ、歴史の一部になることで意味を見出そうとします。フェラルは他者を支配することで、自分の存在を証明しようとします。ジゾールは阿片で現実の苦痛から逃避し、内面の世界へ引きこもります。

尊厳と連帯

 物語で最も美しく描かれるのが、連帯(同志愛)です。結局、人は一人で死にますが、誰かと目的を共有し、互いを思いやる瞬間にだけ、運命の冷たさを打ち破ることができるという希望が示されています。


​ ​人間を人間にしているものは何かという問いへの答えとして、マルローは尊厳を挙げます。人間を単なるモノとして扱う権力や運命を拒むこと。​たとえ敗北すると分かっていても、自分の意志で立ち向かう姿勢そのものが、人間に神聖な輝きを与えると説いています。

物語世界 

あらすじ

 物語は、テロリストのチェンが暗殺を実行する緊迫したシーンで幕を開けます。

 共産党員たちは、自分たちの軍隊に武器を渡すため、船上の武器を奪う計画を立てます。キヨ(ハーフの青年リーダー)やロシア人のカトフを中心に、上海でのゼネラルストライキと武装蜂起が成功し、街は革命の熱狂に包まれます。

 ​しかし、勝利の喜びは長く続きません。右派の蒋介石が共産党を疎ましく思い、彼らを武装解除して弾圧しようと画策します。共産党の上層部は蒋介石に従えという現実的な命令を下しますが、現場のキヨたちはその決定に絶望し、自らの信念のために戦い続けることを選びます。

​ ​蒋介石による凄惨なクーデター(上海クーデター)が始まり、革命家たちは次々と捕らえられていきます。​チェンは蒋介石の暗殺を試みますが、自爆テロにより散ります。キヨは捕らえられ、毒薬(青酸カリ)を飲んで自決します。彼は自分の死に意味を持たせることで、運命に勝利しようとしました。カトフは自分用の毒薬を、恐怖に震える仲間に譲り、自らは生きたまま機関車の火室に投げ込まれるという、最も過酷な死を受け入れます。

​ ​生き残ったキヨの父、オールド=ジゾールは、息子の死に絶望しながらも日本へ逃れます。革命は失敗に終わり、多くの命が失われましたが、彼らが示した「連帯」と「尊厳」の記憶だけが歴史の中に刻まれることになります。

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