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ジョージ=エリオット『ダニエル・デロンダ』解説あらすじ

ジョージ=エリオット
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始めに

ジョージ=エリオット『ダニエル・デロンダ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ジョージ=エリオットの作家性

 エリオット(メアリー=アン=エヴァンズ)は、ヴィクトリア朝を代表する作家です。


​ ​ウォルター=スコットのロマン主義と歴史劇に刺激されました。ワーズワースのロマン主義における神秘主義に影響されました。​ゲーテからの刺激も大きいです。


​ エリオットは当初、敬虔なキリスト教徒でしたが、神ではなくヒューマニズムに救いを見出すようになります。ダヴィッド=シュトラウス『イエスの生涯』をエリオットが英訳したことが、彼女の信仰心に決定的な変化をもたらしました。​ルートヴィヒ=フォイエルバッハ『キリスト教の本質』も彼女が翻訳して影響されました。​オーギュスト=コントの実証主義の提唱者もリアリズムのベースです。


​ 他に​ジョージ=ヘンリー=ルーイスや​ハーバート=スペンサーから科学的知見を吸収しました。

ロマン主義的主題

 ​この小説の最も革新的な側面は、主人公ダニエル=デロンダが自分の出生の秘密を探り、最終的にユダヤ人としてのアイデンティティを受け入れる過程にあります。デロンダは自らのルーツがユダヤ系であることを知り、当時イギリス社会で軽視されていたユダヤ文化やシオニズムに身を投じます。


​ 当時のヴィクトリア朝社会における反ユダヤ的な偏見を批判し、普遍的な人間愛と特定の民族への忠誠をどう両立させるかを問いかけています。


​ ​もう一人の主人公、グウェンドレン=ハレスの物語は、デロンダの物語とは対照的な内面のドラマです。美しく自信過剰だったグウェンドレンは、冷酷な貴族グランドコートとの不幸な結婚を通じて、自分の無力さと世界の厳しさを知ります。彼女は絶望の中でデロンダを精神的な導き手とし、自己中心的な考えを捨てて、他者への共感やより広い世界に目を向けるようになります。

 ​デロンダは曖昧な紳士としての生活に満足できず、社会に貢献できる大きな目的を探していました。ユダヤ人としてのルーツの発見は、彼に生きる目的を与えます。運命に翻弄されるだけでなく、与えられた環境の中でいかに主体的に自分の道を選ぶか、という近代的な個人のあり方が問われています。


​ 本作は当時のイギリス上流・中流階級の浅薄さや、金銭や地位に執着する文化を鋭く批判しています。グウェンドレンの苦境を通じて、当時の女性がいかに経済的に無力で、結婚という手段でしか生きる道がなかったかという社会構造の限界を浮き彫りにしています。古いイギリスの地主社会の停滞と、ユダヤ的精神的な新しいエネルギーの対比が描かれています。

物語世界

あらすじ

 物語はドイツの温泉地ルブロンの賭博場から始まります。自信に満ちた美女グウェンドレンは、全財産を賭けて負け続けます。その様子を冷ややかに、しかし憐れみを持って見つめる青年デロンダ。彼女は彼に反発を感じつつも、強烈に意識します。


​ 負けた彼女が家宝のネックレスを質に入れますが、翌朝、何者か(デロンダ)によって買い戻され、彼女の手元に匿名で届けられます。これが、彼が彼女の道徳の監視者となる最初のきっかけです。


​ ​イギリスにいたころの、グウェンドレンの過去が語られます。傲慢で退屈を嫌う貴族グランドコートが彼女に近づきます。彼は自分を服従させない唯一の女として彼女を支配することに興味を持ちます。順調に見えた婚約ですが、グウェンドレンは彼の愛人リディア=グラシャーに呼び出されます。リディアには彼との間に4人の子がおり、結婚しないでほしいと懇願されます。恐怖を感じたグウェンドレンはドイツへ逃亡します(これが冒頭の賭博場のシーンに繋がります)。


​ 実家が破産し、教職に就くか貧困に耐えるしかなくなった彼女は、リディアとの約束を破り、富と自由のためにグランドコートとの結婚を決意します。


​ ​同じ頃、ロンドンでのデロンダの動向です。デロンダは、父親から売られそうになり絶望して入水自殺を図ったユダヤ人少女ミラ=ラピドスを救います。ミラの家族を探すうちに、デロンダはロンドンのユダヤ教社会に深く入り込みます。そこで出会ったモードカイという結核を患う賢者は、デロンダの目を見てお前こそが私の魂を継ぎ、ユダヤの民を導く者だと確信し、彼に教育を施します。


​ デロンダは博愛主義者ですが、自分が何者か分からない不安を抱えています。しかし、他人の苦しみに深く共感してしまう性質が、彼を二人の女性の運命に深く関わらせます。


​ 結婚したグウェンドレンを待っていたのは、グランドコートによる精神的な虐待でした。彼は彼女の反抗心を挫くことを楽しみ、彼女を籠の鳥のように支配します。グウェンドレンは、リディアとの約束を破った罪悪感と夫への憎しみに震えます。彼女は社交の場でデロンダに再会するたび、彼を司祭のように慕い、自分の罪を告白して精神的な均衡を保とうとします。


​ 夫婦関係が修復不能になる中、グランドコートは彼女を連れてイタリアへヨット旅行に出ます。そこで偶然、デロンダも自分の出生の秘密を知るために母に呼ばれ、ジェノヴァを訪れていました。デロンダは実母、かつての歌姫アルマリーニに会います。彼女はユダヤ人としての制約を嫌い、息子をイギリスの紳士として育てるようマリンジャー卿に託したことを告げます。デロンダは自分が純粋なユダヤ人であることを誇りを持って受け入れます。


​ 海上でグランドコートが海に転落します。グウェンドレンは夫を助けるためのロープを投げるのを一瞬ためらいました。彼が沈んだ後、彼女は海に飛び込みますが、夫は死にます。救助されたグウェンドレンは、デロンダに私は彼を殺したも同然だと泣き崩れます。デロンダは彼女を慰め、過去を悔いて善く生きるよう励まします。


​ グウェンドレンはデロンダが自分を支えてくれると期待していましたが、彼は自分がユダヤ人であること、そしてミラと結婚して東方へ旅立つことを告げます。


​ 彼女は激しい衝撃を受けますが、最終的に彼の旅立ちを祝福する手紙を書きます。「私はあなたのおかげで、自分だけの小さな世界から抜け出すことができた」と。デロンダはミラの兄モードカイの最期を見届けた後、パレスチナを目指して旅立ちます。

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