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グレアム=グリーン『情事の終わり』解説あらすじ

グレアム=グリーン
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始めに

 グレアム=グリーン『情事の終わり』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

グレアム=グリーンの作家性

 グレアム=グリーンはカトリックの中間小説的作家です。​その精神的な柱となったのがフランスの作家モーリアックです。 モーリアックはキリスト教の中心には罪人がいるという視点で人間を描きました。聖人ではなく、救いがたい罪人の中に神の慈悲があるというグリーンの逆説的な信仰観は、モーリアックの影響が見えます。

 またグリーンはマージョリー=ボウエン『ミラノの毒蛇(The Viper of Milan)』を読んで、悪が勝利し、完璧な裏切りが成功する結末に衝撃を受けました。ここから主題について影響をうけました。


​ ​グリーンはヘンリー=ジェイムズの写実主義、スティーブンスンのロマン主義にも刺激されました。またスパイ小説やリアリズム要素などはコンラッドからの影響があります。

神と恋

​ ​主人公ベンドリクスは、愛人サラを奪った神に対して激しい憎悪を抱きます。しかし、グリーンはこの憎しみこそが信仰の裏返しであることを描いています。ベンドリクスが神を呪うのは、彼が心の底で神の存在を認め、神を恋敵として意識しているからです。神を激しく憎む者は、すでに神のすぐ近くにいるという逆説的な思想が貫かれています。

 ​この物語は、夫・妻・愛人の三角関係として始まりますが、途中でその構造が「男・女・神」という奇妙な三角関係へと変貌します。ベンドリクスの愛は相手を独占したいという強い所有欲に基づいています。サラの誓約によって、ベンドリクスは目に見えない神に敗北を喫します。神は、人間から愛する者を奪い去る無慈悲で嫉妬深い存在として描かれています。

​ またこの作品は、グリーン自身が実際に経験したキャサリン=ウォルストンとの不倫関係が色濃く反映されています。そのため、ベンドリクスの抱く嫉妬や苦しみには生々しい痛みが宿っています。


​ 物語の後半では、聖人伝のような奇跡の要素が加わります。奔放な不倫をしていたサラが、苦悩の末に一種の聖性を帯びていくプロセスが描かれます。

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物語世界

あらすじ

​ 作家のモーリス=ベンドリクスは、小説の資料集めのために、公務員ヘンリー=マイルズに近づきます。しかし、ヘンリーの妻サラと出会い、二人は激しい不倫の恋に落ちます。ベンドリクスはサラを深く愛しますが、同時に激しい嫉妬に狂い、彼女を独占できない苦しみに悶えます。


​ ​物語の転換点は、第二次世界大戦中のロンドン大空襲です。二人がベンドリクスの部屋で密会していた際、V1飛行爆弾が直撃します。ベンドリクスは下敷きになり、意識を失います。

​ サラは彼が死んだと思い込み、絶望の中で、それまで信じていなかった神に祈ります。​「もし彼を生き返らせてくれたら、二度と彼には会いません。彼をあきらめます」と。
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 すると、死んだと思われたベンドリクスが、奇跡的に無傷で部屋に入ってきます。サラは誓いを守るため、理由も告げずに彼の前から姿を消しました。

 ​それから2年後。サラに捨てられたと思い込み、彼女を憎み続けていたベンドリクスは、偶然ヘンリーと再会します。ヘンリーから妻が浮気をしているようだと相談されたベンドリクスは、嫉妬と復讐心から、探偵を雇ってサラの素行を調査させます。​彼は、サラが今度は誰と会っているのかを突き止めようとしたのです。

 ​探偵が入手したサラの日記を盗み読んだベンドリクスは、衝撃の事実を知ります。サラには新しい愛人などおらず、彼女が戦っていた相手は神だったのです。日記には、ベンドリクスを愛しながらも、神との約束を破れずに苦悶する彼女の魂の叫びが綴られていました。

 ​ベンドリクスは彼女を連れ戻そうとしますが、病弱だったサラは肺炎で亡くなってしまいます。彼女の死後、ベンドリクスの周囲で「奇跡」と思われる出来事が次々と起こります。彼は神の存在を認めざるを得なくなりますが、愛する人を奪った神をどうしても許すことができません。

 ​物語は、ベンドリクスが神に向かって私を放っておいてくれと絶望的に願う独白で幕を閉じます。

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