始めに
コレット『ジジ』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
コレットの作家性
ウィリー(ヘンリー=ゴーティエヴィラール)は最初の夫であり、コレットにペンを取らせた張本人です。当時の流行作家、プロデューサーであり、コレットに少女時代の思い出を書けと命じました。母シドはコレットの文学においてインスピレーションの源です。『シド』や『わが母の家』に描かれる母の姿は、彼女の倫理観や審美眼の土台となっています。
またコレットはバルザックを非常に崇拝しており、彼の写実主義から多くを学んだと言われています。「欲望」「金銭事情」「物」に対する緻密な描写は、バルザック的な写実主義の流れを汲んでいます。
プルーストはライバルであり、友人でもありました。ほかにピエール=ロティは当時のフランスで人気を博した、エキゾティズム漂う作家で影響を受けました。
ジジの成長
ジジは、代々高級娼婦(クルチザンヌ)を家業とする家庭に育ちました。彼女の祖母や伯母は、ジジを金持ちの男を捕まえるための商品として完璧に教育しようとします。しかしジジはやがて決められたレールを拒否し、自分の意志で結婚という、家系の中では異端とされる選択を勝ち取ろうとします。ジジは、宝石の目利きやマナーなどの教育を冷ややかに見つめ、大人の世界の欺瞞を鋭く指摘します。
ジジが持つありのままの子供らしさが、洗練されているが退屈な社交界のルールに勝利する物語です。
裕福なプレイボーイであるガストンは、着飾った女たちの虚飾に疲れ果てていました。彼がジジに惹かれたのは、彼女がゲームを仕掛けず、ただの友人として接してきたからです。コレットは作られた美しさよりも、生命力にあふれた自然な姿に最高の価値を置きました。
この作品は、19世紀末から20世紀初頭のパリにおける、愛が一種のビジネスであった側面を冷徹に描いています。祖母たちがガストンと交渉するのは、ジジの価格や生活の保証です。
ジジは、自分が単なる贅沢な所有物になることを拒みます。この拒絶こそが、相手を所有欲から真実の愛へと変えさせるトリガーとなります。
『ジジ』は、無邪気な少女が女としての自覚を持ち、大人の階段を駆け上がる一瞬の煌めきを描いた成長物語でもあります。短いスカートでトランプ遊びをしていた少女が、コルセットを締め、夜会服を着こなす肉体的・社会的な変化に伴う戸惑いと覚悟が、物語の緊張感を生んでいます。
物語世界
あらすじ
主人公のジジは、代々名高い高級娼婦を輩出してきた一家に育つ15歳の少女です。鳴かず飛ばずのオペラ歌手である母、現実的な祖母、そしてかつて社交界に君臨した大伯母のアリシアに囲まれます。
ジジは放課後、伯母アリシアの家で「プロの愛人」としての英才教育を受けます。宝石の鑑定、葉巻の切り方、ロブスターの食べ方。すべては、いつか金持ちのパトロンに高く買ってもらうための修行でした。
一家の古い友人であるガストン=ラシャイユは、莫大な富を持つ砂糖王です。ガストンは洗練されたパリの女性たちとの虚飾に満ちた恋愛に疲れ果てていました。は子供っぽく、飾り気のないジジを妹のように可愛がり、彼女とトランプ遊びをして過ごす時間だけが心の安らぎでした。
ある日、ガストンはジジが驚くほど美しい女性に成長していることに気づきます。彼は彼女を自分の愛人として迎えたいと家族に申し出ます。祖母と伯母アリシアは、これを千載一遇のチャンスと捉え、ガストンと契約条件(手当や宝石、生活保障など)の交渉を始めます。ジジはまるで高価な競走馬のように扱われます。
しかし教育に従順だったはずのジジが、ガストンの申し出を真っ向から拒絶します。愛人になれば、いつか飽きられて捨てられ、スキャンダルの種になり、新聞に載り、惨めな思いをするから、今のまま、楽しくトランプをしていたいといいます。
愛人になるのが最高の幸せと教え込んできた家族や、金で何でも手に入ると思っていたガストンにとって、彼女の自尊心に基づいた拒絶は衝撃的なものでした。
ジジの拒絶を受け、ガストンは自分が彼女を単なる遊び相手としてではなく、一人の人間として、そして心から愛していることに気づきます。ガストンは数日後、正装して再び一家を訪れます。そこで彼が口にしたのは、愛人の契約ではなく結婚の申し込みでした。
高級娼婦の家系から「正妻」が出るという、当時の社交界では前代未聞の結末を迎え、物語はハッピーエンドで幕を閉じます。




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