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シェイクスピア『尺には尺を』解説あらすじ

シェイクスピア
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始めに

 シェイクスピア『尺には尺を』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

典拠

 本作には幾つか種本があります。

 チンティオの『ヘカトミーティ』に入っている「エピティアの話」の影響があります。シェイクスピアは『オセロー』でもこれに参照しています。「エピティアの話」では、イザベラにあたる人物はアンジェロにあたる人物と性交渉を強要され、兄まで殺されます。

 またジョージ・ウェットストンの『Promos and Cassandra(プロモスとカサンドラ)』から影響があります。ウェットストンの方もチンティオからストーリーを採っていて、喜劇テイストとベッドトリックを加えていて、こちらの作品からのほうが本作は影響がより顕著にあります。

タイトル

 題名は新約聖書の『マタイによる福音書』から取っているとされ、「あなたが人を裁く同じ方法であなたは裁かれ、あなたが使う尺であなたは計られるだろう」というフレーズが、ちょうど悪役のアンジェロに対する風刺になっています。

問題劇

 一般に『終わりよければ全てよし』『尺には尺を』『トロイラスとクレシダ』の3作を問題劇と呼びます。しばしば『ハムレット』『冬物語』『アテネのタイモン』『ヴェニスの商人』などをも含めます。

 この用語は、批評家フレデリック=ボアズが、ヘンリック=イプセン(『民衆の敵』『人形の家』)の作品を評した問題劇というタームをシェイクスピアに転用したもので、悲劇や喜劇の枠に一致しない、ジャンルとして両義的な要素をはらんでいる傾向のシェイクスピア作品についていう概念です。

 イプセンに対して言われていた「問題劇」というのは、19世紀フランスのウェルメード=プレイの伝統であるプロットと形式重視の恋愛劇の傾向に反した、社会性を重視し古典的形式に必ずしものっとらない自由なスタイルの傾向に言及するものでした。シェイクスピアについて言われる「問題劇」というのは、社会批判的テーマに着目していわれるのでなく、単に悲劇と喜劇のジャンルに則さない内容について特徴づけるもので、まず三一致の法則に則さないロマン主義的スタイルがイプセンと重ねられた感じです。

 本作が問題劇たる所以は、ひとえにそのラストにあり、喜劇ではあるものの公爵ヴィンセシオはイザベラに結婚を申し込むのに対して、無言で答えます。無言の同意ととるのが自然ですが、そうでない解釈も可能なので、含みのあるラストから問題劇とされます。

物語世界

あらすじ

 ウィーンの公爵ヴィンセンシオは外交でウィーンを離れようとして、その代理をアンジェロに任せます。公爵の統治下ではウィーンは法に緩かったものの、アンジェロは性道徳について厳しく規制します。

 若い貴族クローディオは婚前交渉で恋人のジュリエットを妊娠させてしまいます。ジュリエットと結婚するつもりでしたが、アンジェロから死刑を宣告されます。

 クローディオの友人ルーシオは修道院にいるクローディオの妹イザベラを訪ね、アンジェロに死刑の取り消しをさせるように頼みます。

 イザベラはアンジェロに慈悲を求めます。アンジェロはイザベラに恋をし、自分と寝るならばクローディオを助けてもよいと話しますが、イザベラは拒否します。

 イザベラは刑務所に行き、クローディオに潔く死ぬよう伝えますが、クローディオはイザベラにアンジェロと寝るように頼みます。しかし同意を得られません。

 公爵は実は修道士に変装して、アンジェロの動向を監視していました。イザベラから話を聞いて、公爵はアンジェロに罠をしかけます。

 その罠はベッド・トリックです。アンジェロにはかつてマリアナという婚約者がいたした。マリアナの持参金が不意になり、アンジェロは婚約を反故にしたものの、マリアナはアンジェロを愛していました。そこでイザベラがアンジェロの誘いに乗り、マリアナとベッドで入れ替わらせます。

 計画は成功するものの、アンジェロは約束を破り、クローディオを処刑しようとします。公爵は病死した囚人の首をクローディオの首に見せかけ、アンジェロに届けます。

 公爵は変装を解いてウィーンに帰還します。そこでイザベラとマリアナに追及させるものの、アンジェロは否定します。公爵は再び修道士に化け、公爵だと明かし、アンジェロも観念します。

 アンジェロをマリアナと結婚させ、公爵はアンジェロに処刑を言い渡します。しかし、クローディオが生きて現れ、アンジェロは罪を許されました。

 公爵はイザベラに結婚を申し込みます。しかし、イザベラは何も答えないでいます(無言の同意?)。

参考文献

・高橋 康也 (編集)『研究社シェイクスピア辞典』

・倉橋健 編『シェイクスピア辞典』

 

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