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方丈貴恵『少女には向かない完全犯罪』感想レビュー。はじめに永い言い訳

ミステリー
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始めに

 方丈貴恵『少女には向かない完全犯罪』感想レビューを書いていきます。

ランク
B

基本情報

あらすじ

 黒羽烏由宇は、ビルから墜落します。臨死体験のさなか、あと七日で消滅する幽霊となって、両親を殺された少女・音葉に出会います。

 彼女は、出会い頭に彼に斧を叩き込みますが、二人はやがて打ち解けて、事件の真相解決のために奮闘します。

著者

 1984年、兵庫県生まれ。京都大学卒。2019年『時空旅行者の砂時計』で第29回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。長編第三作『名探偵に甘美なる死を』は第23回本格ミステリ大賞の候補に選出されています。

所感

まずエクスキューズ

 個人的には、鮎川哲也賞からでた本格ミステリーの才能として今村昌弘、青崎有吾、方丈貴恵の三人が抜きんでていると思います。

 ただ、正直本音を申し上げると、個人的に青崎さんと方丈さんの、特に方丈さんの作品があまり好きではなくて、むしろ苦手です。結局このあたりは好みの問題で、ただ結局もう方丈さんの作品は世間で好評なので、あれこれ言っても仕方ないのです。それでも、確かに面白いのかもしれないけど、自分が心から面白いと思えるミステリーとは違う方向に今の本格ミステリーは向かいつつあるな、と思っています。個人的に三津田信三さんとか、後若書きでしたが梓崎優が出てきたときは本当に本格の今後について明るい見通しをもったのですが、いまのミステリはなんか肌に合わないです。同じ感慨の人もいるかもしれないので、書いていきます。

 なぜ方丈さんの作品が苦手なのかというと、まず自分はミステリーの古典のうち、クリスティとカーは好きなんですが、クイーンが好きではなくて、ロジック重視のものが好きではないです。なんでかというと、結局ミステリーのロジックというのはリアリズムと相容れないところがあって、そもそもジャンルの定型としてある、目的のために人を殺すとかだって合理的な発想ではないだろうし、合理的な推論によって犯人を特定するというプロセス自体がある程度ファンタジーで、現実の事件の捜査だって犯人が完全に合理的な行動をとるという前提ではすすめられません。探偵小説の推論はたしかに所与の証拠からの合理的な推論かもしれませんが、形式科学のような論理性や必然性に裏付けられた真理追求のプロセスではなくて、前提条件の変更で容易にモデルの変容を迫られる自然科学的なモデルです。

 なにが言いたいのかといいますと、結局は探偵の推論というのはある程度リアリズムと乖離したファンタジックな内容になり、たしかにそれはもっともらしいし痕跡からの合理的な解釈に対する機知を感じられたりするものの、形式科学のように論理的だったり必然的だったりはしないだろうし、そこであまり推論のボリュームが煩雑化すると、学術的なテクストと違って作者の複雑な理屈の展開に付き合う義理もないので、キャッチアップするのが面倒になってしまいます

 端的にいうと、ロジック重視のミステリーは、全体的にこしらえ事で現実味に欠いているのにそれが論理的推論であるかのような装いをしていて、推論の要素のボリュームが膨大で作者の恣意的な理屈を追いかけるのが負担で、真相やトリックなどに見られる機知に重きを置いていないために終盤のカタルシスが少ないことがロジック重視のミステリーが苦手な所以です。またロジック重視のミステリは読み物として弱いことも多いです。なので意外なトリック、真相、痕跡からの解釈のプロセスをはらむミステリーの方を、ロジック重視のミステリより推しています。

 なので自分はまず、方丈さんの作品のいい読書ではないと思っています。そのうえでの作品評価になります。

本格として

 それでも方丈さんの本格としての筆力は極めて高いと思っています。『孤島の来訪者』などもそうですが、世界観の全体的デザインをうまく提示して、そこから作品全体の要素が有機的に結びついて展開されていきます。『呪術廻戦』みたいにルールばかり煩雑になってそこから合理的なプロットが展開されないのとは対照的に、諸々の要素の回収が卓越した手腕です。

 作家性のベクトルとしてはジェフリー・ディーヴァーの作品と近くて、物語のなかで真相が二転三転しながら真相への見通しが修正されていき、大きな矛盾もないまま個々の解決が大きな枠組みの中へ、終盤にむけて回収されていく、みたいな感じです。『孤島の来訪者』もそうでしたが、本作はさらにディーヴァーと重なりました。

 面白かったんですが、結局自分はロジック重視のミステリが苦手で、推理の細かいレベルには首を捻ったし、真犯人やサブプロット的な種々の事件に対する解決などの落としどころも特に響かず、読み終えたときには感動よりもぐったりしました。『孤島の来訪者』を読んだ時も全く同じ印象で、個々の痕跡からの解釈やトリック、真相に魅力が乏しく既視感の強いもので、読み返すと本格のトリックや痕跡解釈として特に新鮮な要素がなくて、ちょっと腑に落ちない気持ちがします。阿津川辰海さんの作品もこれと似た印象を持ちます。

 ただ、トリックや真相、痕跡解釈などは新規のものを想像するのが難しいので、ロジック性の強いものがメジャーになるのは仕方ないかもしれません。

文章とキャラクター 

 文章も、わるいところがクイーンみたいな感じで、ゴツゴツしていて読みにくいです。

 主人公も、小学6年生なのにそうとはおもえない描写で、なんだかピンときませんでした。全体的にこの作者の作品のキャラクターに魅力を感じません。

コメント

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