始めに
ツルゲーネフ『父と子』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ロマン主義から写実主義へ
ツルゲーネフが影響されたのはロマン主義の作家(ゲーテ、プーシキン、レールモントフ、バイロン、シラー、ヘーゲル、シュレーゲル)やその前史としての作家(シェイクスピア)などで、そこから写実主義を展開していきました。
ロマン主義から写実主義へ、というこのあたりの特徴は盟友で親交のあったフローベール(『ボヴァリー夫人』『感情教育』)と共通です。
ロシアニヒリズムとは
ツルゲーネフは、1830 年代から 1840 年代の自由主義者とニヒリズム的潮流の分裂から『父と子』をものしました。本作ではニヒリスト (「子」の世代) と 1830 年代の自由主義者 (「父」の世代) の相克が描かれます。
西欧派は1840年代と50年代の知識階級の進歩主義派であり、ロシアの発展のために西欧を手本としました。自由主義改革、農奴制の廃止、西洋の科学技術、啓蒙主義を展開していき、ツルゲーネフもこの潮流の代表格です。
対して、ニヒリスト哲学の初期の形態であるロシアのニヒリズムはむしろ『父と子』によって広まっていったような感じで、実体としては曖昧なもので、懐疑主義的、唯物論的な潮流が当時流行ってきていたところ、本作によってこの名称が定着しました。
ニヒリズム道徳、哲学、宗教、美学、社会制度を無価値とし、厳格な決定論、無神論、唯物論、実証主義、利己主義を展開しましたが、次第にこの利己主義や道徳軽視の部分が文学や政治思想の方面でも批判的に捉えられるようになり、また利己主義的なスタイルから目的のために暴力を辞さないテロリズムと次第に同一視されるようになっていきました。
本作は自由主義者の立場から、ニヒリズム的な道徳への懐疑主義に関して全体的に否定的な立場が取られております。最終的にはニヒリズムの体現者エフゲニー=バザロフは自分の思想に疎外される中で死に、子の世代のアルカディも父ニコライの自由主義と和解する流れです。
物語世界
あらすじ
大学を卒業したアルカディ・キルサノフは、マリノと呼ばれる父親の小さな屋敷に戻ります。アルカディは友人のエフゲニー=バザロフを連れてきて、父親のニコライは喜んで二人を屋敷に迎えるものの、ニコライの弟のパベルは、若者たちが唱える 「ニヒリズム」に憤慨します。
バザロフの影響を強く受けたアルカディの過激な思想がニコライの信念を時代遅れにも感じさせます。また父親はフェネチカという召使いを家に迎え入れて一緒に暮らしており、彼女との間にすでにミーチャという息子がいます。
二人の若者は数週間マリノに滞在し、その後アルカディの親戚を訪ねます。そこで彼らはアンナ=セルゲヴナ=オジンツォワ夫人と出会います。独立心のある女性で、二人とも彼女に惹かれ、彼女もバザロフに興味を持ち、ニコリスコエの自分の屋敷に招きます。
ニコリスコエで、彼らはマダム=オジンツォワの妹であるカーチャに会います。滞在を経て、アルカディはバザロフの影響から離れます。バザロフは、恋に落ちることがニヒリスト的信念に反するため、苦悩します。やがて、マダム=オジンツォワ自身が彼への好意を表現したため、バザロフは彼女への愛を告白します。マダム=オジンツォワは、バザロフが感情や存在の美的側面を軽視していることに違和感を持つため、困惑します。
バザロフは両親の家へ向かい、アルカディは彼と一緒に行きます。バザロフの父親に息子の将来が明るいと保証して喜ばせたアルカディは、友人の姿勢を窘めます。その後、バザロフがアルカディの叔父を侮辱し、バザロフとアルカディはけんかになります。アルカディはバザロフの理想に対して懐疑的になります。
アルカディはその後実家に数日間滞在し、再びニコリスコエに出発します。やがて彼は自分がオジンツォワの妹のカーチャに恋していることに気づきます。バザロフは科学研究のためにマリノに滞在します。バザロフはフェネチカと話したり、彼女の子供と遊んだりするのが好きで、ある日、彼女にキスをします。このためパベルはバザロフに決闘を挑みます。パベルは足を負傷し、バザロフはマリノを離れ、両親の家に戻ります。その間、アルカディとカチャは恋に落ち、婚約するのでした。
家に帰ると、バザロフは医者として父親の手伝いをします。しかし検死中に自分を傷つけて感染症になります。最期にバザロフはオジンツォワ夫人を呼び、彼女の美しさを語ります。バザロフは彼の額にキスをして立ち去りますが、バザロフは翌日に亡くなります。
アルカディはカーチャと結婚し、父親はフェネチカと結婚し、アルカディが家に帰ってくることを喜びます。




コメント